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第六話

俺は十月の第三週の水曜日、祖父の他界後、始めた全国の祭巡りを一時中断して香川の実家に戻っていた。

「父さん、母さん、ただいま」

「あら、振、もう帰ってきたの」

「だから母さん、この前電話で言っただろ。琴弾大祭の時には帰ってくるって」

「そうだったね、完全に忘れてた」

「もう、母さんはちょっとボケてるんだよな。もう少し息子の心配しろよな。これだけ長い期間、俺が留守にしてても母さんは一度も自分から連絡してきたことないもんな。いつも電話掛けてくるのは俺だもんな」

「何よ、ボケてるって。この歳の人にボケてるっていう言葉は失礼よ。本当に病気でボケが始まってるみたいじゃない」

「大丈夫だよ。そんな返答ができるなら問題ないだろ。自分でも分かってるくせに」

「はいはい、ほら、そこにお昼ご飯準備しておいたから早く食べなさい。すぐに行くんでしょ、太鼓台の最終調整」

 そう、今日俺が帰ってくるなんて気付いてないふりをしながら、本当は分かってて世話を焼いてくれる、本当に優しい母親なのだ。何故、俺が実家に戻って来たか。それはこの週末に開催される琴弾八幡宮大祭に参加するためなのだ。全国の祭を回っていても、幼少期からずっと見てきた地元の祭だけは絶対外せないのだ。

 琴弾八幡宮大祭は俺の実家のある香川県観音寺市の琴弾八幡宮の秋季大祭で9台のちょうさと言われる太鼓台がその勇壮さを競う祭である。この太鼓台奉納は江戸時代からの伝統があり、現代でも細かい規則に則って運営されている。このちょうさが出る祭は観音寺市以外にも県内では他の地方でも開催されているが、県内でも中心的な地域である観音寺市の琴弾八幡宮に奉納される9台の太鼓台は他地域に比べて大型で、俗に3t級と呼ばれ、夜間の電飾がとても派手なことでも有名である。地元では“観音寺祭り”と呼ばれることも多い。

 そして俺は毎年楽しみにしている大祭を十分に満喫して、再び全国の祭巡りに戻った。



 私は光星とお互いの気持ちを確かめ合ってから更に急接近した。そして今日はついに祖父に光星と付き合っていることを伝えるために、光星を自宅に招待していた。もちろん、母には前から二人の関係は伝えてある。本当の父親が亡くなってからと言うもの、祖父は私の父親として、常に自分のことを一番に考えて母と私を守ってきてくれた。そんな私が初めて好きになった男性を紹介したらどんなリアクションをするのか、楽しみでもあるけど、受け入れてくれない不安の方が大きかった。

「陽向、いよいよだね。俺、凄い緊張だよ。お爺様にはもう何回も会ってるけど、君とお付き合いさせてもらってることをお伝えしないといけないとなるとね、どうなんだろう?俺、やっぱりぶん殴られるのかなあ?」

『大丈夫だよ、光ちゃん、お爺だって節度ある大人だよ。いきなり殴るなんてないよ』

「でもさ、あの愛嬌コンテストの時のキレ方を見てたらさ、陽向への愛情、半端ないだろ。それを考えたら、俺、ぶん殴られるどころじゃなくて、病院送りくらいにされちゃうんじゃないかなって」

