0014 大都市・古都ロナバール
やがて目的の町、ロナバールに近づいてきて、遠くからその様子を見た俺は驚いた。
これは凄い!
今までいたサーマルさんの村とは規模が段違いだ!
はっきり言って比較にもならない!
これは町ではなく、もはや都市のレベルだろう。
城壁でグルリと周囲数キロメートルを囲まれた様子は、まさに大都市だ。
これが古都ロナバールか・・・
驚く俺を乗せた馬車は、城壁の門をくぐり抜け、町の中へと入って行く。
「いや~本当に今日は何から何まで先生のおかげだ、助かりましたぜ!」
「それは御役に立てて良かったです」
「ところで、先生はこれからどういう予定です?」
「私はしばらくこの町に逗留しようと思います」
これだけ大きな町、いや都市なら、さぞかし様々な経験ができそうだ。
当分の間はこの町にいて、色々と試してみようと思う。
「宿は?」
「実は全くあてがないので、どこか信用の出来る良い宿を紹介していただけると助かります」
「そんな事なら任せてくだせぇ、ちょうど俺たちがいつも使う宿があります。
今日もこれからそこに泊まる予定です。
そこなら値段もそこそこで、信用は俺が保証しますぜ!」
「それはありがたいです。ではそこに案内してください」
「任せてください」
街中をしばらく馬車で行くと、ある建物の前で止まる。
その建物には看板に「オルフォン亭(宿泊可)」と書いてある。
どうやらここがその宿のようだ。
「ここです、先生」
サーマル村長が馬車を降りて、俺を案内する。
中に入ると、なるほど、いかにも中世の宿という感じだ。
薄暗い石造りの建物、部屋を照らすためのランプ、木製のくたびれた椅子と机。
そして宿の受付のような場所・・・
「よう!元気かい?」
サーマル村長が受付にいる宿の主人らしき人物に挨拶をすると、相手も挨拶を返す。
「おっ、こりゃサーマル村長、久しぶりだね」
「ああ、俺は元気さ、またいつも通り泊めてもらうよ」
「いつもの部屋だね?」
「ああ、そうさ」
「そちらは?御連れさんかい?」
「ああ、この先生には散々世話になったんだ。
この人もここに泊まるから、部屋をこの人の分も頼むぜ」
「あんたと同じような部屋でいいのかな?」
その質問に俺が問い返す。
「ここは一泊いくらですか?」
俺の質問に宿の主人ではなく、サーマル村長が答える。
「ここは2食付で一泊銀貨5枚ですが、なーに、先生の今夜の分は俺がだしまさあ」
「え?いや、ちゃんと自分の分は自分で出しますよ」
「いやいや、世話になった先生にそれぐらい礼をさせてください。
おっと忘れないうちにこれが謝礼の大銀貨1枚です」
そう言って出した大銀貨1枚を俺は受け取って返事をする。
「ちゃんと護衛の報酬をもらったんですから宿代は自分で出しますよ」
「いやいや、宿代はうちの馬を助けていただいた礼の分だと思ってください。
何しろ先生に助けてもらわなければ、あいつをあそこで見捨てる羽目になっていたんですから」
なるほど、確かに馬一頭を救ったのならば、銀貨5枚くらいは正当な報酬かもしれない。
ここは素直に出してもらっておこう。
「わかりました。ありがとうございます」
「ところで、あいつらは?先に着いていると思うんだが?」
「ああ、息子さんたちなら、色々売りに行ったみたいだよ」
「そうか、まあ、まだ夕飯には時間があるな」
「そうさな」
宿の主人にそう返事をされると、サーマルさんが俺の方を向いて問いかける。
「先生のおかげで、思ったより早くついたので、夕飯にはまだ時間があります。
あっしはちょいと町をぶらついてみようと思うですが、先生はどうします?」
そう言えば、俺が片っ端から魔法弾で魔物を退治したために、馬車の修理の時間を差っぴいても、ずいぶんと早く着いた。
確かに夕刻までには、まだ少々時間があるだろう。
「そうですね、せっかくですから、もし迷惑でなければ、町の案内をしていただきたいのですが・・・」
俺も始めての町なら、誰か案内人がいた方が助かる。
「迷惑なんてとんでもない!じゃあいきましょう」
「はい」




