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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0105 空しい風呂

 三日間のうちで、一番参ったのは風呂だった。

広い風呂に一人で入るのが、こんなにも空しいものだとは思わなかった。

俺は風呂の扉を開けて中に入った瞬間に、愕然として立ち尽くしていた。


「あ・・・」


エレノアと一緒だと、あれほど素敵夢空間に見えていた自慢の風呂が、まるで牢獄か、廃墟を見ているような気分なのだ。

同じ場所なのに、たった一つの条件が違っただけで、これほど雰囲気が変わるものだろうか?と俺は驚いた。

エレノアと一緒だと、まさに天国のような場所だったのに、俺一人だと、こんなに悲しくて寂しい場所になろうとは・・・・

俺は風呂が大好きだ!

前世の頃は、それこそ休みの日などは、1時間2時間などは当たり前で、最高6時間以上も入っていた事すらある。

あまりに長風呂で、友人に「何でお前は電話をかけると、いつも風呂に入っているんだ?」と聞かれたほどだ。

転生してからもしばらくは風呂が無くて悲しかったが、ロナバールの風呂屋を見つけてからは、風呂屋に行くのは楽しみにしていたし、この屋敷の風呂が完成してからは、休日などは、エレノアと半日近くも風呂に入っていたほどだ。

まあ、エレノアと一緒に入るのは、純粋に風呂以外の目的もあるけどね?

考えてみたらエレノアもよく何も文句を言わずに付き合ってくれているなあ・・・

しかし、これはどうだ!

俺は前世も含めて、これほど空しく悲しい風呂に入るのは初めてだ・・・

しかも風呂自体はこんなにも素晴らしくて豪華なのに・・・



 俺はふと、子供の頃の事を思い出していた。

それは小学生の夏休みの頃に、田舎の祖父の家に行った時の事だ。

俺が遊びに行った時に、たまたま祖父の知り合いに、その町の大金持ちがいて、その人が自分の家の庭で、プール開きをするという話だった。

そのプール開きへ、俺と一緒にいた従兄弟に来ないかと誘われたのだ。

その資産家は、祖父がその田舎町の町長をしていたので、誘いにきていたのだった。

町長とは言っても、その田舎町では名誉職のような物で、祖父は大した事はしていなかったが、その資産家は一応誘いに来た様だ。

 だが、祖父はプール開きなどには興味が無かったので、孫の俺たちに行くように薦めた。

俺は庭にプールがある家なんぞ見た事もなかったので、一体どういう所なのだろうと思って、従兄弟と一緒に面白がって行ってみた。

 プール開きに行って俺たちは驚いた。

そこはまるで映画で見た、アメリカの家のような作りで、広い芝生の庭の真ん中に、小さな飛び込み台まで付いている、ひょうたん型の大きなプールがあったのだ!

俺と従兄弟は正直言って、こんな田舎町に、これほど凄いアメリカンな邸宅とプールがあるなんて、それだけでも驚いた。

しかも、その広い芝生の庭には、4・5軒ではあるが、祭りのように屋台まで出ていて、招待客に綿菓子やら焼き鳥、カキ氷にたこ焼などを無料で食べさせていて、それが食べ放題なのだ!

大きなスピーカーで音楽を流し、招待された何十人もの人たちが笑い、はしゃぎ、泳いでいた。

中には犬を連れて来た人までいて、飛び込み台から犬と一緒に飛び込んで、犬までがプールを嬉しそうに泳いでいる!

こんな光景を見たのは俺は初めてだった。

俺と従兄弟は嬉しくなって、その日は一日プール開きを楽しんだ。

夕方になって、帰る時にそこの主人が俺たちに聞いた。


「楽しかったかい?」

「はい、とても楽しかったです!」

「そうかい?プール開きは今日だけだけど、泳ぎたいなら、また明日も来ても良いよ?」

「え?いいんですか?」

「ああ、別に構わないさ。

 北条さんにはいつもお世話になっているからね」


それは単に町長である祖父への御機嫌取りか、単なる気まぐれだったのかは、はたまた他の理由だったのか、未だにわからない。

しかし俺たちは明日もこのプールで楽しめると思って、ワクワクして家に帰った。

そして次の日にそのプールに行って愕然としたのだ。

そう、プール開きは昨日で終わったので、もちろん屋台はない。

音楽も鳴ってないし、俺たち以外には誰も人はいない。

嬉しそうに泳ぐ犬もいない。

だだっ広い芝生とプールに、俺たち小学生がたった二人だけだ。

もちろん、それはわかっていた。

いくら小学生の俺たちでも、それはわかっていたのだが、実際に来て見ると、昨日との落差に愕然としたのだ。

俺たちはしばらくプールで泳ぐと、お礼を言って、祖父の家に帰ったが、二人とも無言だった。

もしも俺一人だったら、寂しさに耐えかねて、1分で帰ってしまったかもしれない。

そして俺はこの時に、全く同じ場所なのに、状況が違うと感じ方がこれほど違うのかという事を知って驚いたのだ。


 この風呂のいつもとの違いは、エレノアと一緒に入っているか、いないかだけだ。

いつもだって、別に屋台も出ていないし、音楽が鳴っていた訳でもない。

俺一人で入るか、エレノアと二人で入るかだけの違いなのに、この空しさはどうだ?

