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6.少女は結婚したい①



――私は決意した。


「お父さま! わたくし、アルノルトさまと結婚したいです!!」


書斎で優雅に紅茶を口に運んでいたお父様が、盛大にむせた。いつも落ち着いている、お父様がそんなふうに慌てる姿は珍しい。


昨日は、本当にいろんなことがあった。

王宮からの帰り道誘拐され、幸運なことにその場に居合わせたアルノルト様に助け出してもらった。そのときの、アルノルト様は本当にカッコよくて、夜も私に付き合ってたくさんお話ししてくれた。


何度か私を落ち着かせるように、目線を合わせ両手を握ってくれて、その度に温かくて大きい彼の掌にドキドキした。


昨日は、夜も遅かったのでそのまま客間に泊まってもらい、さきほどアルノルト様をお見送りしてきたところだ。そしてそのまま名残惜しい気持ちを引きずって、お父様の書斎に来た。


「リリィ、君は聡い子だから理解してると思うけれど……」


やっと落ち着いたお父様が、残念そうに声をかけてきた。


「侯爵家の娘である君が、子爵も継がない三男との結婚は厳しいね」

「どうすれば、結婚できますか?」


貴族である以上、家のために結婚すべきとは理解している。けれど、諦めることは、いつでも出来る。諦めなくてもいい方法を見つけに来た。


「ああ、最初からそれが聞きたかったのか。リリィが、侯爵家の娘として暮らしている間は無理だなぁ」

「将来、王国軍を希望したらどうなりますか?」


軍に入ることはある意味家から抜け、独立して生活することを意味すると、以前家庭教師から聞いた。私は、超特級の特殊能力持ちだから、将来の選択は慎重にしなさいと、聡明な家庭教師はいつも教えてくれている。


「今以上に難しくなる。正規に軍に入れば、王命が第一になるから、超特級のリリィは国交のために結婚することになるかもしれない」


半ば予想はしていたが、やはりだめか。


「冒険者ギルドは?」

「ああ、アルノルトくんに聞いたのか。……悪いが、それこそ悪手だな」


アルノルト様は、冒険者ギルドに籍を置いていると言っていた。軍に入る人間は、学園でも軍の士官コースを受けて、そのまま軍に入ることが多いようだから、今冒険者ギルドに籍があるということは、将来彼が王国軍に入るつもりはないのだろう。


「冒険者ギルドがなくてはならない仕事であることは間違いない。ただ、報酬は弾むが、装備や遠征費が実費になるから、危険の割に儲からない。結局、リリィがどこかの爵位持ちと結婚してくれた方がよっぽど家のためになる」


明言はしてないが、家のためにならない以上、お父様も冒険者ギルドに私が入ることは反対するだろう。


「むずかしいですね」

「だろう? 大人しく諦めたかい?」


お父様はニコニコと笑いながら、問いかけててきた。息子や娘に課題を与えるときの父の顔は、いつもこんな表情だ。


「まさか。この力がある以上、他にも道はあるはずです。もう少し考えます」

「そうか、リリィの答えを楽しみにしてるよ」


父は有能な人だと、周りからもそう言われる。

陛下の側近として国政にも参加しているし、ベヒトルスハイム領は国政が乱れている今でもかなり豊かで治安も良い。自分で考え行動に移し、それに結果が伴う人だ。お兄様や私にも、日頃からそれを求める。結果が伴わない夢物語は認めてもらえないだろうことは、容易に想像がつく。


ただ、一方でお父様もお母様と恋愛結婚だったことも知っている。執事からも、メイド頭からも、素敵なご夫婦だと何度も話を聞かされた。つまり、この後家で恋愛結婚をする道はあるはずだ。


お父様が本気になったら、私に選択肢なんてない。

好きにやりなさい、と言ってくれてるうちは、まだチャンスがある。



私はご機嫌そうな父に礼を言い、書斎を後にした。




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