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第7部:インターバル-3

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

 翌日、何事もなかったかのように時間は流れる。

「売ってる現場を押さえたと思ったら、売ってる本人たちがラリっててさぁ、それで捕まったんだって」

「バっカじゃねぇの」

 昼休み、梅津とカズヤは、空っぽの《日向四天王》の席を見て笑った。

 本当にシンナーで・・・・・ラリってたのか、カズヤは腹の底で推測した。

 テレビや小説だと、シンナーに始まって、更には暴力団とつるんで麻薬とか拳銃まで扱ったりしちゃう。

―――くっだらねぇの。影響受けすぎだよ、オレ。

 カズヤは自分の頭の中を笑った。


 その朝、日向がカズヤに声をかけてきていた。

「《反日教》、負けたんだってな」

「だって、お前が指揮したんだろが。負かすつもりだったんだろ」

「そりゃま、そうだけど。

 ところで、きみさぁ、現場に顔は見せたんだってな〜」

「たまたまね。図書館に行く途中に鉢合はちあわせってやつ。日向は行かなかったんだろ」

「オレは頭だけだから。

 だってさ、オレが現場に行くと、《日向四天王》の足手まといになっちゃうからさ〜」


 日向は一体何のつもりでカズヤに声をかけてきたのか、さっぱり判らない。

「カズヤさぁ、何で《日向四天王》が来ないか、知ってるか?」

 彼から身内の情報をしてくるとは、本当に理解に苦しむ相手だ。

「ガキどもと一緒にシンナーやってて、そしたら見つかっちゃって、捕まったんだよ、あいつら。そういうことは止めろって言い聞かせてんのにさ。身から出たさびってやつ」

「あのさぁ、お前、放っといていいわけ?仮にも自分の側近だろ」

 あっけらかんとしている日向にあきれ、どうして相手方の心配までしなくちゃなんねぇんだ、と内心思いながらも、カズヤは中立の者として言った。

「いいんだ、いいんだ。どうせオレが何かしなくても、あいつらは無傷で出てくるだろうし。

 ……あ、いい、言わないで。きみの言いたいことはすぐ解るんだよな〜。

 お人好しのきみのことだ、《日向》の品位が下がるって言いたいんだろ。遠回しすぎるよ。ハッキリ、最低だって言ってもいいんだぜ。

 でもな、そんなこと気にしてちゃ、こんなことやってらんねぇってカンジ」

 日向はカズヤの言いたかったことを、正確に言った。


「それよりも、かすみちゃんに言ってやってくれないか。オレが言うとかどが立つから」

 日向は耳を貸すようにと、カズヤを手招きした。

「オレだけのことじゃなく、《日向》内部の情報は、誰にでもすぐに伝わるようになっている。《反日教》はそれがないのが、この間の敗因だ。秘密主義もいい加減にした方がいいってな〜」

 日向は例の妙な笑い声を立てた。

 カズヤにはその笑い声があまりに耳ざわりで、耳元に寄せられた顔を思わず跳ね除ける仕草をした。

「あのさぁ、日向。お前、どうして敵に塩を送るようなことを……」

「わざわざご親切にどーも。それは充分痛感致しておりますわ。こう言えばいいんでしょ。バカ総長」

 言いかけたカズヤの言葉を無視して、信吾が背後から現われた。せっかくの内緒話も、これでは無駄だ。


「朝っぱらから、もう……」

 犬猿の仲のはずなのに、妙に会話の間が絶妙な二人の間に入るのは、それこそお人好しのカズヤには疲れてしかたがない。

「そうそう、たまには素直が一番だぜ、かすみちゃん。オレには《反日教》の動きだって、《SIN》の動きだって見えてるんだぜ」

「それはようございますわね。でも、あたしにだって、あんたらや《SIN》の動きは見えてるわ。差なんて、如何いかに内部が通じ合ってるか、所詮それだけでしょ。

 お生憎あいにく様。あたしはあんたの忠告通りには動かないわ。差がなくなったら、戦っても面白くないでしょ」

「そうかなぁ。オレとかすみちゃんってだけで、充分差があると思うけど。それに、自分と同じ考えをするやつが相手だと、かえって大変でやりがいがないじゃん」

「うっかり乗せられてたまるもんですか。ほんっと、お節介もいいとこね。女の子にモテないわよ、お節介バカは」

「可愛くないのもモテないぜ。かすみちゃんのことだから、内部が通じないってことを利用するって言うんだろ。顔に似合わず意地っ張りだからな〜」

「どうとでもおっしゃい、バカ。あんたも《日向四天王》に寝首をかかれないようになさいな。そういう意味なら、あたしの背中は安泰よ」

「三年全員が抜けても?」

 一瞬その場に居た者の身体が固まる。

「そう。かえって純粋なメンバーだけ残ったから、良かったくらいよ。

 いいこと、今度はあんたを倒すわよ、バカ総長」

「そりゃ楽しみだなぁ。それなら次は現場に出向こうかな。でも、オレはかすみちゃんと違って、武闘派じゃないから、オレを殴りにはくんなよ」

「失礼ね。人のこと、まるで野蛮人みたいに言って」

 火花を散らし合う二人の間で、カズヤはおろおろしながらも、笑いを堪えるのに必死だった。




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