あの時の落差以上だ。

それも比較にならないほどの差だ。

エレノアと二人で入っている時は、俺の心の中では屋台もあったし、音楽も鳴っていたのだ。

しかし今の俺は、たった一人で凍ったプールに入るような気分だ。

俺はたったの数ヶ月で、いかにエレノアが俺の中でどれほどの比重を占めているかを知った。

そして改めて驚いて、その場で呆然と立っていた。

周囲は風呂の湯気で温かいのに、まるで心の中を冷たい風が吹いているみたいだ。

今、エレノアは隣の部屋にいるし、我慢できずに抱きつきに行こうと思えば、それだって出来る。

それなのに、この空しさだ。

もし、本当にエレノアがいなくなってしまったら、俺は一体どうなるのだろうか?

それを考えただけで、俺は恐怖した。

しかし、いつまでも立っていても仕方がない。


俺以外に誰も居ない、ガランとした広い風呂場で、俺が一人空しく体を洗っていると、誰か風呂の戸を開けて入ってくる者がいる。

あれ?誰だ?


「御主人様、一緒に御風呂に入れてくださいニャ!」


それはペロンだった。

帽子や長靴を脱いだペロンは、浴布を一枚持って風呂に入ってきた。


「ペロン?どうしてここに?」

「はい、エレノアさんに、今日から三日間は、御主人様と一緒に御風呂に入って欲しいと頼まれましたニャ!」


そうか、さすがエレノア、気が利くなあ・・・

そういえばペロンとはメディシナーの寮にあった風呂には一緒に入っていたけど、この風呂に入るのは初めてだし、ちょうどいいや。

うん、これで寂しくない。

でも俺って、こんなに寂しがりやだったかなあ?


「そうか、ペロン、一緒に入ろう。

 僕がペロンを洗ってあげるよ」

「ありがとうございますニャ!」


俺はペロンの全身をわしゃわしゃと洗いながら話す。

うん、これはこれで楽しい!


「ペロンはこういう風呂に入るのは初めてかい?」

「以前、お金持ちの家に居候した時に入った事がありますニャ。

でもこんなに素敵な御風呂は初めてですニャ」

「そうか!」


ペロンに素敵な風呂と言われて、俺の機嫌は突然良くなる。

先ほどまでの鬱々とした気分が晴れてくる。

本当に俺も安いと言おうか、チョロイなあ・・・

何だか自分でも情けなくなってくるよ。

それでも気分の良くなった俺は、ペロンと話し続ける。


「そういえばケット・シーって、オス・メスというか、男女って、どうなっているの?」

「ケット・シーに男女はありませんニャ。

 中には見た目や性格が、男っぽいケット・シーや、女っぽいケット・シーはいますが、ボクはどちらでもないですニャ」


なるほど、確かにペロンはどっちでもない。

単なる可愛い猫って感じだよなあ・・・

強いて言えば、小学生男子って感じか?

ペロンを洗い終わった俺は湯船に誘う。


「さて、じゃあ一緒に湯船に入るか?」

「はいですニャ」


ペロンは身長が低いので、湯船の中に椅子を沈めて座っている。

二人でゆっくりと湯船に入ると、俺が話し始める。


「どうだい?ペロン?湯加減は?

 熱くはないかい?」


俺はぬるめの風呂にゆっくりと入るのが好きなので、それほど熱くはないはずだ。


「はい、とても気持ち良いですニャ」

「そうか・・・」

「気持ち良いですニャ~」


ペロンは本当に気持ち良さそうにしてトロンとした感じで風呂に入っている。

このまま寝てしまいそうな位だ。


「そうだな・・・」


そう言って俺は空を見上げる。

透明なアレナックの窓からは、ちょうどルミナ、すなわちアースフィアの月が見える。

今日はちょうど満月だ。

そしてその横にもう一つの月、シエラキャストが見える。

その小さな月がゆっくりと動き、ルミナの手前を横切っていく。

この小さな月は、話によれば中心に半球状の土台の上に城のような物がある人工の月らしいが、一年中その周囲は霧のような物で覆われていて中は見えないので、丸い雲のように見える。

話に聞いた限りでは形と言い、白い雲に覆われている状態と言い、まるで星ごと地球を攻めにやってきた、どこぞの白色○星帝国のようだ。

そういえばあの作品、最近リメイクしたけど、形が御椀型から変な鳥篭みたいな形になっていたなあ・・・

昔の形の方が絶対に格好いいのに・・・

あんな変な形にしたのは一体誰だ?

まあ、仕方がないか・・・

その人工の月は、大昔にエルフが作って、それ以来、空に浮かんでいるらしい。

現在の中がどうなっているかはわからないそうだ。

そもそも何の目的で作ったのかもよくわからないらしい。

野外キャンプの時に、エレノアにそう教わった。

そんな事を考えながら、ふと俺はペロンに聞いてみた。


「そういえば、ペロンはロナバールは初めてなんだよね?」

「はい、そうですニャ」

「じゃあ、明日はロナバールの町の案内をしようか?」

「はい、お願いしますニャ」


こうして俺はペロンと風呂に入って、ゆったりとした。

風呂から上がると、ペロンは自分の部屋へ帰っていった。

俺はよほど、ペロンを呼び止めて、一緒に寝てもらおうかと思ったのだが、さすがにそれは気恥ずかしいので止めておいた。


覚悟を決めて一人で広いベッドに寝たが、やはりここも風呂同様に一人だと寂しい。

ベッドが広いから尚更だ。

寂しくて思わず涙がこぼれそうになってしまったほどだ。

我ながら情けない・・・

寂しくはあったが、疲れてもいたので、まもなく俺は静かに寝入った。

翌朝、目が覚めて朝食を食べ終わると、俺はペロンを誘って町に行く事にした。

エレノアは部屋で俺を護衛するジャベックの製作をするらしい。


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