『安心して、そんなことになったら私が盾になるから』

 そして私は光星と自宅の玄関を開けた。玄関では母が出迎えてくれた。

「お邪魔します、お母さん」

「どうぞ、光星さん。さあ、陽向も。お父さんはリビングにいるから」

「どうも、お爺様、今日は陽向さんの同僚として仲良くさせて頂いてるってことで自宅にまでご招待して頂いて光栄です」

「おう、待ってたよ、金愛くん。君とは陽向のことで話が合うからな。是非、もっといろいろと話したくてな」

「さあ、光星さん、立ってないで、陽向と一緒にここに座って」

 私が光星と隣同士でソファに座ろうとすると祖父が制止した。

「待て待て、何で陽向が金愛くんの隣に座るんだ。陽向は私の隣に決まってるだろ」

 そう、いつもは当たり前のように私は祖父の隣に座るから違和感を感じたのだ。私もいつもなら当然のように祖父の隣を選択するが、今日ばかりは珍しく祖父に反論した。

『お爺、私がどこに座ろうが勝手でしょ。私は今日は金愛さんの隣に座るから』

「な、何だ、どうしたんだ陽向。いつものように私の隣でいいだろ。ほら、こっちに来なさい」

『もう、お爺、いいの、今日は。金愛さんの隣なの私は』

 このやり取りを見ていた光星は、世間話から少しずつ雰囲気を告白モードに持っていく予定にしていたが、いきなり立ち上がって告白してしまった。

「すいません、お爺様」

「な、何だ?金愛くん、どうした」

「いきなりですが、申し訳ありません。私、陽向さんとお付き合いさせて頂いています」

「ん?何だ、今、なんて言った?よく聞き取れなかったが?」

「はい、陽向さんとお付き合いさせて頂いています。それを今日はお伝えしたくて」

 この光星の話を聞いて、祖父の顔は険しくなった。

「何?そういう事か?陽向、お前がこんなこと初めてだな」

 そう言うと祖父は突然、ソファから立ち上がり、そして板間に土下座した。

「あ、ありがとう、金愛くん」

 この祖父の姿は私も母も、そして光星にもとても信じられない光景だった。

「いや、そんな、お爺様、止めてください。頭を上げて下さい。お願いします、立ってください」

「いや、本当にありがとう。私にはずっと、とにかく可愛くて仕方ない孫だった。でも、父親が亡くなって以来、話せなくなって、陽向は自分でもずっと心を閉ざしてしまっていた。そんな中、金愛くん、君はそんな陽向でも全く普通の女性として見てくれている。私ももう歳だ。私や母の陽子がいなくなったら、誰が陽向を守ってくれるのか、それだけが心配だったんだ。私が生きているうちにこんな日が迎えられてホッとしている。ありがとう」

 私は祖父のこんな姿を見て涙が溢れた。でもそんな私と母、光星がホッとした瞬間、祖父は突然、立ち上がり、光星の胸倉を掴んで凄んだ。

「但し、いいか金愛くん、私の大事な陽向をこれから泣かすようなことをしてみろ。俺は死んでも化けて出て、呪い殺してやるからな」

 私はその前の祖父の対応で気が抜けたこともあり、光星を庇う余裕すらなかった。私は光星の胸倉を掴んだ祖父を引き剥がした。

『バカ、お爺、何てこと言ってるのよ。光ちゃんが茫然としちゃってるでしょ』

 でもそう言われた光星は祖父に返すように板間に土下座した。

「ありがとうございます、お爺様。僕はこれから命を賭けて陽向さんのことをお守りします。だから安心して下さい」

 そして祖父と光星は不思議と私に対する想いを共有し、固い握手をした。

「金愛くん、宜しく頼むぞ」

「はい、まだ陽向さんと出会って間もないですが、陽向さんを想う気持ちはお爺様にだって負けないですから」

「おお、そこまで言うなら、君を信頼するぞ」

「はい」

 私は母にメモを見せた。

『お母さん、何これ?何か私達がビクビクしてて損しちゃったね』

「本当ね、お父さんも光星さんも妙に気が合っちゃって。二人とも陽向のことになるとその熱量が半端じゃないみたいだから」

「金愛くん、私も少しホッとしたよ。君のような好青年が陽向を支えてくれるなら。さあ、飲もうか、おい、陽子、お祝いだ、私の部屋からあのお酒を持ってきてくれ」

 そして私達家族は楽しい晩御飯の食卓を光星と一緒に囲んだ。食事後、私は光星を初めて自分の部屋に案内した。

『光ちゃん、お腹いっぱいになった?』

「ああ、いっぱいだよ。それにお爺様に美味しいお酒も頂いたし」

『それなら、ちょっと私の部屋で休憩する?』

「え!いいの」

『うん、行こう』

「じゃあ、お爺様、陽向さんが部屋で休憩させてくれるそうなので、失礼します」

「何?陽向、それはまだ早いんじゃないのか?」

『何言ってるのよ、お爺。ただ休憩するだけでしょ』

「でも、陽向、お前の部屋で金愛くんと二人きりだなんて言ったら」

『もう、お爺は何か変なこと考えてるでしょ。バカ、私は休憩して光星さんとお話しするだけよ』

 私は光星と自分の部屋に入った。

「へー、ここが陽向の部屋か。もっと可愛らしい部屋を想像してたけど、女性の部屋にしては結構シックな部屋だね」

『うん、だって私、そんなタイプじゃないから。光ちゃんだってそう思うでしょ』

「うん、そう思うときもあるけど、君はそれだけじゃないから。凄く美しいと思うときもあれば、何か子供みたいに可愛いときもあるから。それに仕事の時は凄くきりっとしててカッコいいと思うときもあるしね。陽向はいろんな魅力があるから」

『どうぞ、座って』

「陽向、ここに座っていい?」

 光星は机の椅子に腰かけた。

「さすがに綺麗にしてるね。机の上も整頓されてて」

『でも昨日までは少し散らかってたから、光ちゃんが来ると思って片づけしたのよ』

「ん?何だこのノート?いつか声に出して、だって」

 その光星が見つけたノートは私が大切にしていた誰にも見られたくないノートだった。昨日、部屋の片づけをしていて、しまうのを忘れて机の上に出したままだったのだ。私は声にならないけど口を動かして光星からそのノートを取り上げた。

