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第3部:反日向・反教師同盟-3

本作品は、前作『約束された出会い』編の続編となります。先にそちらをお読みになられた方が、スムースに作品世界観をご理解戴けることと思います。

http://ncode.syosetu.com/n9537d/

 待たれているなど知るわけもないカズヤは、ゆっくりのんびり考えながら、慣れない松葉杖に苦戦しながら歩いていた。

 勿論、向かう先は茂木接骨院。

 一日杖を使って、いい加減その扱いにもなれたから、わきの下が痛いということはない。杖に全体重を預けることなく、上手に階段昇降もできるようになった。

 それでも出歩くのは面倒臭い。とはいえ昨日は保険証もなく直接行ってしまったから、どんなことがあっても行かなくてはならないと思っていた。何しろ茂木は、本来は全額自費で支払うべき料金を、保険証を後で持ってくればいいからと、保険証の窓口負担だけで治療してくれたのだ。

 それに、折られて痛くないわけがない。

 昨日よりもれが表面に出てきたぶんだけ、固定が若干きついような気もする。


「こんにちは〜。お願いします〜」

 学校から直行したものだから、午後の診療が始まるか否かの時間に着いてしまったカズヤは後悔した。

 未だ他の患者さんの姿が見えないし、先生の姿も見えない。

―――仕方ない、二度足運ぶのは辛いから、待たせてもらおう。

 カズヤは診察券を受付に置いた。


「やっほー♪カズヤくん」

「あれ、日渡さん。どうして?どっか怪我してたの?」

 カズヤは驚いた。

 受付から見える診察室の奥から、セーラー服の絵美が、診察室の奥から手を振っているではないか。

「ん〜、まあね。それより、どう、調子?」

「調子って言われても、昨日の今日だし」

 カズヤは苦笑いだ。

 たとえきたえてある身体といえども、骨が折れているのだから、腫れと熱でズキズキするし、歩く度に振動が響くし、使い慣れていない筋肉を使えば、疲れもするし、筋肉痛にもなる。

 カズヤは体力に物を言わせて、何とか松葉杖に慣れて生活をしたが、実は結構音を上げたい心境だった。強がりは意味がない。

 何しろ教室が四階なのだ。公立の中学校にエレベーターなんて文明の利器は存在しない。

 まあ、真夏じゃなくて良かったと思う。ギプスの下で汗をかく季節だと、匂うしかゆいし拷問だ。


「それもそうよね。どぶ板踏み外したんだっけ。意外〜」

 含みのある絵美の微笑みに、カズヤにしては珍しく、何かを感じた。

「あの……まさか!」

「そう、気付いた?実はね、わたしも《反日教はんにちきょう》よ。意外?」

「ちょっと」

 カズヤは正直にうなづいた。

「あれ、委員長まで!」

 「よっ」と顔をのぞかせた梅津の方が、カズヤにとってはもっと意外だったかもしれない。


 そして導かれるままに奥の部屋に入ってみて、カズヤは更に驚いた。

 先ず委員長の梅津とつるみそうもない加賀美はいるし、まるで小学生のような少年もいる。

「そんなに意外だったかしら」

 信吾は、カズヤの驚きの表情を見て、微笑んでいた。

「まあ、ね」

 カズヤはその気持ちを隠しはしなかった。

「それだけいろんな人間を痛めつけてんのさ、連中はよ」

 知ったように、加賀見が長めの前髪をかき上げて言った。

「例えば、小学生の時から不良連中に目を付けられてて、中学行ってもそれに負けないようにって思ってると、そう思ったヤツほど早速叩かれるもんだったりさ」

 度の強い眼鏡をいじりながら、梅津が話した。

「でも、確か《日向》って、オレらが小学六年の時に結成されたって聞いたけど」

 カズヤは疑問を正直にぶつける。

「結成されたのはね。

 でも、《日向》は小学生だけが作ったグループだぜ。そのくらいの年齢にもなれば、誰が自分たちを嫌ってるかなんて、それこそ結成しようがしまいが判ってるだろ。

 怖ろしいよ、あいつら。小学生の頃から先輩に命令してるんだから」

 梅津がひとしきりしゃべり終えると、加賀見が続ける。

「オレは初期の《日向》にいたから、連中がどういう考えで行動始めたか、少しは解るんだ。

 オレは日向ってヤツ個人は、いさぎよくて好きだったんだ。悪いのは《日向四天王》なんだ。日向がいなくなったら、連中は好き放題し出してさ。

 だから、日向がいなくなって気に入らないから抜けたら、オレのこと集団リンチだぜ。こっちだって腹立つから、勢い余って《反日教》さ、今じゃ」

 梅津と加賀見は、一頻ひとしき(日向四天王)の悪口を、競争するように言い続けた。

「何でもいいけど、頼むっけ、順序追って話してくれよ」

 とうとうカズヤは音を上げた。

「ああ、悪い悪い」

 梅津は頭を掻いた。


「ちょうど二年くらい前かな、それまで中学生の不良グループを引き連れた高校生の不良グループ同士が、そこらでよく喧嘩をしているのは見ていたから、不良の喧嘩そのものを気にすることはなかったし、オレは絶対あんなにならないって心に決めてたし、第一オレ自身が関わり合いを持つことない別世界のことだと思ってたんだ。

 ま、取り敢えずオレのことは置いといて、オレの目から見た《日向》の概略を話すと……」

 梅津は話し始めた。




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