第6部:第一ラウンド-4
本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。
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《日向四天王》は授業どころではなく、信吾は頗るご満悦の様子だった。
「カズヤくん、すごく強いんじゃない。あたし、惚れ直しちゃったわ」
「あ、ああ。オレ、飛び跳ねる方が得意なんだよね。っつーか、その誤解されるような表現はちょっと……」
「気にしない、気にしない。これで、ファンクラブできたわね、きっと。格好良かったもの」
「いや、それはないから。ほら、ピーチが睨んでっとヮ。面倒臭くなっと」
カズヤは整列をした。
日向もいない。彼の名字は須藤だから、準備体操で二人一組になると、カズヤと組むはずだった。
カズヤは肩を撫で下ろした。日向の目だけは、何となく誤魔化せないような気がしていたのだ。
「じゃ、作戦第二段階いくわよ。今夜、あたしと数人で因縁吹っかけるわ。連中の溜り場の公園に、そうね、六時くらいに行きましょう。あいつらが公園に戻るのは、ここ数日調べてたら、大体七時くらいだったからね」
茂木接骨院に集まって、信吾は計画の最終確認をしていた。
そこには、ホワイトブリーチした短めの髪をハリネズミのように逆立てて、少し大きめで濃い色のサングラスをした男、《夏青葉》がいた。
「それと、こちらが《夏青葉》。この間も言ってたけど、サングラスは外さないし、名前も明かせないわ。理解してちょうだいね」
《夏青葉》は信吾の紹介を受け、一同の前に立って挨拶をした。
「今、かすみちゃんから紹介があった《夏青葉》だ。《夏青葉》なんて呼びにくいだろうから、適当に呼んでくれればいい。
で、今日はケガをしないことだけ気を付けてくれ。勝てたらラッキー、負けなきゃそれでいいから、この間電話で話した作戦通りに頼む」
その場にいた《半日教》の面々の表情が固くなった。
「じゃ、出発するわよ。目立たないようにバラバラに行くから」
隠れて出番を待つグループは、それぞれが隠れる場所を確認し、茂木接骨院の裏口から出発をした。
「信吾、信吾」
出発直前、カズヤは信吾を呼び止めた。
「何?」
「あのさ、せっかくだから、ここでもオレと《反日教》が無関係だって強調しようと思うんだ。多分、一人くらい現場から離れていくやつがいると思うから、《夏青葉》はそれを追って現場からいったん離れる。で、カズヤになって現場を通りかかるから、何か気の利いたこと言ってくれよ」
「了解。それにしても、大胆に切ったわよねぇ。格好いいわよ。やっぱ惚れ直しちゃう」
「やめてくれよ。オレ、こんなに髪切ったの初めてなんだっけ。くせっ毛誤魔化そうとすると、ここまでやらなきゃならなかったんだ。
考えてみろよ。自毛より短い鬘を被るのと、自毛より長い鬘を被るの、どっちのが楽だと思う?そうすると、こうなるんだよ。何しろオレは不器用だからな」
カズヤは恨めしそうな顔で、切って立てている、ブリーチで傷んだ髪を見上げた。
「日向って、本当によく解らないやつだよな」
川上は呟いた。
昼休みの一件で、三人は揃って保健室のベッドに横にならざるを得なかった。
彼らがいると、そこに一般の生徒は入ってこなくなる。現れるとしたら、それは仲間のテルヒか日向だけだ。
「お昼のこと?」
授業が終わって騒ぎを知ったテルヒは忌々し気に言い捨てた。
騒ぎを聞きつけた日向は保健室に現われるなり、横になっている三人を怒鳴り付けたのだ。
「お前らはバカか?あの鈴木和哉は《反日教》じゃないにしろ、お前らが因縁吹っかけたやつは、《反日教》のメンバーだ!
だから手当たり次第に因縁吹っかけるのは止めろって言ったんだ。つまらないことでつけこむ隙を与えることになっちまったじゃないか。
かすみちゃんのやつ、オレらに手を出させて、それを理由にオレらに挑むつもりなんだよ!
あぁあ、オレがいない間に随分敵を作ってくれたもんだよ。余計な面倒増やしてくれて、まったくできた部下だよ」
日向の嫌味に、さすがの三人も小さくなった。川上の軽率には、他の三人も手を焼いていた部分がある。でも、そこまで嫌味を言われる理由も解らない。
何しろ相手はただの素人ではないか。
「乗らなきゃいいじゃないスか。それに連中なんか、オレらの相手になりゃしないし」
日向が何で素人を相手にしなくちゃならないことで怒っているのか、三人は解らなかった。
「そっかぁ……。そうだな、乗ろうか」
暫く考えていた日向は、そう言った。
「岩城の言う通りだ。所詮俄か作りの寄せ集めだもんなぁ」
「はっ?」
予想外の展開に、ベッドに横たわった三人は耳を疑った。が、そのようなことお構いなしとばかりに、日向は続ける。
「確かに、お前ら《日向四天王》の相手じゃないからな。いっそ今のうちに叩きのめして、馬鹿な気持ちを萎えさせてやるのもいいかもな〜
まったく、かすみちゃんもバカだよな……」
という日向の指示で、《日向四天王》は動き出したのだ。
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