「ダメ、それは見ちゃダメ。返して」

「あれ?そんなに大事なノートなの。陽向、何が書いてあるんだよ、見せてくれよ」

 光星はこのノートをどうしても見たくなって私の手から取りあげようと私ともつれ合い、そして私はバランスを崩して光星に覆い被さられるようにベッドの上に倒れ込んだ。私は光星と至近距離で見つめ合った。私はそのまま目を瞑り、光星にどうするかを任せることにした。私はその時、光星の顔が少しずつ近づいてくる気配を感じていた。そしてついに光星の唇が私の唇に触れそうになった瞬間、部屋の扉が開いた。

「おい、陽向、これ下に忘れてた・・・、な、・・・貴様、陽向に何を。やっぱりそのつもりだったんだな」

 ガシッ。ベットに倒れ込んだ私に被さっていた光星は、祖父に襟元の後ろを掴まれて立たされていきなり拳で頬を殴られ転倒した。

「す、すいません、お爺様。決して陽向さんの部屋に入った時はそんなつもりはなかったんです。本当です」

「この期に及んで言い訳する気か。問答無用」

 祖父は倒れ込んだ光星を再び起こしてまた殴ろうとした。私は咄嗟に自分の顔を両手で庇いながら祖父と光星の間に入った。私は祖父に顔を庇った手を殴られて光星と一緒に倒れた。

「陽向、しっかりしろ。大丈夫か」

「陽向、ごめん、お前を殴るつもりなんてなかったのに。何で間に入ってきた」

『お爺、違うの。光ちゃんとお話しててじゃれ合ってたら私が躓いて倒れちゃったの』

「普通に話してて何でベッドにあんな態勢になるんだ」

「お爺様、本当にすいません。最初はそんなつもりはなかったとは言え、あの時、陽向さんにキスをしようとしていたのは本当です。あんなに近くで陽向さんの顔を見詰めたら、すいません、その美しさに吸い込まれそうになって」

「やっぱりか。どけ陽向、こいつの腐った気持ちを叩き直してやる」

『もう、いい加減にして、お爺。私だってあの時、光ちゃんと同じ気持ちで、キスしてもいいと思って目を閉じてたんだから』

「な、何だと。陽向まで。もういい、勝手にしろ」

 祖父は凄い剣幕で自分の部屋に戻っていってしまった。

「すいません、お母さん、お爺様を怒らせてしまいました」

「大丈夫よ、すぐにお父さんの機嫌も直るから」

「いえ、やっぱり、僕、もう一度、お爺様に謝ってきます。陽向はここで待ってて」



 俺は陽向の祖父の部屋に謝罪に来た。

「お爺様、先程は本当にすいません。入っていいですか?」

「う、ああ、入りたまえ」

 俺は土下座した。

「お爺様に不愉快な思いをさせてしまって申し訳ありません。これ・・・」

 陽向の祖父は俺の話を遮って話し始めた。

「すまんね、金愛くん、私も少し熱くなりすぎた。陽向のことになるとやっぱりダメだな、私も。これからは君が陽向を守ってくれると言ってくれたのに。君のその眼を見ればその言葉に嘘はないって分かってたんだが。可愛い孫の部屋で実際に男とあんな姿を見せられては。私もついな」

「本当にすい・・」

「いいんだ、私も少しずつこんな状況に慣れていかないと。それにさっきの陽向が君を庇う姿を見て、嬉しかったよ。陽向もあんなに本気で君のことを好きになったことが。だから金愛くん、これからも陽向のことを頼んだよ」

「お爺様。はい、ありがとうございます。僕は絶対に陽向さんを悲しませるようなことはしません。お約束します」

「そうか、こちらこそありがとう。ほら、いいから、陽向の傍に行きなさい」



「陽向、お爺様に謝ってきたよ」

『どうだった、お爺、まだ怒ってた?』

「ううん、やっぱり君のお爺様は素敵な方だ。陽向のことを本当に、凄く想い過ぎてるから。だから、僕も分かってたんだ。でも、ついね、君の顔をあんなに間近で見つめたの初めてだったから。自分の気持ちが抑えきれなくなって」

『私だって、その気になってたんだもん。光ちゃんだけのせいじゃないよ』

「ありがとう、陽向。でもあのノートのことだけど、気になるな。何で見せてくれないの?」

『だって、あのノートは・・・、ううん、やっぱりダメ。きっと光ちゃん、笑うから』

「何?気になるな。笑わないよ、だから、お願い、見せてよ陽向」

 私は光星が懇願するので、初めてこのノートを他人に見せた。

「陽向、これってもしかして、詩だね。みんなこれ陽向が書いたの?」

 私はゆっくりと頷いた。そしてそのノートを真剣に読みだした光星を見詰めていた。きっと読み進めていくうちに笑うに決まってると思っていたが、光星は全く反対の反応をした。ボロボロと涙を流し始めたのだ。

