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飛び降りる

作者: xj8454

 夕刻。

 死にたい・・・。

 俺はそう思って、眼下を見下ろした。緑の草が見える。きっとそこへダイブしたら、地面は俺の血でぐしゃぐしゃになるのだろう。

 死にたい・・・生きていることに何の意味がある。

 俺は、これから先のことを考えた。

 が、何もない。

 未来は空っぽだ。

 だから、いい加減死にたい!

 俺の感情が沸き起こってきた。足が震える。窓の端に手を掛ける。地面を見る。吸い込まれそうになる。

 俺に価値など無い・・・俺は・・・・もう・・・・死ぬんだ!

 と、雲が空を包み込み、雷鳴が轟いた。やがて轟々と雨が降り注いできた。雨粒が俺の顔面を濡らす。閃光が空を引き裂き、怒号のような雷鳴が大気を震わせた。

「でやああああああああああああああああああああ!」

 俺は飛んだ。

 五十センチ下へ。

 無事自宅の庭に着地。

「死んだ・・・」

 俺が呟くと、雨がやんだ。

 見上げれば、青い空が広がっている。虹が見える。

「あー、死んだ死んだ。死線を越えて、これで生まれ変わったわ」

 そして俺が振り返ると、そこに、怒りの形相で震える奥さんが仁王立ちしていた。

「ちょっと! あんた何してんの!? 服ぼとぼとやないの! 足もどろどろやし!」

「ちょっと今、俺飛び降りて死んだんだ」

「ガキか! 一生そこで死んどけ! あほ!」

 奥さんは窓をぴしゃり!と閉めると、鍵を掛けた。

 十分後、許しを得て家の中に戻った俺は、シャワーをして服を着替えると、奥さんの作った温かい味噌汁を飲んでいた。

「飛び降りたくなる時もあるやろ。気持ちだけでも」

「あんた見とったらこっちが飛び降りたなるわ!」

「この味噌汁滅茶苦茶うまいわ。生き返るわ」

「あ、そ。さっき毒入れといてん」

 俺は奥さんの顔を見て笑った。

「やっぱり? その毒、きっと愛っていう名前の毒じゃない?」

「何が愛やねん! 愛で飯が食えるか!」

 心なしか、奥さんの声が緩んでいるように聞こえたのは、俺の願望かも知れない。

まさかこんなおちになるとは・・・・

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