第7部:インターバル-4
本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。
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カズヤを間に挟んで、信吾と日向はチクチクと嫌味を言い合っている。
―――結局は仲がいいんじゃないか。
その二人を見ながら、カズヤは口では「まあまあ」と宥めながら、心の中では腹を抱えて笑っていた。
どうせ二人のことだから、自分たちの情報をぎりぎりまで流し、そして知恵比べをして楽しんでいるのだ。
ただ聞いているだけならおもしろい掛け合いだし、二人の根性は解ってはいるのだが、事情を知って聞かされている方はハラハラして、落ち着いていられない。時にこの二人は、実は内通しているのではと、疑いたくなることもある。
シンナー騒動で捕まったと噂の空席を横目に、カズヤと梅津は休み時間を潰していた。
「そうそう、そういえばさぁ、かすみちゃん、朝、日向に勝利宣言したんだって。オレ、もうちょっと早く登校すればよかったよ」
その信吾も、朝一番で日向とさんざんやり合っておきながら、さっさと早退などしている。
梅津は、取り敢えず世間話程度の《反日教》の話しか、教室ではしないようにしている。
この間の一件で、梅津も《反日教》の一員だと面が割れているのだから、今更という気がしなくもないが、学校まで来て物騒な話をするのも気が進まない。
「ああ、してた、してた。
まあ見ものって言えば見ものだけどさ、聞いてるこっちは参ったよ。オレは関係ないのに、あいつら、オレを仲介にするっけ、結構気ィ遣うんだよヮ。
ところでさ、あいつらって、結局仲が良く見えないか?」
「見えるよ。だって、二人とも頭いいから、同じレベルの人間同志で解り合っちゃってんだよな。ほら、同じ高処を飛ぶ者にしか、飛ぶ鳥の心は解らないってな。あのギリギリの駆け引きを楽しむ気には、オレはなれないんだよな……」
「ああ、解るわ、それ」
同じ高処を飛ぶ者。
アキラとサキの関係を、カズヤは何故か思い出す。男女の枠を越えた関係の二人の間には、絶対的な信頼があった。
しかしカズヤは、あのアキラの震える肩を知らないのだ。
「……お〜い、聞いてんのかよ、カズヤ」
「あ、ああ、悪い」
カズヤは我に帰った。
全くしょうがねぇなぁ、といった顔つきで、梅津は続けた。
「かすみちゃんのことだから、きっと何か思い付いたんだよ」
「そうかもな。ま、でも、オレには関係ないっけな、どっちがどうなろうとやァ」
梅津が顔でカズヤに謝った。ついつい無関係を演じることを忘れてしまうのだ。
特に機転が利く、という頭の良さはまるでないのだが、言われたことを理解すれば、確実に行動に表せる誠実さと真面目さは、安心感を抱かせてくれる一つの要因にはなっていると、梅津はカズヤを、そう評価していた。
カズヤはさり気なく壁の時計を見て、「五時間目が始まるっけ」と言って、その場を離れた。
気分が悪いと言って、午前中で早退していた信吾だったが、実際の彼はまるで上機嫌で、茂木接骨院で寛いでいた。
「かすみちゃん、せめて学校は行こうよ」
「いいのよ、モグリ。どうせクソの役にも立ちゃしないんだから」
「いや、その口調でその『クソ』発言はどうかと……」
「ほっといてちょうだい、オジさまは」
お茶とお菓子を片手に心配する茂木のことなどお構いなしに、信吾は紙と鉛筆を前に、これからの計画を練り始めた。放課後にここに集まるであろう、他の幹部メンバーに説明できるだけのものを準備しておかなくてはならない。その為にも学校を退ける必要があったのだ。
放課後、茂木接骨院に集まった梅津、加賀見、絵美、聡、そしてカズヤの面々は、当然誰も信吾のあからさまな嘘を見破っていた。
「どうせ具合悪くなんかないだろ」
「あら、酷い。どっからどう見ても病人じゃないの」
加賀美の第一声に、信吾は頭を抑えるふりをしてみせた」
「いや、具合が悪い人間は普通自宅に帰るし」
冷めた梅津のツッコミに、信吾は普段の姿に戻った。
「なぁんだ、誰も心配してくれてないの?寂しいわぁ」
「当たり前だろ。どうせ何か思い付いたんだろうと思ってさ、な、カズヤ」
「そうそう、昼休みに話してたんだよ、そう」
「あら、つまんない。しかもバレてるし」
信吾はふざけた。
「ま、いいわ。バレてるならこのまま続けさせてもらうけど、これからは長期戦になることを覚悟しててちょうだい。
暫くはあたしと日向の知恵比べになるわ。待って、粘って、我慢させて、その勢いを一気に爆発させてぶつける。って言っても、日向は解ってるでしょうけどね。でも、どんな風に粘るかなんて、あいつでも解りゃしないはずよ。だって、あたし一人の考えじゃないもの」
何気なく言ったであろう信吾のその言葉に、一同は思わず顔を見合わせた。
「え、だって、今、日向とかすみちゃんとの知恵比べだって……?」
本当はそこに驚いたのではない。『あたし一人の考えじゃない』という件だ。それは今までの信吾からは考えられない台詞だったのだ。
「いやぁね。そんなに驚いた顔しないでよ。あたし、傷つくわよ」
信吾は皆の表情を読んだのか、軽口を叩いた。
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