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第11部:霧散-4

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

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 明らかに彼は暴走していたし、他の役者三人は彼を止めることすらできなかった。

「えっ?あ、アキラ!」

 暴走する信吾に戸惑うアキラに、目眩めくらましをかけられていたカズヤは改めて驚いた。

「と、いうわけだったんだが……」

 アキラは言葉にまった。完全に彼女の予定外の方向に事態は進んでいた。


「アキラちゃんは日向とシンを演じてくれていたの。全てはピーチを告発する為に。カズヤくんは何も知らずに、男装する彼女と敵対し、彼女と和解し、戦ったの。それを知っててけしかけたのはあたし。悪いのは全部あたし。二人がお互いを大事に想い合う間柄と気づいていながら、あたしは二人を争わせた。

 そしてあたしは《春霧霞》。消えなくちゃいけない存在。


 アキラちゃん、あたしは誤解をしてたかもしれない。けど、あたしはあなたの言葉に逆らうわ。本物の夏が来る前に、あたしはあなたの前から消えてみせる。

 カズヤくん、アキラちゃんをよろしくね。

 奈槻なつきちゃん、ピーチの件は任せるわ。あたしのビデオは証拠に使ってね。

 それと、校長先生、今の集会はマスコミに公開してるから、逃げられないわよ。あたしの最後の復讐は、この学校をつぶすこと。ざまあみろよ!」

 信吾は完全にキレていた。話に脈絡すらなくなっている。

 

 アキラやカズヤが止める間もなく、突然信吾は体育館を駆け出し、逃げ出していった。

「追うな!誰も追うんじゃねぇっ!」

 追いかけようとした数人を、アキラは鬼の迫力で止めた。

「あれだけのことを告白したんだ。落ち着かせてやりたいんだ。一人にしてやろうじゃないか」

 アキラは静かに話し始めた。

「ま、そうことで、かすみちゃんからバラされたわけだけど、みんな、ゴメン!何人も傷付けてきたわけだし、責めるならオレを責めてほしい。かすみちゃんは、あいつは責めないでやってくれ。あれだけの過去を公表して、それだけで壊れそうなんだ。

 今、きっと彼は自分を落ち着けに行ったと思うから、明日は彼を受け入れてやってくれ。この期に及んでみんなに頼みごとなんてできる立場じゃないかもしれないけど、頼む!」

 アキラは土下座をした。


 この結末にカズヤは驚いた。

 神森にくる前のアキラの世界がこれなのだ。

 こんな世界に生きていたら、アキラが人間を嫌いなのは理解ができる。

 なんと自分の幸せだったこと!


「オレからも頼む!」

 カズヤもアキラの隣で同じようにした。

「オレは、詳しい事情は初めて聞いたんだけど、オレは利用されてもいい、あんなに傷付いた人間だったら」

 アキラはカズヤのことを見た。

 カズヤはカズヤのままなのだ。


 その視線に気付いたカズヤは、アキラをじっと見て言った。

「オレ、どうしてお前に気付かなかったんだろうな、あんなに好きだったのに」

「バカ、今そんなこと言うな」

 アキラは思いっきりカズヤの頭を引っ叩いた。

「誰もお前らに文句なんて言わないよ!」

 いつしか壇上には、《反日教》のメンバーがいた。

「なあ、みんな!これでようやく人並みの生活が送れるんだ」

 梅津と加賀見が音頭を取り、全校生徒はそれに拍手で応えた。

「でも、赦せないのがだよ、オレらの憧れだったアキラさんと、このカズヤがデキてたってことだよな」

「あーっ、そんなの、かすみちゃんのデタラメだ!」

 アキラは大声をあげて否定した。

「いいじゃんか、アキラ。オレはお前が好きなんだから」

 カズヤはアキラの腕を取った。

 アキラはその手を振り払う。

「お前、ちょっと図々しいぞ。そんなに厚かましいやつじゃなかったじゃないか」

「いいってことよ。お前、平凡になりたがってたじゃんか。平凡に彼氏ぐらい作っても、誰も文句付けないぜ。信吾も許してくれたことだしさ」

「やめてくれ、オレのイメージが崩れる。第一、オレのキャラじゃねぇっ!」

「気にするなって」

「いよっ、お熱いことで!」

「悪いねぇ」

 野次にもめげず、カズヤは調子に乗った。調子に乗ってみようと思った。

 隣でアキラはむつけている。それで良かった。誰も信吾やアキラを責めることなく、教師は立場をまるでなくし、一応事件は解決したように見えたのだ。


 翌日、カズヤは朝刊が来る時間に起き、今届いたばかりの新聞を広げた。昨日信吾が言った通り、そこには事件のことが記事になっていた。

 自分の名前は載っていないから、おっとりした両親は自分の息子がまさか関わっているとは、気付かないだろう。アキラや信吾の名前は載っていたが、まさか同一人物だと思うまい。

 カズヤは二度寝することにした。

「おいっ、起きろ!」

 ところがしばらくして、信じられないくらい乱暴な方法で、カズヤは叩き起こされた。

「?あ、アキラ!」

 アキラは唇の前に指を立て、静かにするように指示した。

「どうした?」

 珍しく困惑しきっていたアキラの顔に、カズヤはただならぬ事態が起こったことを察した。

「来い」

 アキラはカズヤを、瞬間移動で連れ出した。そこは学校だった。




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