視点
今回は視点について。
書き手にとっては、実に悩ましい課題です。
一人称は、一視点。これは、常識です。
三人称なら、どこから見ても大丈夫なのではないか。まあ、理論上はそうですね。
ただ、三人称の場合でも、グルグル回るのは、読者を混乱させるので、回すにしても回すタイミングは、慎重にやらねばいけません。
どうしても一つのシーンで多角的にまわしたいのであれば、『神の三人称』を使用すべき。
神の三人称ならば、すべてを見通すことができます。
ただし、すべての事柄が、遠くなります。
お手本にすべきは、司馬遼太郎先生でしょう。
えっと。すみません。私、神の三人称は書けないので、これ以上はご容赦を。
さて。人称はどちらにせよ、視点を一つに絞ると、世界が狭くなります。
ゆえに、事件の全貌を知ることは、かなりたいへんだったりします。
例えば。 プールでおぼれた人物をライフセーバーが助ける、という話を書くとしましょう。
登場人物は便宜上、3人。溺れる人間、目撃者、ライフセーバー。
この三人の状況を書いてみます。
<溺れる人間A>女
①プールで泳いでいる。
②足がつる。
③溺れる。
④意識を失う。
⑤助けられる。
<ライフセーバーB>男
①監視中、溺れている人物発見。
②飛び込む。
③溺れている人物を水から引き上げる。
⑤溺れている人物の水を吐かせ、意識を回復させる。
<目撃者の場合C>女
非常に微妙で、ライフセーバーより前に、溺れる人間を発見することもあれば、ライフセーバーが飛び込んで初めて認識することもあるでしょう。
いずれにせよ、どちらの様子も観察できますが、あくまでも第三者的な立場になるため、ハッキリと状況はわかりません。
今回は
①ライフセーバーが飛び込んだのをみて、状況を把握。
②ライフセーバーに手を貸して、溺れた人の身体を引き上げる。
③救急車を呼びに行く。
としましょうか。
画像作品の場合。これら全部の視点で描いても、意外と違和感はないのですが、文章でやると、かなり難しい。
穏やかな青空の下、Aは遠泳を楽しんでいた。
──イタッ
突然、足がつった。身体が動かず、沈んでいく。息が苦しい。
もがいてももがいても沈んでいく。←ここまでは、A視点
Bは、不自然な泳者に気がついた。どう見ても、沈んでいく。←ここからは、B視点
慌てて、とびこんだ。
沈んでいく人物をプールサイドに運んでいく。
手をのばし、AとBを引き上げた←C視点
Bは、Aに手当←B、C視点
意識を取り戻したAは、Bの姿を捕らえる←A視点
携帯に手をのばし、119番する←C視点
うん。途中から、すごくしんどくなった。ごめんなさい。酷いね、これ。
正直、読むの辛いよね。ごめんなさい。
A視点のみ
穏やかな青空の下、Aは遠泳を楽しんでいた。
──イタッ
突然、足がつった。身体が動かず、沈んでいく。息が苦しい。
もがいてももがいても沈んでいく。
暗い意識の向こうで、誰かが呼んでいる。
ぼんやりと見えるたくましい青年の向こうに、眩しい青空が見えた。
B視点のみ
賑やかなプールをぼんやりとながめる。
じわじわと汗がにじむ。
──こちとら、暑いんだよ。
パラソルで日陰になっているとはいえ、炎天下である。
水面に反射する光すら、眩しい。
──ん?
不意に。不自然な泳者が目についた。
手を動かしてはいるものの、前に進まず、どんどん沈んでいく。
Bは、慌てて、プールに飛び込んだ。
ブクブクと泡を吐きながら、沈んでいく人物を捕まえる。
意識をなくしているらしく、引き揚げようと近づいても、反応はない。
顔を水面から出すように、体をひっぱりあげ、プールサイドまで泳いでいく。
「こっちへ」
プールサイドから手が伸びてきて、溺れた人物を引き上げるのを手伝ってもらう。
「救急車を」
Bは、手伝ってくれた人物にそう言いながら、女の体勢をかえる。
カハッと、女が水を吐いた。気道を確保すると、呼吸が戻ってきていた。
「聞こえますか?」
声をかけると、女の目がゆっくりと開いた。
ちょっと、疲れた(笑)この辺ですみません。
どうでしょう。別々にしたら、多少は、読みやすくなったんじゃないかなーと。
Cを書いてないけど、許してください。
なってない? としたら、たぶんそれは私の文章力の問題です。すみません。
もちろん、A、B、C全ての視点を描きたい時ってあると思うんですが、文章の場合、同時進行でやると、たいてい画像が想像できなくなると思うのです。
ですので、回したいのであれば、どこかで、視点移動のために、『間』や『タメ』をつくってみるのも考え方かと思います。
なんといっても、視点は欲張らないのがベストです。
一番、面白く見える視点を捜すのが、センスではないかと思います。
実際、面白い作品と、イマイチの作品って、アイデア的にそんなに差がなくって、この『視点』の選び方、見せかた、じゃないかと。
で。自分が出来ているとは、例によって言ってないです。修行中です。すみません。
※溺れた人を助けるときは、まず、浮き具を投げるのが鉄則なんだけど、(飛び込むときもね)今回そのあたりは、リアルに描いてません。すみません。