「ううう、陽向。すごいな、みんなとても素敵な詩じゃないか」

『笑わないの?こんな暗い私の趣味、笑わないの?』

「笑う訳ないだろ、こんな素敵な詩を書けるのに。いつから書いてるの?」

『うん、お父さんが亡くなってから。だって私、声が出なくなったでしょ。それから大好きな歌も歌えなくなったから。だからこんな私が毎日できること、そして生きていくために絶対にやらないといけないことは、話したいこと伝えたい気持ちを書くことしかなかったから。自分の気持ちを詩にして書き留めることがいつの間にか趣味になっちゃったの』

「そうだったんだ。陽向、凄いよ。そうするとこれ以外にもまだあるの?ノート」

『うん、小学校の時からほぼ毎日書いてるから、もう百冊以上はあるよ。ほら、ここに』

「わあ、すごい、壮観だな。これだけの書き溜めたものが並べられてると。そうか、だから陽向はこのノートのタイトルに気持ちを込めてるんだね。いつか自分の声で伝えられる日を夢見て」

『うん、でももう無理だよね。私ももう二十八だもん。こんな歳までずっと話せないんだから、これからもきっと・・・』

 そう私が諦めの言葉を口にすると光星はきつめの口調で私を諭した。

「陽向、そんな風に諦めちゃダメだ。君は声が出ない以外はなんら普通の女性と変わらないんだ。それに声が出なくなったのだって、お父さんの死のショックがきっかけなんだろ。それなら、きっと何かキッカケがあれば、君の声は絶対に出るはずなんだ。俺はそれを絶対に信じる。何があっても信じ続けてやるからな。陽向、俺も信じ続けてやるから、陽向も諦めるな。お爺様だってお母さんだって、想いは一緒のはずだよ。だから俺の想いも。これでさらに一人分、君の声が聞きたいという想いが増えたんだ。きっと陽向は話せるようになる」

『ごめんなさい、光ちゃん。こんなに光ちゃんが信じてくれてるのに、私が自分のことを諦めちゃダメだね』

「そうだよ。俺が傍にいるから。信じよう。あ!そうだ、陽向、君のこの詩集、一冊、俺に貸してくれるかな?んーー、これにしよう、この一冊、貸して」

『何?どうするの?まさか誰かに見せるの?』

「いや、まさか、そんなことしないよ。だって陽向が嫌がってるのに。こればかりは君が自身で納得して見せることが必要だろ。というか、これは君が話せるようになってから君の声で伝えるべきなんだ」

『だったら、持って行ってどうする気なの?』

「お願いだ。君に気に入ってもらえるかどうか分からないけど、陽向が書いたこの素敵な詩に僕の想いも乗せたいんだ」

『何?どういうこと?光ちゃんの真意が分からないけど、そんなに光ちゃんんが言うなら』

「よし、ありがとう陽向。楽しみにしてて」

 こうしてこの日から私と光星はうちの家族公認のお付き合いを始めることになった。


十一月も下旬に入った金曜日、俺は月たち仲良し三人組に会うために山形県に来ていた。

「はあ、網走も寒いけど、やはり山形も東北だもんな、この時期になるとさすがに寒いな。よし、早くあの仲良し三人に会いに行こう」

 俺は月の家にタクシーで向かった。月の家の前に到着してタクシーを降りると、月の家に隣家の前に人が集まっていて騒がしくなっていた。その中に月と月の両親もいた。

「月さん、おじさん、おばさん、どうも、遊びにきました」

「あ、火練さん、久しぶり」

「熱身さん、ご無沙汰ね。ごめんね、せっかく遊びに来てくれたのに」

「どうしたんですか?何かあったんですか?月さんもおじさん、おばさんも凄く怖い顔してますし、それに泣いてる方まで」

「ごめんなさい。実はうちの家の隣のこちらのご家族、佐部利さんて言うんだけど、こちらの長女の真輝ちゃん、小学五年生なんだけど、今日ね学校の行事でスキー合宿に行ったの。でもね、滑ってる時にバランスを崩して、コースから外れて今、行方不明なのよ。だから今、真輝ちゃんのご両親も真輝ちゃんを探しに行くって言っててね」

「月ちゃん、離して。真輝が、私達を待ってるの。真輝が死んじゃうよ」

「おじさん、おばさん、落ち着いて。今、警察の人も、スキー場の監視員の方も、それに民間のボランティアの捜索の方も必死に探してくれてるから。素人が行ったら危ないよ。おじさんとおばさんまで遭難しちゃうよ」

「私達はどうなってもいいんだ。私達は真輝がいなくなったら」

 俺は近くにいた警官にお願いした。

「あの、すいません、俺をその真輝ちゃんが遭難したスキー場に連れて行ってもらえませんか?俺、網走市出身なんですけど、地元では何回も雪山での遭難者の捜索に参加してます。それに自慢じゃないですけど、五回、遭難者を発見してます。俺も捜索に参加させて下さい。一人でも人手は多い方がいいですよね。俺も素人じゃないので」

