第10部:再会-1
本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。
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10;再会
解散宣言したところで、その場の収拾が簡単につくわけがない。暫くカズヤたち《反日教》の幹部にあたる五人はあれこれと指示を出したり、詰め寄る仲間たちに事情を説明したりしなくてはならなかった。当然忙しくて神森の五人と再会を喜ぶどころではない。カズヤが忙しいのは説明されなくても理解している五人は、何も言わずに終わるのを待っていた。
「カズヤ、いいのかよ、待たせて」
ようやく余裕が出てきたか、加賀見がカズヤに訊ねてきた。「あいつら、お前に会いに来たんだろ。こっちはもういいから、行ってこいよ」
「でも……」
「でもって、何、躊躇ってんだよ。さっき堂々と紹介してたじゃないか」
「そうじゃなくって、オレ、どうしてあいつらがここにいるのか、それこそさっぱり理解できないんだ」
「お前はバカか!」
加賀見と、彼とのやりとりを聞いていたサキたちは、同時に同じことを言った。
「とにかく行け。鈍感だって自分のことを言ってたのが、今理解できたよ、オレは」
加賀見はカズヤを突き飛ばすように「どうも長らくお借りしまして……えへへ」と、神森の五人の方に押しやった。
ハリネズミのように短くした銀髪を罰の悪そうな顔で掻きながら、カズヤは五人の前に立った。
何だか気恥ずかしくて、かける言葉が見付からない。
「やっほ、久し振り」
ポンが、一番に声をかけた。
「似合ってっちゃ、そのパンク頭。何とか言えよな、気合い入れてんだっけ」
サキが微笑んだ。
その微笑みに反比例するように、カズヤの顔が僅かに歪んだ。その歪んだ分だけ腕を拡げ、サキは優しくカズヤの肩を抱いた。
「随分大人になったこた」
サキがカズヤの兄貴分なのは、誰もが認めていた。
ただカズヤは顔を歪めはしたものの、昔のように泣いたりはしなかった。細くしなやかな若木のようなサキの耳に顔を寄せ、小声で囁いた。
「お前、瞬間移動できるようになったんだ。って言うか、あいつらにバレたんか?」
以前のカズヤだったら、こういう場で言う言葉は「ごめん」と決まっていたはずだ。
「ああ、お前以外のはバレてる。心配すんな」
サキは囁き返し、カズヤから離れた。もう、本当に兄貴分は卒業だと感じていた。
「どうしたの?もう少し兄弟の熱い抱擁を続けるかと思ったのに」
「そうそう。せっかく時計で測ってたのにやぁ」
「賭けてたのに」
「お前ら……」
カズヤとサキは、がっくりと肩を落とした。こういう冗談ばかりの連中だと、充分解ってはいるのだが、力が抜けるのはどうしようもない。
「で、どうしたのヮ?」
「ああ、こいつね、オレの能力のことを心配してくれてたんだよ。ほら、一応こいつしか知らなかったわけだし」
「あら、そんなこと。嫌ぁね、時間は流れるのよ。あなたがいた時間は、もう過去のこと。アキラだって、ちゃんとわたしらには公表してったくらいよ」
そう言ったコメチに、カズヤは首を傾げた。そう、アキラの姿がないのだ。
「そうそう、カズヤ、アキラには会った?」
「え?」
「ほら、やっぱりね」
狐につままれたようなカズヤなど無視して、コメチは肩を竦めてみせた。
「え、何の話?」
「アキラね、多分こっちの方に転校してるのよ、三月一杯で。本当はカズヤに知らせたかったんだけど、あの娘でしょ、関東地方しか教えてくれなくってね、何処にいるのかうちらも知らないから、あなたに言いようがなくってね」
「ちょ、ちょっと待て。詳しく聞きたいから、オレん家で……。じゃねえ、だから、どうしてここにいるんだよ、お前ら!」
「あら、冗談じゃなくて判らなかったの、本当に?」
「うわっ、ほんとにバカだ、こいつ」
「だからそんな言い方しちゃ駄目だってば、ポン。ほら、ボクら修学旅行で、今日着いたんだよね。で、せっかくだからカズヤを連れて、ホテルに行こうと思って……って、今、何時?」
「げっ、九時じゃんか!」
「先生に怒られるよヮ。どうしよう」
「どうしようもないっちゃ、今更」
カズヤは混乱する五人を、手振りで自分の周りに集めた。
「解ったよ。で、何処のホテルなんだ。連れてくから、着いたらオレの所為だって言えばいい。何たって、オレは三大勢力の一つの盟主、銀髪の不良だぜ」
「カズヤ、何か変わったね」
「頼る人間がいなくなったからだよ」
「ってゆーか、あなた、やっぱり不良だったのね」
「うわっ、中三デビューかよっ!」
「ちがーうっ!とにかく行くぞ」
ナミの何気ない一言まではシリアスないい話だったのに、コメチとポンが関わると話が逸れてしまう。いつものことだ。
でも、今はそれでころではない。
カズヤは混乱の場から一同を連れて離れると、辺りに誰もいないことを確認すると、いきなり瞬間移動をしたのだ。
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