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第10部:再会-1

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

10;再会


 解散宣言したところで、その場の収拾が簡単につくわけがない。しばらくカズヤたち《反日教》の幹部にあたる五人はあれこれと指示を出したり、詰め寄る仲間たちに事情を説明したりしなくてはならなかった。当然忙しくて神森の五人と再会を喜ぶどころではない。カズヤが忙しいのは説明されなくても理解している五人は、何も言わずに終わるのを待っていた。

「カズヤ、いいのかよ、待たせて」

 ようやく余裕が出てきたか、加賀見がカズヤに訊ねてきた。「あいつら、お前に会いに来たんだろ。こっちはもういいから、行ってこいよ」

「でも……」

「でもって、何、躊躇ためらってんだよ。さっき堂々と紹介してたじゃないか」

「そうじゃなくって、オレ、どうしてあいつらがここにいるのか、それこそさっぱり理解できないんだ」

「お前はバカか!」

 加賀見と、彼とのやりとりを聞いていたサキたちは、同時に同じことを言った。

「とにかく行け。鈍感だって自分のことを言ってたのが、今理解できたよ、オレは」

 加賀見はカズヤを突き飛ばすように「どうも長らくお借りしまして……えへへ」と、神森の五人の方に押しやった。


 ハリネズミのように短くした銀髪を罰の悪そうな顔できながら、カズヤは五人の前に立った。

 何だか気恥ずかしくて、かける言葉が見付からない。

「やっほ、久し振り」

 ポンが、一番に声をかけた。

「似合ってっちゃ、そのパンク頭。何とか言えよな、気合い入れてんだっけ」

 サキが微笑んだ。

 その微笑みに反比例するように、カズヤの顔がわずかにゆがんだ。その歪んだ分だけ腕を拡げ、サキは優しくカズヤの肩を抱いた。

「随分大人になったこた」

 サキがカズヤの兄貴分なのは、誰もが認めていた。

 ただカズヤは顔を歪めはしたものの、昔のように泣いたりはしなかった。細くしなやかな若木のようなサキの耳に顔を寄せ、小声でささやいた。

「お前、瞬間移動できるようになったんだ。って言うか、あいつらにバレたんか?」

 以前のカズヤだったら、こういう場で言う言葉は「ごめん」と決まっていたはずだ。

「ああ、お前以外のはバレてる。心配すんな」

 サキはささやき返し、カズヤから離れた。もう、本当に兄貴分は卒業だと感じていた。


「どうしたの?もう少し兄弟の熱い抱擁を続けるかと思ったのに」

「そうそう。せっかく時計で測ってたのにやぁ」

「賭けてたのに」

「お前ら……」

 カズヤとサキは、がっくりと肩を落とした。こういう冗談ばかりの連中だと、充分解ってはいるのだが、力が抜けるのはどうしようもない。

「で、どうしたのヮ?」

「ああ、こいつね、オレの能力のことを心配してくれてたんだよ。ほら、一応こいつしか知らなかったわけだし」

「あら、そんなこと。嫌ぁね、時間は流れるのよ。あなたがいた時間は、もう過去のこと。アキラだって、ちゃんとわたしらには公表してったくらいよ」

 そう言ったコメチに、カズヤは首をかしげた。そう、アキラの姿がないのだ。


「そうそう、カズヤ、アキラには会った?」

「え?」

「ほら、やっぱりね」

 狐につままれたようなカズヤなど無視して、コメチは肩をすくめてみせた。

「え、何の話?」

「アキラね、多分こっちの方に転校してるのよ、三月一杯で。本当はカズヤに知らせたかったんだけど、あの娘でしょ、関東地方しか教えてくれなくってね、何処どこにいるのかうちらも知らないから、あなたに言いようがなくってね」

「ちょ、ちょっと待て。詳しく聞きたいから、オレんで……。じゃねえ、だから、どうしてここにいるんだよ、お前ら!」

「あら、冗談じゃなくて判らなかったの、本当に?」

「うわっ、ほんとにバカだ、こいつ」

「だからそんな言い方しちゃ駄目だってば、ポン。ほら、ボクら修学旅行で、今日着いたんだよね。で、せっかくだからカズヤを連れて、ホテルに行こうと思って……って、今、何時?」

「げっ、九時じゃんか!」

「先生に怒られるよヮ。どうしよう」

「どうしようもないっちゃ、今更」

 カズヤは混乱する五人を、手振りで自分の周りに集めた。

「解ったよ。で、何処のホテルなんだ。連れてくから、着いたらオレの所為せいだって言えばいい。何たって、オレは三大勢力の一つの盟主、銀髪の不良だぜ」

「カズヤ、何か変わったね」

「頼る人間がいなくなったからだよ」

「ってゆーか、あなた、やっぱり不良だったのね」

「うわっ、中三デビューかよっ!」

「ちがーうっ!とにかく行くぞ」

 ナミの何気ない一言まではシリアスないい話だったのに、コメチとポンが関わると話が逸れてしまう。いつものことだ。

 でも、今はそれでころではない。

 カズヤは混乱の場から一同を連れて離れると、辺りに誰もいないことを確認すると、いきなり瞬間移動をしたのだ。




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