「火練さん、ダメだよ。遊びに来たんでしょ。わざわざ北海道から来て、危険なところ・・」

「月さん、そんなこと言ってる場合じゃないだろ。今、この時も真輝ちゃん、一人ぼっちで寒くて怖くて震えてるはずだ。それにもう少ししたら暗くなる。それにこちらの天気予報だと荒天する予報だそうじゃないか。大丈夫、きっと真輝ちゃんを助けてくるから。お父さん、お母さん、きっと大丈夫だから。じゃあ、月さん、おじさん、おばさん、お二人のこと、お願いしますね」

 そして俺はパトカーで現場のスキー場に向かった。

「ありがとうございました」

「こちらこそ、宜しくお願いします。でも無理はしないで下さいね」

「じゃあ、早速、行ってきます」

 そして俺は時間もないので到着してすぐに捜索に入った。事前の情報はパトカーの中でレクチャーを受けていた。

「そうか、ここからコースの外に。なるほど、防護ネットがもう古くてボロボロだな。これでは防護ネットの役目を果たせないはずだ」

 俺は真輝がコース外に出て行った軌跡を辿り、コース外を更に深く捜索して行った。そして次第に辺りが暗くなり、無線に今日の捜索打ち切りの連絡が入った。

「今日の佐部利真輝ちゃんの捜索は残念ですがこれで打ち切ります。撤収して下さい」

「了解しました。くそ、真輝ちゃんの両親にあんな啖呵を切って、結局、このザマかよ」

 その瞬間、俺の足元の雪が崩れ、緩やかな段差になっていた崖を滑り落ちて行った。その時に所持していた無線を落としてしまい連絡手段を断たれてしまった。

「くそ、俺としたことが、迂闊だった。まさか、あんなところに小さな崖があったなんて」

 そう言って辺りを見回すと、俺の2メートル程離れた左手にスキーウェアを着た少女がほとんど体が雪に埋まった状態で倒れていた。俺は急いで少女に近寄った。

「え、お、おい、しっかりしろ。大丈夫か。おい、目を覚ませ。おい」

「ううん、は、私」

 そして少女は自分がこんな状況になった経緯を思い出し、怖くなって泣き出した。

「うえーん、怖かったよ。パパ、ママ、怖いよ」

「大丈夫だ、もう大丈夫だよ。泣かなくていい。ほら、落ち着いて。どこも怪我はないかい?立てるか?佐部利真輝ちゃんだよね」

「グスン、う、うん。痛い!右の足首が」

「そうか、右足を痛めてしまったんだね」

 俺は辺りを見回した。すると右手の数十メートル上の方に小さな洞穴を見つけた。辺りは薄暗くなり、天候も吹雪き始めていたので、今から下山することは断念し、洞穴に退避することにした。

「くそ、もうこの天候じゃ真輝ちゃんを担いで下山は難しいな。俺も少し左足首をやっちまったみたいだし。あの洞穴までで限界だな」

 俺は洞穴まで左脚を引き摺りながら真輝をおんぶして運んだ。

「よし、これで何とか少しはこの吹雪から逃れられる。真輝ちゃん、他に痛いところは?」

「大丈夫です。ごめんなさい、私のせいで、お兄さんまで、こんなことに」

「良かったよ、真輝ちゃんが無事で。パパもママも心配してたよ。足の怪我だけで良かった」

「ええ、お兄さん、パパとママを知ってるの?」

「ああ、さっき会って来たよ。お二人とも君を助けに行くって泣いてたからね。でも月さんが危ないからって、落ち着かせようとしてた。月さんも心配してたから」

「え、お兄さんは月お姉ちゃんのことも知ってるの」

「ああ、実は今日、月さんのところに遊びに来たんだ。俺は月さんの友人で熱身火練、今日、北海道の網走市から来たんだ」

「ごめんなさい、グスン。私のせいで火練お兄さんの予定、台無しにしちゃった」

「何言ってるんだ真輝ちゃん。俺の予定なんて心配しないで、今は自分のことだけ考えるんだ。暗くなってきたし、この荒れた天気だから、今から下山するのは難しい。怖いと思うけど、何とかここで朝まで頑張るしかない。大丈夫かい」

