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第5部:《SIN》-6

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

 まさかカズヤが盗み聞きしているとなど思ってもいないシンは、話を続けている。


「そこでだ、まずは両方の力関係を見極める。そしての悪い方に手を貸す。そこで互角になったら、連中が疲れてきた頃合見計らって、優勢な方に寝返る。

 ここで忘れちゃいけないのが、オレらの目的は《日向》を潰すことだから、先に《反日教》に潰れちゃ困るわけだ。お互いが潰れないようにしながら、両方が疲れるのを待つ。そして最後の美味しいところだけをさらうというわけだ。どうだろう?」

「あんたの言うことは間違ってたことないんだ。今更とやかく言う気はないよ」

「面白そうじゃないか。表舞台は《日向》と《反日教》に任せて、実際を動かすのはオレらってことだろ。なんか影の支配者って感じでカッコイイじゃん」

「そうだよな。表に立ちすぎたら、《日向》が潰れた後、オレらただのツーリングクラブに戻れなくなっちまうもんな」

「そうそう!」

―――これは特ネタだぜ。知らなきゃだまされるところだったよ。

 カズヤは芸能レポーターのような気分で、それ以上は《日向》絡みの話が出てこないのを見て取ると、すぐに信吾に知らせねばと、妙な使命感に駆られてその場を離れた。


 カズヤは家に戻るとすぐ電話をかけた。かけた先は茂木接骨院の中の、《反日教》の回線だ。

「さすが神森出身は違うわ。木登りなんて、そう簡単にできないもの、東京じゃ」

 電話越しに相当数のざわめきが聞こえるのは、《反日教》も集結している証拠だ。

「それ、ほんとに特ネタね。丁度いいわ」

「え?」

「こっちの話」

 信吾が策を巡らしながら微笑んでいる姿が目に浮かぶ。

「んで、思ったんだけどやぁ……」

「ちょっと待って。そのなまり、気を付けてくれるかしら。カズヤくんだってバレちゃう」

「あ、ああ」

 何を言いだすかと思ったら、言葉遣いの指導だ。これには少々うんざりしながらも、必要なことではあるから反論はしない。

「ま、それは学校で少し残して、《反日教》では完全に使わない。それでいいだろ。で、さっきの続きだけど……」

 カズヤは急いで続けた。うっかりぼうっとしようものなら、信吾に話を取られてしまいかねない。東京人はせっかちとは聞いてはいたが、これには疲れる。


「《SIN》はきっと《日向》と《反日教》を嗾けて対決させようとすると思うんだ。せっかくだから乗って、直接対決を一度したらどうかな。

 夏休みまでに勢力図を定着させとかないと、中心メンバーの三年は受験だろ。聡に不安定な《反日教》を任せちゃ、可哀相だしさ」

「あらぁ、確かにその通りだわ。向こうもこっちが頑張ってんの気付いてるんだったら、尚更だわ。

 でもねぇ、きっかけってもんは必要でしょ。転がり込んでくるもんでもないしねぇ……」

 信吾は、また誰かを犠牲にしないと駄目だと言っている。しかし、カズヤは絶対嫌だった。きっとすぐ隣に誰かいるのだろう。信吾は直接的表現を避けている。


「ちょっと《日向四天王》と目を合わせるだけでいいんだけど……」

「何が『だけ』だ。殴る蹴るのオマケ付きだろが」

「カズヤくんが直接対決の案を出したのよ。

 じゃあくけど、どうしたらきっかけつくれるのよ」

 この意見に反論できるだけのものを、カズヤは持ち合わせていない。

「じゃ、こうしよう。始まったらオレがすぐに止めに入る。オレの立場は『中立』ってことではっきりしてんだからいいだろ。それにまさか連中だって、《反日教》がきっかけを作る為にわざと目を合わせてきたなんて、思うわけがないし、油断してるだろうしさ。

 でも《反日教》の人間がやられかけたんだから、信吾は仕返しを考えて当然だ。ということで、オレとは全く関係ないところで始まるわけだ、直接対決は」

 要は因縁をつけている場に居合わせさえすれば、暴力沙汰は避けられる可能性があるというわけだ。

 ただ、相手がいきなり暴力行為に走った場合は致し方ない。


 しかしカズヤの思惑など、信吾にとってはどうでもいいことなのだ。

「前座はそれでいいわね。問題はその後。《夏青葉》のお披露目と初采配。どうする?シンはヘルメットだし、包帯でも巻く?」

「おいおい」

「冗談よ。そうねぇ、髪の毛は脱色してくれる。で、髪は結んでね、それからストッキングを被る」

「……お兄さん、酔っ払ってます?」

「いやぁだ、冗談に決まってるじゃない。ストッキング被ったら、ただの銀行強盗になっちゃうわよ。

 とにかく、カズヤくんはその目が印象的すぎるのよ、アキラちゃんみたいにね。それさえ隠してくれればいいわよ」

 信吾は何となくその名を口にした。

 その名を聞いたカズヤの胸は少し痛む。アキラは、自分をこの争いに巻き込ませたくなくて、サキに忠告をたくしたというのに、今、《夏青葉》を勝手にかたって、渦の中心にいるのだ。

「今ね、隣の部屋にメンバーが揃ってんだけどね、ついでだから声でお披露目しようと思うんだけど。今の作戦をそのまま伝えてくれればいいわ。電話のスピーカ機能を使えば簡単なことだし」

 「ちょっと待てよ」と言う暇もなく、信吾は電話口を塞ぐことなく「みんな、聞いて!アキラちゃんの右腕、《夏青葉》から作戦があるわ!」と大声を上げていた。すると、その場は急に静まり返った。




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