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第9部:予想外-3

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

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「新手だぁっ!」

 《日向》も《反日教》も一瞬騒然としたが、すぐにそれは落ち着いた。《日向》側からすれば、手を結んだ《SIN》の援護だと思うし、《反日教》は捨身だから、今更誰が来ようと関係ないし、《SIN》は《日向》の味方ではないということをカズヤから聞かされているから、不安に思う必要はないのだ。

 神宮司の後ろに乗っている黒尽くめの人間。彼こそが《SIN》の首長のシンその人だ。


 シンはバイクから降り、例によって高処たかみの見物をする為に、土手の上から見下ろすように陣を張った。そこまではいつもと変わりなかった。

「《SIN》の援護だぁっ!《反日教》など蹴散らしてしまえーっ!」

 テルヒは大声を上げた。ただでさえあなどってかかっている相手だ。これで完膚なきまでに《反日教》を潰せると、内心ほくそ笑んでいた。

 しかし、その思惑は打ち砕かれた。


「《SIN》の者たちよ、作戦通り、《日向》を潰せっ!」

 なんと、シン自身が大声を上げてそう言ったのだ。

「な、何故だ?」

 驚きで《日向四天王》の顔がゆがんだ。

「テルヒ!話が違うじゃねーかっ」

 激しやすい川上が、例によって怒鳴った。

「ったく、だから《SIN》なんか信じるなっつったんだよ、オレは」

 岩城は歯軋はぎしりをして、吐き捨てるように言った。

 それでも《日向四天王》を中心とした二十五人くらいの《日向》は、《反日教》に負ける気配はまるでなかった。踏んでいる場数がまず違う。ここまで素人集団を相手にしたことはない。


「人間、脳みそだけで生きてるんじゃねぇんだ。確かなのは頭じゃねぇ、この腕だけだ!」

 野口は呪文のように繰り返した。「頭なんか、あてになんねーんだよっ!」

 と、その言葉に弾かれたように、テルヒは日向の乗っている車を目指して走り出した。

「総長を守るんだ!来い!」

 《日向四天王》の他の三人は、すぐに彼女が何をしようとしているのかを察し、彼女の後に付いて行った。

「総長、《SIN》が裏切りました!」

「うん。見てれば判るよ」

 別に動じた様子もなく、日向はスモークを張った窓ガラスを少しすかしただけで、淡々とした口調で返事をした。

「《SIN》の裏切りは、然程さほど影響ないはずだよ。オレが一番心配なのは、もっと別のことだし〜」

「この《日向》の不敗神話が、よりによって素人に壊されようとしているというのに、あんたは別のことを心配してんのか!目の前の出来事を、たまには対処してごらんよ」

 テルヒは極めて感情を押し殺した声で、それだけ言った。

「何が一番重要か、常に先のことまで考えて行動することこそ、一番重要なこと。不祥事を予測することがね。オレは侮るなと言っておいたじゃないか」

 相変わらず、日向ははっきりと言った。それに、とうとうテルヒの我慢の限界が切れた。


「……そう、いつだってそうだ。結局現場に出てるのは我々だけ。もう、《日向》に日向はいらない!」

 車のドアを乱暴に開け放ち、テルヒは日向を掴み出した。

「ふふふっ、脳みそしかないような人間は、もう用済みってか」

 どこまでも日向は冷静沈着で、それがテルヒには腹が立って仕方がない。

「望まれない総長など、いるだけで統制を乱すもの。抜けてやってもいいよ、喜んで」

 日向は笑って言った。

「オレが一番心配してたのは、《日向四天王》の造反なんだな〜。

 オレの《日向》に欲しいのは、どんな状況に陥っても逆らったり寝返ったりしない人間。そういう当たり前のことができない人間はいらない。

 いいか、今日負けるのは《日向》でも《反日教》でも、ましてや《SIN》でもない。お前ら《日向四天王》だけさ。お前らの心の内を探る為に、オレが《SIN》を利用しただけさ。裏切りはお前らの方なんだよ。

 とはいえ今日ここにいる連中は、何があってもお前らに従う者だろうねぇ。お前らが従わせたんだものな。せいぜい感謝しろよ、あいつらに」

 日向は、あくまでもその状況を楽しんでいる様子だった。

「さあ、頭でっかちのオレをどうする?ぼこぼこにしなきゃ、気が済まないだろ」

 あまりのきっぷの良さに、《日向四天王》は戸惑った。頭だけで、実戦はさっぱりできないはずの日向がそう言うと、まるで殴って下さいとでも言っているようだ。どんな馬鹿でも、そのようなことをみすみす言うようなやつを、《日向四天王》は今まで見たことがない。


 日向と《日向四天王》がめている間にも、《SIN》という味方を得た《反日教》は、どんどん《日向》を倒していた。一方のシンはヘルメットを被ったまま、相変わらず高処の見物だ。

 彼がヘルメットを脱いだ時、本気でヤバい噂がある。それだけ強いという意味なのだろうが、ことの真偽は定かではない。

 と、そのシンがヘルメットに手をかけたのだ。

 一同は背筋が凍るのを感じた。

「テルヒ、シンが!」

「何?」

 《日向四天王》は日向を囲みながらも、その視線はシンに釘づけになっていた。

 シンの黒髪が揺れる。




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