欲求と欲求
『小嶋くん。今日会える?』
『放課後?』
『うん』
『してほしいの?(笑)』
『うーん…そうゆうことにしといてww』
『別にいいよ。部室?』
『ありがとう!うん、鍵は開けておくね』
『はーい』
そんなやり取りをしていると、じゅんここと篠ノ井准が私の携帯を覗いてきた。
「なになにー、小嶋くんと会うの?」
にやにやとしながら私を見る。
「へへー、いいって言ってくれたからさー」
私もばれないようにへらっとして答える。
「部室で二人っきりとか…あーやーしー」
「そんなことないってば」
あははと笑いながら、時計を見ると授業開始1分前。
「あ、行かなきゃ!ほら、急ご!」
「ちょ、待ってよー」
慌てて階段を駆け下りて、生物室へと急ぐ。
…大丈夫。じゅんこにはばれてない。私たちが部室で何をするのか。ばれてない。
その日の授業はなぜか1分1分が長く感じられた。
掃除を終えてSHを終えると、思わずため息がでる。
「佐久間さん疲れたの?」
そんな私を見て早川くんが声をかけてくれる。
「あ、ああうん。なんか今日一日が長く感じてさ」
「あー、あるよねそうゆう日」
「うん」
私は鞄に荷物を詰めて、席を立った。
「あれ?佐久間もう帰るのー?」
すると今度はじゅんこが駆け寄ってきた。
「あ、うん」
「…あ!そいえば~、むふふふふ」
「ちょっと!変な笑い方しないでよー」
「なになに?」
「早川くん!別に興味持たなくてもいいってば!」
じゅんこと早川くんが楽しそうに私を見る。
私はそこから逃げるように教室を出て、部室棟へ走った。
早く早く早く…!!
会いたい…
早くこのドキドキを抑えたい…
走るスピードが少しずつあがる。
私はポケットから鍵を出しつつ、部室棟の階段をまた昇って2階の一番奥にある部屋の鍵穴に鍵を差し込んだ。
カチャ——
胸の鼓動が早まる。
ドキドキしながら部室に入って、椅子に腰かける。
「小嶋くん…早く…」
そう呟いた瞬間、ドアノブがひねられ、ドアが開いた。
「あ、小嶋くん!」
思わず立ち上がる。
小嶋くんは静かにドアを閉めて、鍵をかけた。
「…あ、ごめんね?急に」
「別に。で、やるの?」
「うん!やりたいの!」
すると小嶋くんは少しだけ口元を緩めて、少しずつ私に近づいてきた。
右手を私の腰にもってくるとそのまま滑らせて、スカートの上からお尻を触った。
そしてそのまま、スカートの中に手を入れて、下着の上から…
私はその間、じーっと小嶋くんの顔を見ていた。
「…あのさ、見んでくれん?」
「恥ずかしいの?」
「違う。キモイの」
「誰が?」
「先輩が」
「もー、ひどいこと言うねー…っ!」
その時、ぴくっと衝撃が走った。
指が、中に入ったんだ。
「…馬鹿…入れるときは、言ってって…言ってるでしょ…」
軽く睨むと、小嶋くんはニヤッと笑って中で指を器用に動かした。
「っ…」
私は口を両手で抑えて、声が漏れないようにした。
まだそんなに濡れてないから、少しだけ痛い。
でもそれは、すぐに苦痛から快感に変わる。
「こじ…まくん…」
「先輩、相変わらず指だけなのにこんなに締め付けるんですね」
「うるさ…いっ」
ああ、どうしよう…もうイキそう…
やだ…だめ……そんなに動かさないで…!
ビクッ
「っ!!」
急に体から力が抜ける。
目の前にいる小嶋くんにもたれるような体勢になる。
「先輩もうイッたの?」
「…はぁ…っ」
「…」
私は少しだけ呼吸を落ち着けて、すぐにスカートの折れを整える。
「…じゃあ、次は私の番だよ?」
「え?」
「小嶋くん、失礼します」
私は小嶋くんをまっすぐ見据えて、両手を伸ばした。
小嶋くんの首に、両手を添えて、少しずつ、力を入れる。
「結局これもやるの?」
「…当たり前じゃん。私たちの交換条件でしょ」
「っ…」
小嶋くんが少しだけ苦しそうに眉を顰める。
…あ、苦しいんだ…
そう思うと思わず顔がにやける。
かわいい…。
もう少しだけ…
そんな気持ちは理性で抑えきれず、首を絞める手に力がこもる。
このまま呼吸器官をつぶしたい。
もっともっと苦しそうな顔が見たい。
私に助けを求めちゃうくらい。
「…っ!せ、んぱ…」
「…なぁに?どうしたの?」
笑顔で聞く。
「も…いいでしょ」
「…そうだね」
パッと手を放すと、小嶋くんの呼吸が少しだけ荒くなった。
「…小嶋くん、ありがとう!今日も最高だった!」
私が笑って言うと、小嶋くんは軽くうなずいた。
誰も知らない。
私たちの奇妙な関係。
体を求める小嶋大和と、首を求める佐久間千尋は
互いに互いの欲求を満たすべく、取引をしていた。
小嶋にとって佐久間はセフレ。
佐久間にとって小嶋は首を絞めさせてくれる人。
誰にも言えないその欲求を二人は互いに求め合っていた。
…これは、そんな二人と周囲の友達との、非日常的な日々の物語。