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第5部:《SIN》-2

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

 《SIN》の中心メンバーは、都内で十指に入る進学校の生徒、しかも成績優秀者ばかりがそろっていた。そういう学校のわりには、見た目は少々派手かもしれない。

 しかしそういうことを許す緩い校風は、どちらかといえば進学校に多い。学校と言う立場上、進学率を上げることは重要かもしれないが、人として立派であることの条件に、容姿の如何いかんは大して重要なことではないからだ。

 これも《SIN》のメンバーにとって重要ではないが、中心メンバー以外は、世間一般から見たレベルで言うならば、然程さほどレベルの高くない学校の生徒や専門学校生、働いている者が多い。《SIN》にとって重要なことは、楽しく走れるかどうかしかない。


 《日向》の人間は、大概成績のいい人間を毛嫌いするふしがある。彼らは勉強ができず、教師に相手にされないからグレた、というケースが多いのだ。

 彼らは何か理想や思想に従って主張しようとしてそのスタイルをしているのではなく、見捨てられた自分自身の存在を主張する為に目立った格好をしている。

 大人の意味を勘違いして、酒やタバコをやってみて、鬱屈うっくつされた感情を吐き出しているだけにすぎない。

 ただ、自分が見捨てられていないという確証が欲しくて。


 そんな《日向》と外見がよく似ている《SIN》ではあるが、中身は違っている。決定的なところが違っている。

 それは、彼らには向上心がある点、そして常に理性的である点だ。そこは重要なことだ。

 彼らの学校の同級生たちは、妙な上流意識から、自分たち以外を対等に扱おうとはしない傾向がある。しかし《SIN》のメンバーは、決してそういうことはない。それだからこそ、メンバーから慕われているのだ。

 当然、彼らは学校においては異端児扱いされている。高校生がバイクに乗っていること自体が不良と見られる世の中、好きだからというだけで乗っていることは難しい。だから《SIN》のメンバーは、不良ではなくてもバイクに乗ることを認識させたいが為に、『やるべきことはやる。自分で責任取れないことはしない。校則を守る必要あるか否かは、自分で判断する』とモットーに、行動をしていた。


 それはある日のことだった。いつものように集まったメンバーがツーリングに行った帰り、たまたま暴走族と警察との追いかけっこに出くわしてしまい、彼らと混同されて追われることになった。

「オレらは違うって言おうぜ、シン!」

 メンバーの一人はそう叫んだ。

「オレに構わずお前らは戻れ。オレはこいつらを誘導する!」

「そんなバカな!捕まったらどうする?」

 捕まったら、それこそ学校にいいように言われてしまう。

「オレは捕まらないよ。それに、オレは連中と話がしてみたいんだ!」

 シンはそう叫ぶと、神宮司を促し、暴走族のバイクに並んだ。

「神宮、他に回ってくれ。オレ一人でこいつは何とかする」

 シンは後部座席から、軽々と隣のビッグスクーターの後部に乗り移った。


「き、貴様は?」

 リーダー格の男は驚きはしたものの、それでハンドル操作を誤るようなことはなかった。

「シンだ」

 シンは何やら言っているパトカーを振り返った。

「イライラするったらありゃしない。点数挙げてねぇんじゃねぇの、中年ジジイは。

 ちょっと頭下げろ。ハンドル貸せ!振り切ってやる!」

 どうやって、と、問い返す間もなく、シンは下げた彼の頭の上からハンドルを握り、一跳びで運転手の前に降り、そしてそのバイクのステップに足を下ろした。

「しっかりつかまってろよ。このバイク、目立つからな、も少し地味なのにしろよ」

 と、シンはセンタースタンドをアスファルトにこすり付けて火花を散らしながらも急ハンドルを切り、今までとは逆に、今度はパトカーの群れの中に突っ込んで行ったのだ。

「おい!捕まりに行く気かよ!」

 さすがに男は慌てたが、シンは見てろとばかりに何も言わずに突き進んだ。


 車の集団は小回りが効かない。寸胴とはいえ、ビッグスクーターは車よりは小回りが効く。シンは見事なハンドルテクニックで、混乱するパトカーの間を縫い、更には狭い脇道に滑り込んだのだ。

 男はそのテクニックに黙るしかなかった。しかも、このシンと名乗る男は、警察を振り切った後は、きっちり交通法規を守っているではないか。

 黙る男のことなど気にせずに、シンは爆音をとどろかせる華美なバイクを操って、いつもの公園に辿たどり着いた。


 既に何人かがいた。

「お節介したな」

 華奢きゃしゃな身体つきだが、実際よりもすっきり背が高く見えるシンは、ヘルメットを脱ごうとせずに言った。

「いや、礼を言う。救けられたんだからな」

 男は言った。

「それにしても、すっげー、賑やかなバイクだなぁ。耳、悪くなんねえの、あんたら。しかもふんぞり返って運転しにくいし、ローダウンしすぎでコーナリング悪いし」

 シンは男のバイクをあごで示した。

「あれじゃ、捕まえて下さいって看板背負ってるようなもんじゃんか」

 今の運転を見たところ、かなりバイクには乗り込んでいるようだが、その割に子供っぽい口調をのぞかせる不思議な男だと、暴走族のリーダーはシンについて感じた。

「で、あんたらは何処どこのグループの誰なんだい?」

 問い掛けたリーダーに、シンを含む彼らの仲間たちは笑い声を上げた。




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