「うん、私、頑張る」

 そう言いながら真輝は体が震えていた。そうだろう、遭難してからずっと雪に埋まった状態だったのだ。寒くない訳がない。

「真輝ちゃん、寒いんだね。ずっと雪の中にいたからな」

「ううん、大丈夫、寒くなんかないよ」

 俺に心配をかけまいと強がっている真輝が健気で愛おしくなった。

「真輝ちゃん、無理しなくていいよ」

 俺は自分の上着を一枚脱いで真輝に掛けた。

「そんなことしたらお兄さんが」

「いいんだよ、どうだい、まだ寒いかい」

 真輝は俺の言葉に素直になった。

「うん、少し。でも大丈夫、お兄さんの上着で少しずつ温かくなってきた」

「そうか、よし、二人で朝まで頑張ろう。おいで」

 俺は真輝の肩を抱いて体を寄せ合った。

「真輝ちゃん、その上着のポケットに手を入れてごらん」

 俺は上着にこんなことも想定して、入れれるだけのチョコレートとお菓子を入れていた。

「わあ、チョコレートとお菓子だ」

「お腹がすいたら、少しずつ食べるんだよ」

「ありがとう、お兄さん」

 そして更に夜が更けていき、一段と冷え込みがきつくなってきた。次第に真輝の震えが大きくなってきた。

「真輝ちゃん、しっかりしろ」

「お兄ちゃん、寒いよ。もうダメだよ、寒いし、眠くなってきた」

「頑張るんだ、真輝ちゃん」

 そう、このままの冷え込みで、眠ってしまったら、どんどん体温が下がって命に危険が及ぶことは十分に分かっていた。俺はどこまで耐えられるか自分でも不安だったが、あの力を使うことを決心した。俺はズボンのポケットからオイルライターを出した。

「待ってろ真輝ちゃん、今、温かくしてやるからな」

 そう言って俺はライターで左手に火を灯した。この俺の姿に目を瞑りそうになっていた真輝も目を見開いた。

「いやあーー、お兄さん、何してるの、火傷して死んじゃうよ!」

「いいから、落ち着いて真輝ちゃん。大丈夫だから」

「本当に大丈夫なの?何で?」

「ほら、いいから。近づいて温まりな」

「温かい、お兄さん、凄く温かいよ」

「うん、良かった。いいよ、温まったら少し眠りな。ずっと火は灯しておいてあげるから」

 俺は左手に火を灯したまま、真紀を右手で肩を抱いたまま、朝を迎えた。

「うううん、あ、お兄さん、おはよう」

「おはよう、真紀ちゃん、よく眠れたかい」

「うん、お兄さんのおかげで温かかった。でもどうなってるの?」

「ああ、まあ、それは内緒だ。でも朝になってもどうやらまだ天気が回復しないな。真輝ちゃん、まだ頑張れるか」

「うん、お兄さんのおかげで、眠れたから大丈夫。それにまだお菓子も」

「そうだ、その意気だよ。もう少しの辛抱だから。お菓子を少し食べておきな」

「でもお兄さんは。まさか昨日の夜から少しも寝てないの?」

「俺のことはいいから、とにかく真輝ちゃんはパパとママに元気な姿を見せることだけ考えるんだ。パパとママのためにも笑顔で家に帰るんだ。いいね」

「でも」

「大丈夫だから。心配しなくていいから」

 そう言いながらも、この力を使ってこんなに長時間、火を灯し続けたのは初めてだったし、一睡もしてなかった。それにこの後もどれだけの時間、この状態を続けなければいけないかも分からなかったので、俺はもう自分自身の不安と体の残り少ない油分で意識が朦朧としてきていた。

 そんな状態の中、午後になって天候が回復し、捜索が始まった。そして、やっと近くに捜索隊の声が聞こえた。

「おーい、真輝ちゃーーん。どこだ、元気なら返事をしてくれーー」

 捜索隊の一人から諦めの声が聞こえた。

「この天候の悪さだ。もう真輝ちゃんも、あの捜索に急遽参加してくれた熱身さんもダメか?くそ、奇跡が起きてくれないかな。頼む」

 俺はもう限界に来ていた。俺は最後に真輝に語りかけた。

「真輝ちゃん、さあ、捜索隊の方の声が聞こえただろ。右足、少し痛いかもしれないけど、行くんだ。外まで行って助けを求めるんだ。俺はもうダメだ。動けないから頑張って一人で行きなさい」

「分かった。お兄さんのことも伝えるね」

「ああ、頼む」

 そして真輝は大声で助けを求めた。

「お願いします。助けて下さい。ここです、ここにいます」

 隊員が気付き真輝は隊員に保護された。

「真輝ちゃん、無事か?」

「はい、右足が痛いですけど、あとは何ともありません」

「ほ、本当だ。この吹雪の中、何てことだ。凍傷の兆候すらない。何て血色の良さだ。奇跡だ、本当に奇跡が起こったぞ」

「それより、お兄さんを、お兄さんを助けて下さい」

 俺は何とかフラフラになりながら洞窟の入り口まで足を引き摺って出て行った。

「ああ、熱身さん?でしたね。よく無事で」

「はい、何とか。それより真輝ちゃんを早く病院に。早くご両親を安心させてやって下さい」

「何言ってるんですか。あなたの方がフラフラじゃないですか」

「いや、真輝ちゃんをとにかく早く病院に。まだ小学五年生の女の子がこんな極寒の中、一晩、寒さに耐えぬいて頑張ったんです。早く心配しているご両親に会わせてやりたいじゃないですか」

