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テーマより、変化

 ちょうど読書感想文の時期なのですが、私は、とにかくテーマを押し付けるタイプの作品が昔から苦手でした。

 もちろん、重いテーマを扱いながら問題を定義するのは、文学の大切な役目です。それを否定するつもりはございません。

 ただ、私にとって、物語は娯楽なのであって、日々の疲れをとるモノであってほしい。

 主人公は無理に成長しなくてもいいし、社会に対して問題意識などみじんも抱かなくてもいい。

 正直言えば。自分の作品で、『感動』をしてもらいたいとはあまり思っていないです。

 ただひたすらに、浮世を忘れて、ワクワクしてもらえたら、一番うれしい。

 それなりに年を食っていますから、多少、説教臭い人生観が入るのはやむを得ないところはあるかもしれませんが、できれば難しいことを考えずに読んでもらえたら嬉しい。


 しかし、世の中の小説作法本には、たいていが『テーマ』を考えて、『伝えたいこと』を持ちなさいなどと書いてあるわけです。正直、鬱陶しい(注:個人の感想です)

 娯楽小説でも、とにかく感動させようって発想が先走ると、欲張りすぎでつまらないものになります。(過激発言、ご容赦を)

 そもそも、感動は『するもの』であって、『させるもの』とは、私は思っていません。

『ここで泣かせてやろう!』という作者の意図があからさまな作品は、どこか冷めてしまうものです。


 とはいえ。物語というのは、一般的には何かが『変化』していくものであります。

 主人公が成長しなくても、世界が何らかの変化をしなければ、物語にはなりません。

 もちろん、例外はあります。

 例えば、恋愛モノにある『溺愛』系。

 これは、もうひたすらに、デレデレイチャイチャしているだけの話でも、需要があります。

 あとは、スローライフほのぼの系。

 まったりと、ゆったりとした時の流れと優しい世界がそこにある。そこに変化は必要ないのです。

 あえて言うなら、目まぐるしい変化に疲れたひとが、変わらない時の中で『変化』するお話とでもいいましょうか。

 ただ、この『変わらない』物語というのは、ものすごく文章力、そしてある種の才能が必要なジャンルなのではないかな、と思っています。

 少なくとも、一般的小説作法からは、外れます。

 たとえ、平和な世界の物語でも、『起承転結』をつければ、『何か』は『変わる』ものです。

 何も変わらない世界は、始まりも終わりもなく、エンターテイメントとしては、やっぱり弱い。

 溺愛だけで終わる恋愛より、ボーイミーツガールから、しだいに相愛に変わっていく物語のほうが、話に起伏があって、エンタメとして作りやすいと思います。


『変わりそうな』世界を『変わらない』ように守るという、『変化』ものは、昔から退魔や特撮系などの影のヒーローものでは大定番。

 ところで。

 退魔モノも、昨今、80~90年代ものとは、若干変化しているようです。

 『日常』の壊れ方が、最近のいわゆる『あやかし』系は、実に小規模で身近。しかもどこかほのぼのしている系列が多い。

 おそらく、今流行しつつある『あやかし』系は女性ターゲット。

 『うしおととら』『孔雀王』や魔界都市『新宿』シリーズ、『幻魔大戦』、それこそ『魔界転生』などのような男性ターゲットの時代のモノとは視点が違うのかな、などと思います。

 どちらにせよ、こちらの場合は、世界が『変化』してしまったら、物語の幕引きはすみやかにすべきです。主人公が介在することによって示される『変化』とは、『世界が変化しない』ことなのです(ややこしくてごめんなさい)世界の変化に主人公が抗えなくなった時は、たいてい物語のクライマックスであり、エンドはやはり『変わらない』日常に戻ってくるのが美しい。

(世界崩壊エンドとかだと、戻らずに終わりますが)


 さて。

 水戸黄門のようなパターンの場合、主人公たちには全く変化はないわけですが、主人公たちがかかわったことによって、住人たちの生活が変わります。

 このパターンの場合は、実に簡単に話に起伏がつけられます。

 わかりやすい例で。


 Aが、迷い犬を捜しているBと出会い、迷い犬を探し出す。Bと犬はいつもの生活に戻る。


 迷い犬がどこにいるかで、話の質も変えられます。

 犬が、入ってはいけない場所に入り込んだりすれば、ちょっとしたミステリーとサスペンスにもなってくるわけですね。

 (犬探しで、サスペンスストーリーを考えたくなる私は、根っからの物騒頭なのでお許しを)


 つまり物語は、一般的には『変化』なのかな、と思います。大上段に構えて、テーマを考えるより、その世界がどう『変わるのか』を考えたほうが、素直に話が考えらえる、そんな気がしています。まあ、わかっていても書くのは、難しいですね。


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