表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/77

第11部:霧散-1

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

11;霧散


 昼休み、信吾はお昼の放送をしている放送室に乗り込み、「ちょっと貸してね」とにっこり微笑むと、大胆にも放送ジャックをやってのけた。


『あ、えーっと、お昼の放送の間にごめんなさい。三年の霞 信吾です。というよりも、《反日向・反教師同盟》を仕切っていた霞 信吾の方が知名度あるかしら』

 「オカマの、だろ」と、ジャックされた放送委員に突っ込まれ、信吾は我に帰った。

『失礼ね!って言うか、今はいっか。取り敢えず聞いてちょうだい。

 あのね、先週の土曜日なんだけど、あたしたち《反日向・反教師同盟》と《日向》が直接対決した話は、もう噂で聞いていると思うのね。校長先生も説明できない本当の事情も含めて、今日の昼休みに体育館で説明したいので、集まってくれるかしら。特に《反日向・反教師同盟》のメンバーには約束していたことだしね。

 あ、校長なんていつだって今までのこと説明したことないんだから、今更よね。

 ってことで、ゲストは日向本人、あたしに頼まれて《夏青葉》を名乗ってくれた鈴木和哉くん、そして刑事の日下くさか奈槻なつきさん、司会はあたしってことで、興味のある人は是非来てね。ご飯の最中に失礼しました。では、皆さん、また後で。

 あ、あたしはオカマじゃないわよ〜』

 その最後の言葉に、全部の教室が爆笑したのは言うまでもない。


 信吾はすぐに体育館に向かった。今の放送を聞いた教師連中よりも先に体育館に行かないと、せっかくアキラやカズヤが閉鎖している体育館を、信吾が入る時、一緒に入り込まれて、計画を台無しにされてしまいかねない。

 ところが信吾は頑張っていたのだが、職員室では教師全員が集められ、奈槻が事情説明という名の元に、教師の動きを封じてくれていた。


「信吾、今の放送、面白かったよヮ」

「でしょーっ」

「っつーか、かなり楽しんでたろ、お前」

「あら、バレてた」

「当然だ」

「だって、考えてもみてごらんなさいな。日向とシンが同一人物だったばかりか、本当はアキラちゃんだったなんて知らされてごらんなさい。全校生徒が豆鉄砲食らった鳩みたいな顔するのよ。もう、楽しみで楽しみで」

「いや、面白かったのは最後のコメントだから」

「えっ、えぇっ?失礼ね」

 ネタはどうであれ、カズヤは今の状況がすごく楽しかった。


「信吾、ちょっと来い」

 アキラは神妙な面持ちで、楽しそうにしている信吾一人を舞台袖に呼び出した。

「なあに、アキラちゃん」

 信吾はアキラが真面目な顔をしているのを、すぐに見て取った。

「カズヤの記憶を封じる。オレとしては力を使いたくないんだけど、あいつはバカ正直だから、日向がアキラだったってことを明かした時に、今初めて知ったって顔してくれって頼んだって無理だろう」

「そうねえ、確かに無理だわね」

「だろ。《夏青葉》が真実を知ってたっとこと知られてみろ。オレらの計画は権威失墜しっつい。カズヤも立場が悪くなる。ついさっき知られたなんて事情が、他の連中に通じるわけないんだしさ。だからやるしかないだろ」

あれ・・をやるのね」

「それしかない。奈槻兄ちゃんにはお前から伝えてくれ。

 ってことで、すぐにでもやるから、お前は少し席を外してくれ。お前まで術にかかったらたまらん」

「解ったわ。しっかりね」

「当たり前だ。オレがやるんだから」

 全てはカズヤに聞こえないように話され、信吾はアキラに言われた通り席を外し、アキラはカズヤの方に歩み寄った。


「また信吾をパシリにしたのヮ」

 カズヤは何の疑いもない笑顔で、やって来るアキラに声をかけた。

 アキラは日向の格好をしていたのだが、何も言わずにカズヤの瞳をじっと見ながら詰め寄った。

「何だよ、おっかない目してヮ」

 一歩下がろうとしたカズヤの肩をがっちりつかみ、アキラはささやいた。

「お前の目の前にいるのは日向だ。シンが化けてた日向。いいな、日向だぞ。それ以外何者でもない」

 蛇ににらまれたかえるのように固まったカズヤは、次の瞬間力なく気を失って膝をついた。アキラはその身体を抱き起こした。


「あ、日向」

 気絶したのはほんの瞬間だけだ。

「大丈夫かよ、《夏青葉》。いきなり膝がっくりさせるから、驚いたじゃないか〜」

「悪い悪い。何だろう、別に体調悪くはないんだけど。立ちくらみかなぁ」

「頼むよ、これから一芝居打つんだっけ」

「いいけど、オレはどっちの名前で呼べばいいんだ?日向の格好してる時は日向って呼ぶように、オレは一応してるんだけど」

「そのようにしててくれればいいさ。オレは取り敢えず、日向の格好で出るつもりだから、この後の集会では」

「じゃ、日向って呼ぶぜ」

「頼むよ〜」

 アキラは舞台袖の暗幕に隠れて、日向のかつらをしっかりかぶり直した。

 記憶封じは成功したのだ。


 時間を見計らって、信吾と奈槻が体育館に忍び込んできた。

「日向、そろそろ始めないこと?」

 信吾は外の騒々しさをあごで示した。

「おう、そうだな。かすみちゃん、頼むぜ」

「任せて。じゃ、カズヤくん、ドアを開けてくれるかしら」

「はいは〜い」

 外からドンドンと叩かれるドアを、カズヤは勢いよく開けた。というか、吹っ飛ばされた。




日本ブログ村とアルファポリスのランキングに参加しております。


お手数ですがバナーの1クリックをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