「分かりました。おい、早く真輝ちゃんを病院に。それと御両親にも連絡をな」

「お願いします。良かった。これでご両親を本当に安心させてあげられる」

 そう言うと俺はホッとして張りつめていた気が抜けて意識を失った。

 気が付くと俺は病院のベッドの上だった。

「良かった。気が付いたよ、パパ、ママ。火練さん気が付いた」

「良かった。ごめんなさい、火練お兄さん。私のせいで」

 俺は月と真輝に手を握られていた。

「あ、俺、そうか、あの時、倒れちゃったのか。真輝ちゃん、足は?足首、大丈夫だったか」

「うん、軽い捻挫だって。三日もあれば良くなるって」

「そうか、良かった」

「先生、真輝ちゃん、他には本当にどこも悪いところはないんですか?」

「安心してください、熱身さん、本当に足首の捻挫だけです。本当に奇跡ですよ。あんな吹雪の荒れた天候の中で、一晩過ごして、霜焼けすらなく、怪我した捻挫だけなんて」

「私が助かったのは、みんなお兄さんのおかげなんです。火練お兄さんがいなかったら、私,間違いなく今ここにいなかったから」

「真輝ちゃんが頑張ったし、それにご両親の愛情が真輝ちゃんに伝わったんだよ。ああ、しまった、俺、ホテル予約してたんだ。あ、もう俺、ホテル引き払って帰らないと。明日から仕事なんだよ」

「ダメですよ。何を言ってるんですか。あなたはまだここで明日まで安静にしてないといけません。全く、起きた途端に真輝ちゃんの心配ばかりして。少しは自分の心配をして下さい。どんな鍛え方したらこんな体脂肪率になるのか。もう一%少なかったら、脳にも障害が出てたかも知れないんですよ。よくこんな体であの極寒の中から生還できたものですよ」

 先生のこの話を聞いて思った。やっぱりギリギリだった。あれ以上、自分の体を燃やしていたら、危なかったんだと。

「そう、お兄さんは凄いんだよ。だってね、私のために魔法を使ってくれたのよ。あのね御兄さんね、自分の手を」

 俺は真輝が自分のあの能力のことを話そうとしたので、真輝の口を指で塞いで、目で話さないでと合図した。

「真輝ちゃん、しーー」

「何、真輝、熱身さんがどうしたの?」

「ううん、何でもない」

「熱身さん、今回は本当に娘のために酷い目に遭わせてしまって申し訳ありません。わざわざ月ちゃんのところに遊びに北海道から来たって聞きました。それなのに」

「大丈夫ですよ。確かに昨日は月さんのところに遊びに来たんですけど、あんな切迫した状況を知ってしまったら。それが月さんのお隣さんのことだったから、そんな時に自分のことを優先してられないじゃないですか」

「全く、火練さんは。あの時もそうだったけど、余計なことに首を突っ込むのが好きなんだから」

「ちょ、ちょっと待てよ、月さん。何か言葉のチョイスが可笑しくない?あの時って花笠の時に月さんたちを酔っ払いから助けたこと言ってるんだよね」

「そうよ」

「それが余計なことなのか?助けたことを余計な事って言うのかよ。それに今の言い方だと真輝ちゃんを助けたことまで余計だったってことになるじゃないか?」

「そうか、そうだよね。こんな時は何て言えばいいんだろ」

「月お姉ちゃん、それは火練お兄さんはよくトラブルに巻き込まれるとか、足を突っ込むって言えばいいんじゃないかな?」

「んんーーー、何か真輝ちゃんの言い方も少しずれてるような気がするな。もしかして二人とも同類か?天然娘なのかな?」

 俺はそう言うと月と真輝に突っ込まれた。

「誰が天然ボケよ」

「痛ってー。二人とも何するんだよ。俺は怪我人だぞ。それに俺はボケとまでは言ってないぞ」

「ああ、ごめんなさい」

「全く。二人ともやっぱり似たもの同士だな。あ、最後に月さん、うちの親父に帰りがもう少し遅くなるって連絡しておいてくれないかな。俺、携帯があのスキー場で遭難しちゃったからさ。よろしく」

「うん、分かった。ちょっと待ってて、熱身パパに電話してくる」

 月は俺の父親に電話するため病室を出て行った。

「火練さん、電話してきたよ。でも熱身パパ、今回のこと説明したけど、驚きもしてなかったよ。あれで心配してたのかな?」

「ありがとう、月さん。まあ、親父のことだから、また俺のいつものことだと思ったんだと思うよ。地元でも俺、危険なことでも自分が協力できそうなことには積極的に首を突っ込んできたからさ」

