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伏線はフェアであるための条件

 ミステリーは特にそうだとは思うけど。

 物語の後出しジャンケンというのは、アンフェアとして、嫌われます。

 とはいえ、先出の伏線というのは非常に難しい。

 赤川次郎氏によれば、『あるものがないより、ないはずのものがある』ほうがミステリー的には、仕掛けやすいらしいです。

 ミステリートリックでよくとられる並列法というのは、要するにたくさんのデータの中に紛れ込ませるという手法。

 たとえば。

 机の上に何があるのか描写をしていき、さりげなく、トリックの重要物を入れる。

 できれば、ほかの描写と離して、入れるのがポイントだそうです。

すぐ気が付いてしまってはネタバレですが、『あ、そういえば』と記憶に残らないようでも、ダメなわけです。

 隠れてはいても、見えてはいる。それが、フェアな物語。


 これはミステリー作品ではなく、トリックとは違う、物語の伏線というのも、考え方としては同じだと思うのです。

 唐突な物語変化は、アンフェアな感じが否めません。

 意外な展開というのは、唐突に変わるのではなく、かならず『きっかけ』がどこかに見えることが、大切だと思います。


 たとえば。

『竹取物語』で、かぐや姫は男を魅了しまくったうえで、あっというまに月へ帰るわけですが、この話、どうにも唐突感がぬぐえない。

 あえていうなら、竹から生まれたような赤子だから、何があってもおかしくないというのが伏線なのかもしれませんけれども。


 竹から生まれる→求婚者に無理難題を押し付ける→月へ帰る宣言→帰っちゃった。


 これでは、好意的に見ようと思わないと、かなり行き当たりばったりな物語感がありますし、かぐや姫って、すごく自分勝手に見えます。

 これが、


 竹から生まれる→結婚できないと宣言しておく→求婚者に無理難題を押し付ける→月へ帰る宣言→帰っちゃった。


このように、求婚者たちに会う前などに、「私は、誰のものにもなれないの」と、おじいさんやおばあさんにそういって気乗りしない様子をはさめば、彼女が最初から『月へ帰る』ことを知っていた伏線のようなものになり、無理難題を押し付けることでさえ孤独に耐え、人を拒絶する女性の姿に見えてきます。

 

 伏線としてフェアではある、という極端な例でいえば、昔話。

昔話の決まり事と言えば、『○○してはいけない』。

 どんなに、愛し合っていても『○○てはいけない』ルールを破れば、助けたつるにしろ雪女にしろ去りますし、浦島はじじいにされてしまうのです。

 突然の不幸ではあっても、○○してしまった、というルールゆえに、物語はフェアであり、納得がいく結論になるわけです。

 もっとも昔話の禁止ルールについては、あまりにも露骨で、ルールが守られたためしがないですね。

(良いおじいさん、悪いおじいさん形式の場合は、守るひとは幸せになる)


 なんにしても、伏線というのは本来、『隠す』ものではなく、『見せる』テクニック。

 いかに隠すか、というより、どうやって見せるか、という方角に主眼を置いた方が、うまく組み込めるのかもしれない、などと、推理ものを読みながら考える今日この頃です。


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