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第6部:第一ラウンド-3

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

『カズヤくん、昼休みに聡の友達がやるわ。頑丈な男の子だけど、抵抗は一切しないって』

 打ち合わせから何日か経った朝、信吾がカズヤのノートに落書をしてきた。口で伝えられなくもないのだが、その日に限って日向も《日向四天王》も教室にいた。

 カズヤはうなづいてみせた。それだけで充分のはずだ。

『カズヤくん、強そう♪』

『字で書くと、確かに女っぽいぞ』

『そうかしら?』

 そこまで書いて、カズヤはページを替えた。数学教師が近付いてきたからだ。

 外見だけでも、真面目に授業は受けていないと、後で面倒臭いことになってしまう。


 問題の昼休みになった。午後の授業は体育で、体育館に移動がある。不幸なことに体育は当然担任のピーチが担当だ。

 しかしそれも今日は必要なことだった。

 《日向四天王》はピーチだからこそ、体育の授業は必ず出席するのだ。そうでもなければ、《日向四天王》に因縁を吹き掛けることは難しかった。だからこそ、信吾はこの日をねらって指示を出したのだろう。

 カズヤにとっても、用もないのに外を一人で歩いていて、タイミングよく他人を救けるなど、不自然極まりないから、信吾は移動の最中に騒ぎが起こるように仕組んだのだろう。


 外はサッカーやバレーボールを楽しんでいる生徒で、結構にぎわっている。いつもと変わらない、取り敢えず平和な昼休みだった。

 信吾が救けにくると信じ、一年の男子は行動を起こした。

 けたたましい物音が渡り廊下で鳴り響いた。

「何、ガン付けてんだよ!」

 次いで川上の大きな声が響く。計画がスタートしたのだ。

「え、オレは何も……」

 がっちりとした体格のその少年は、とぼけてみせたが、すぐに謝った。

「ごめんで済んだら、警察いらねぇって、よく言うだろうがっ!」

 川上はくだらないことを言って、少年の腹を蹴り上げた。

 当然のように野次馬は集まってくるが、誰も止めようとはしない。止めに入ることができずにいる。

 そして少年も謝るばかりで抵抗をしないから、川上はそれに調子付いていた。


 少年は信吾を待っていた。しかし現われたのは、見ず知らずの三年生、カズヤだった。

「何、くだらないこと言ってんだよ、バーカ!」

 カズヤは間に入っていった。


「うるせぇんだよ!やられたいのか?」

「ヤだね。不意打ちで骨折させられたりしてないからなぁ、どっちがやられるかな」

 カズヤは笑ってみせた。先日の恨みもある。

 少年は戸惑いの表情を見せていたが、カズヤはそれを無視した。

「余裕かましてんじゃねぇよっ!」

 川上の攻撃を、カズヤは軽々とかわした。

 百八十センチを超す長身が、宙を舞う。

 カズヤが空手をやっていて、多少は身のこなしが軽いことは、ピーチの革スリッパを躱したことで知ってはいたが、この長身でここまで動けるとは、正直川上は驚いていた。

 しかし、カズヤは攻撃をしてきていない。

「逃げるだけかよ、独活うどの大木!」

「じゃ、三人でこいよ。川上がやられたの見て逃げ出されたら、こっちもつまらないっけ」

「この野郎!調子こいてんじゃねぇよ!」

 この挑発に、野口や、冷静な岩城でさえもが頭に血を昇らせ、カズヤにかかってきた。まさに計画通りだった。


 そういえば、昔、空手の師匠に言われたことがある。

 教えたわけでもないのに、昔からカズヤの動きは『動』で、サキの動きは『静』だったと。二人はそれぞれにかなりの上達を見せていたのだが、どうしても二人は役割を逆にはできなかった。それができるようになったら、二人とも完璧に強くなれるのだと。


 しかし、今は素人相手に完璧を追求してはいけない。派手な動きで相手の頭上を飛び越してみせたりしながら、《日向四天王》が疲れるまで攻撃を躱し続けていた。

「ひ、卑怯だぞ……」

 カズヤへの歓声に包まれながら、《日向四天王》の三人は息を切らせて言った。

「じゃ、攻めちゃっていいのヮ?」

 再び挑発するようなことを言い、カズヤは向かってくる《日向四天王》の腕を掻いくぐり、三人の首筋を打った。それは一瞬の出来事だった。

しばらくは息苦しいと思うよ。そういう場所を打ったからヮ」

 地面にひざまづき、苦しげに喉元を押さえている三人を、カズヤは見下みおろした。


「それと、そこのあんた」

 カズヤの視線はやられ役の少年に向かう。

「悪くないの解ってたら、こんな連中に頭下げるんじゃねぇよ。こいつらがイキがるだけだっけよ。

 大体、少しくらいは逆らってみろよな。待ってりゃ誰かが救けてくれるってわけないんだから」

 カズヤは水面下の《反日教》や、それ以外の耐えている生徒たちには、きついと思える一言を言い放った。


「大丈夫?」

 わざとらしく遅れてやって来た信吾は、やられ役の少年に駆け寄って、「遅くなってゴメンナサイ」と言ってみせていた。少なくともそうすることで、彼の対面は取りつくろえていた。




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