「ほら、やっぱりお兄さんて、そう言う人なんじゃない」

「あ、そうか、自分でさっき二人に言っておいて、ごめん」

「フフフ、火練お兄さんて面白いね。勇敢だしかっこいいし。いいな、月お姉さん、こんな素敵な人が彼氏なんて」

「ち、違うよ、何言ってるんだよ真輝ちゃん。月さんと俺はそんな関係じゃ」

「そうだよ、真輝ちゃん。私達はそんな」

「あれ?でもお兄さんは顔が真っ赤だよ。もう、お兄さんは月お姉さんのこと意識しちゃってるんじゃないの?」

 俺は真輝にツッコミを入れた。

「真輝ちゃん、冷やかすのはやめてくれよ」

「さあ、真輝、熱身さんも疲れちゃうから、ゆっくり休ませてあげないと。それに月ちゃんと二人っきりにしてあげましょう」

「もう、おじさんとおばさんまで、違うから」

「嫌だ、私ももう少し火練お兄さんの傍にいたい」

「ダメよ、真輝、そんなわがまま言ったら。熱身さんは明日まで安静だって先生も言ってたでしょ」

「いえ、お母さん、真輝ちゃんがそうしてくれるなら僕も嬉しいです」

「おばさん、いいよ。帰りは私が真輝ちゃんと一緒に帰るから」

「じゃあ、熱身さん、月ちゃん、お願いしちゃっていいかしら?」

 そして俺は月と真輝と病室で三人になった。

「火練さん、ありがとうね、真輝ちゃんのために。せっかく山形に来てくれたのに、また火練さんの休日を台無しにしちゃったね」

「月さん、これは君のせいじゃないだろ。こういう時に君に会いに来た、俺が何かを持ってたということだよ。それに最高な結果だっただろ。少し真紀ちゃんも足を痛めてしまったけど、何とか無事にご両親のもとに笑顔を取り戻せたんだから」

「だって、火練さん、またあの力を使ったんでしょ。だからこんな危険な状態に」

「ああ、でもこればかりはね。使うしかなかったんだよ。あのままこの力を使ってなかったら、多分、真輝ちゃんを助けられなかっただろうからね。そう、俺は自分の体の油分、まあ脂肪だね。それを自在に体の中を移動させて、それをベースに火を灯せるんだ。あの時、どれだけ続けられるか分からなかったけど、何とか天候の回復と警察と救助隊を信じて、とにかくギリギリまで続けようと思って。何とか真輝ちゃんだけは助けたいと、それだけだったから」

「何?お兄さん、どういうこと?」

「ああ、実は君にもあの時見せた、俺の手に火を点けたこと、驚いたと思うけど、花笠の時に月さんたちを助けた時にも使って、月さんたちを襲ってた酔っ払いたちを追い払ったんだ。あ!そうだ、月さん、真輝ちゃんの捻挫、君なら治せるんじゃない?」

「あ、そうだね。忘れてた。真輝ちゃん、右足、私にちょっと見せて」

 月は真輝の捻挫した箇所を両手で包みこんでしばらくじっとしていた。

「よし、これくらいで多分いいかな?どう、真輝ちゃん」

「え!嘘、何これ、全然痛くない。腫れも引いてる。何?月お姉さん、何したの?」

「実はね、私もね、不思議な力があるのよ。今のように怪我とかをこの手で治せるの。火練さんとは違う種類だけど、私も不思議な力があるの」

 真輝は少し驚いた表情で俺と月を見ていた。

「ごめんね、真輝ちゃん、こんな変人二人を見て引いちゃってるね」

「う、ううん。まさか月お姉さんまで、こんな凄い人だったなんて、驚いちゃっただけ」

「真紀ちゃん、こんな化物二人だけど、怖がらないでね」

「うん、大丈夫、だって火練お兄さんも月お姉さんも、こんな凄い力をとても素敵な使い方してくれる人だもん。かっこいい」

「ありがとう、真輝ちゃん。でもこのことは誰にも言わないでね。それと月さん、俺、気になったんだけど、俺のことまで変人とか化物とかって紹介するのはやめてくれよ」

「あれ、でもそうじゃない。普通の人から見たら私も火練さんも怪物でしょ。特に火練さんの力は、自分を燃やして生きていられるなんて、化物の何者でもないでしょ」

「うわ、出た、酷い言い方だな」

「でも私はそう思ってないよ。さっき真輝ちゃんも言ったけど、火練さんはそれを自分のためじゃなく、他の人の幸せを想って使う素敵な男性だから。とても外見じゃなくて中身がとても素敵だから」

「月さんにそう言ってもらえて嬉しいけど、できれば外見も中身も素敵だって言われたらもっと喜べたんだけどな」

「そうか、また間違えちゃった」

「ハハハ、月さんらしくていいや。まさかこんな病室でとは思ってなかったけど、久しぶりに君の笑顔が見られて、山形に来た甲斐があったよ」


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