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第9部:予想外-5

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

 日向の号令に、《日向四天王》につく者、総長日向につく者、《日向》内部は乱れに乱れた。

「しまった、分が悪い」

 カズヤは二人にささやいた。

「こんなもんさ。あいつらは《日向四天王》に征服されたんだ。そういう流儀なのさ」

 日向も小声で答えた。「ま、そろそろはっきりしてきたことだし、いきますか。中学生はこっち、高校生はテルヒ側に別れたみたいだねぇ」

 日向は高台から下り、カズヤたちも後に続いた。


「一体全体、どうなっちゃってんのヮ?カズヤはどういう心境の変化なわけ?」

 コメチはつぶやいた。

「とにかく警察呼ばなきゃ。さっき公衆電話あったわよね。コメチ、行きましょ」

 こういう時だけ、ナミの決断力は速かった。

 男子は物陰から、様子をうかがうことにした。

「何だか分裂したみたいだよ」

 シキは言った。「どうも、カズヤたちのが分が悪そう」

 それには、サキもポンも同じ意見だった。

「あの、黒髪のやつが問題らしいな」

 ポンの意見に、サキもシキも同感だった。


 カズヤは野口と激しくやりあっている。信吾は川上と揉み合っている。日向は岩城と、テルヒを守る高校生を相手にしている。神宮司は《SIN》を率いて、怪我をしてしまっている《反日教》を救っている。

 《日向》の中学生連中が加わったとはいえ、やはり《反日教》側は押され気味だった。

 《SIN》の一人が、岩城にバイクを横から蹴られて転倒した。バイクは横からの力に弱い乗り物だということは、乗る人間なら知っていることだ。日向が岩城への攻撃の手を一瞬緩め、テルヒを守る高校生に集中してしまった隙を、逃しはしなかった。

 岩城はバイクをすぐに起こし、一旦その場を離れると、何人かを蹴散らしながら舞い戻り、テルヒをさらって行った。

 日向は、初めからテルヒのことは、攻撃の対象にと思っていなかった。所詮日向から見れば、テルヒはか弱い女の子だ。

 日向は、岩城はテルヒを安全な所に連れて行ったら、再び自分の所に戻ってくるだろうと思っていた。


「遅いなャ、あいつら……」

 ポンは珍しくいらつきながら、しきりに後ろを振り返っていた。

 かれこれ十分以上も経つというのに、コメチとナミは戻ってきていなかった。

「まあまあ。不良にからまれてるわけでもないだろうし、きっと迷子にでもなったんだよ」

 だとしても問題なのだが、シキの言ったことに、誰も気付かずに納得していた。

 そしてサキは終始無言のままだった。

 念話で呼べば、きっとカズヤは気付くだろう。しかし今の状況を見ている限り、それをしてしまえば彼に隙を作ってしまうことになる。あのカズヤが、立派に自分で自分の身を守っているばかりか、他人の身まで守っているのだ。

―――オレ、いつの間にか、兄貴をやってたんだなぁ。

 サキは苦笑した。


 さっきから、サキの目は日向に釘づけだった。流麗な身のこなしが、空手をやっている人間としては、思わず引き付けられずにはいられない。

「あ、敵が逃げてく!」

 シキが言ったのは、岩城のことだ。

「彼女を救う為、なんてね。あぁあ、見てらんないよヮ、もう!まどろっかしいったらありゃしない。あっ、あいつ、冗談抜きに連れて行きやがった」

 ポンとシキは、落ち着かないのか絶えずしゃべり続けていた。

「カズヤの方って、何だか超素人の集まりだっちゃ。ボクらが行ってあげたくなっちゃうよ、ね、ポン」

「ほんとだよ」

「あ、さっきのバイク、戻って来たよヮ。ほら」

 岩城は、奪ったバイクを乱暴に乗り回し、実際何人もの怪我人を出した。幸い大怪我を負った者はなかったが、バイク相手では敵うわけがない。

「カズヤ!かすみちゃん!頼むっ!」

 日向は今まで戦っていた相手を放棄すると、信じられない跳躍力で、向かって来た岩城のバイクに飛び乗った。


「―――っ!」

 サキは声にならない声を上げた。

「どうしたのヮ、サキ?」

「いや、何でもない」

 シキにかれ、サキは首をかしげながら返事した。


「岩城、止めろ、止まるんだ!転ぶぞ!」

「そうすると、日向がオレを殺したことになる。面白いじゃねぇか」

 野口はにやっと笑い、日向を振り落とそうと蛇行することを止めた。

―――おかしい……

 いくら冷静な岩城でも、日向に言われたから蛇行を止めるとは思えない。

 岩城の首にしがみつきながら、日向は不審に思った。岩城はさっきから、同じ直線コースを往復しているだけではないか。

――何を考えてんだ……? 

 日向の頭が回転を始めたのは、少し遅かった。

 急に岩城は日向を振り切って、バイクから飛び降りた。

「おいっ!」

 慌ててハンドルを取ろうとした日向は、左下腿ふくらはぎに焼きごてを当てられたような感覚を覚えた。

 その衝撃に足元をすくわれ、日向の身体が中に舞う。

 日向はバイクもろとも転倒した。

 あまりに一瞬の出来事で、その場にいた者たちは誰も、何が起きたのか理解できずにいた。




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