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第7部:インターバル-5

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

「この間ので思い知らされたのよ。

 あたしの思考回路は、とっくに日向に分析されてるわ。多分シンにもね。だからやり方変えてやるのよ。

 だからね、あたしはあいつから聞き出せることを聞き出すだけ。あたしはそれをここにいるみんなにちゃんと報告するわ。そしてここにいる六人が集まって、《反日教》の脳みそになるの。あたしはその中の一部分を担当しているだけよ。

 いい、粘る方法はここにいる全員、そして《反日教》全員で考えるのよ。その思考回路は連中には未だ分析されてないわ。そういう意味」

「けど、先輩……」

 聡が躊躇ためらいがちな声を出した。

「聡の言いたいことは解ってるわ。ごめん《夏青葉》のことだけは言えないわ。それは隠し玉として取っておきたいの。解って。

 でも大丈夫、そのこと以外、今度はちゃんと思惑を全員に伝えるわ。今、《反日教》に残ってくれているみんなはすぐにでも反撃したそうだしね、長期戦になるって言わないと、大変なことになりそうだもの」

「その方がいいわね。一、二年とか、他の三年の窓口はわたしに任せて」

 絵美が言った。

「なぁ、せっかくの長期戦だったら、気休め程度にしかならないと思うけど、オレとその《夏青葉》で、みんなをきたえるってのはどうかな」

 加賀見が言った。「別に問題はないだろ。正体をばらすわけじゃない。ちゃんと顔は隠してもらうさ。でもコミュニケーションが取れているのといないでは、だいぶ違うと思うぜ。

 それに素人を鍛えるなんて、涙ぐましい努力をしてるんだ。正直、どうにかなるなんて思っちゃいないさ、オレだって。でも、《日向四天王》は目くじら立てるよりも鼻で笑っててくれるさ。

 それに《夏青葉》の実力を目のあたりにすれば、それこそ《夏青葉》の信頼回復にもなると思うんだよね。だって、うちの《夏青葉》は腕が立つし」

「……それもそうね。いい考えだわ。あたしの名前で区民体育館を借りましょ。公園なんかでやるより安全だし」

 信吾は加賀見の提案を受け入れた。

「じゃ、絵美ちゃん、聡、今のことは大々的に伝えてね。別に《日向四天王》の耳に入っても構わないわ。いっそやる気を見せた方が、抜けた穴を気にしていないんだって、今を好機と狙われないですむから」

「了解」


 黙っている《夏青葉》の周りで、話はとんとん拍子に進められていく。カズヤはそれで、一向に構わなかった。むしろその方が良かった。

 何しろ、カズヤは本当の《夏青葉》ではなく、ただ《夏青葉》の格好をさせられているだけの者にすぎないのだ。

 カズヤが《夏青葉》を演じるうえでのこだわりは一つ。「サキならどうするだろう」と考えないこと。自分は自分なのだということは、自分に責任を持つということだ。それは今までカズヤが他人に全てゆだねていたこと。


 一同が解散した後、そこにはカズヤと信吾が残された。

「カズヤくん。あなた、全然聞いてなかったでしょ」

「え、あ、ああ」

 信吾は、カズヤの前にコーヒーを置いた。

「その様子だと、さっぱりね。ま、いいんだけど。あなた、素人に喧嘩の仕方を教えなきゃならなくなったのよ」

「うん」

 別に全く聞いていなかったわけではない。自分のすべきことはちゃんと聞いている。

 苦笑しながら、彼はコーヒーカップを両手に、膝を抱えて座った。

「ね、何、考えてんの?」

「いや、別に……」

「アキラちゃんのことでしょ」

「ん、いや、まあ……」

 カズヤの返事は、何か釈然としないものがのどに支えているようで、いつまでもはっきりしなかった。

「な、未だ五月なんだよな」

「ええ、そうだけど、何故?」

「いや、ただ、何となく……」

 信吾はそのカズヤの返事に「くすっ」と笑った。

「何となくって、嘘よ。本当は解ってるくせに」

 信吾の言う通りだった。カズヤはちゃんと解っていた。

「転校して半年も経ってないのに、こんなことをしている自分が意外なんでしょ」

 カズヤはうなづいた。


「カズヤくん、アキラちゃんに何も言ってないでしょ。もしかすると、前の学校の友達の誰とも連絡取ってないんじゃないの」

 またまたカズヤは頷いた。

 自分が今やっていること、今置かれている立場を考えれば、連絡など取れるわけもない。

 説明だってできないし、信吾の魔の手が伸びたら困る。

「やっぱりねぇ……。アキラちゃんと連絡取ってないのは、ある意味では正解かもしれないわね。だって、約束破ってるわけだし」

 信吾は容赦なく言った。

「ま、そうさせたのはあたしだけどね。

 それに、ほら、彼女と連絡取るのは難しいじゃない。アキラちゃん、電話出てくれないし」

 信吾はカズヤの気持ちなど知って知らずか、ころころと手の甲を口元に当てて笑っている。

 カズヤは無視してカップのコーヒーを見つめている。

 と、信吾の笑い声が止まった。

「夏休み前には、決着が着くんじゃないかしらね」

 黙るカズヤを前に、信吾はコーヒーをすすりながら、独り言のように言った。

 カズヤは顔を上げた。




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