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廻り逢うそのときに  作者: 夕露
■二章 欲しいもの
23/50

23.嘘吐きはだあれ




 

ダラクは依然としてなにも話さず話しているのはリオと晃だけだった。二人が話す内容を聞き逃さないようにしながら、斜め前で視線を落としたままのダラクを窺い見る。合わさることのない視線は拒絶のようだ。


「晃。お前が言うようにもう各地で小さいが内乱が起き始めているよ。盗賊も増えて不穏を感じ取っているものは多い。……いまのところ戦争はないけど、もし起こったら国の出入りは簡単じゃなくなるね」


内乱?戦争?国の出入りができなくなる?

予感は抱いていても実感できない、現実離れした言葉に我に返る。


「内乱が起こってるって……。そんなのいままで見たことなかったよ?それに、戦争が起こるようなことがあって他の国に行けなくなったら──」


どうすればいいんだろう。

言葉にできない言葉がずしりとののしかかる。内乱ってなに?オ ルヴェンを自由に歩けられなくなったら、旅はどうなるんだろう。この世界に来てからすぐ始まった旅は、馬鹿みたいだけれど当たり前のように自然なことになっていた。それが出来なくなる?どうなるんだろう。どうすればいいんだろう。


「……いままではそういう場所は避けていたからね。でも、もうそろそろ避けても遭遇するかもしれないから知っておいたほうがいいよ。戦争が始まったら不可侵領域にでさえパスが必要になるし、安全を前提として周れる場所は少なくなる。ラザルニアとかなんかは貿易が命だから比較的行きやすい場所だけどね」


それと、と言葉を続けながらリオは肩をすくめる。

驚いて出かかった言葉をすんでのところで飲み込んだ。リオは話を続けている。

ここに至るまでの経緯の補足をしているリオとその話に耳を傾けるダラクと晃を眺めながら、平静に見られるよう努力した。心臓が動揺に昂ぶっているのをどうしたら鎮められるだろうか。机の下で震える手を握りしめる。


リオが肩をすくめたのはこれで五回目だった。


一回目はリオとダラクが始めて出会ったときにしたダラクの質問のときだ。

二回目はラミアの国の成り立ちの話のとき。

三回目は、なんでリガーザニアに行くのかと尋ねたとき。

四回目は……大切な人が死んだときリオならどうするかという話をしたとき。

そして、いま。戦争が生じたときに国の行き来をどうするかという話のときに。


どれもこれもリオは話をはぐらかしてる。質問に答えているときもあるけど、肝心なところをリオは答えてはいない。

……リオが肩をすくめるときはきっと、なにかを隠しているか嘘を吐いているときだ。


いまは──どっち?


リオは安堵を感じることの出来る人だけど、信用ができる訳じゃない。

『お前本当に馬鹿?ユキはこの世界に来たばっかだよね』

忘れはしないあの言葉。

リオと一緒に旅をすることになって目的地のリガーザニアについて話したときだ。あのとき私にとってリオは一気に危険人物になった。

私は一度としてリオに “こことは違う世界から来た”のだと、“来たばかり”なんて話していない。それなのにリオは私が違う世界から来たのだと、そしてつい最近来たばかりなのだと知っていた。

なにを知ってるの?なにを隠してる?


「──とまあ、オルヴェンの情勢としてはこんな感じだね。これぐらい知っておいたら、もし旅の途中で争いに巻き込まれてもある程度心構えもできるでしょ。知っておくにこしたことはないからね」

「それは俺も賛成だが、旅ってなんの旅だ?」


もっともな意見にリオが少しばかり身体を固めた。聞きたくとも聞けないことがあるとき、晃みたいに堂々と“改めて”聞くことが出来る人がいると都合がいい。


「俺はユキについているだけだよ。さっきも話したけどユキの力がまだコントロールできてない状況だからね。様子見」

「いいとこ監視か」


興味の無さそうに呟いた晃の言葉にリオの眉がつりあがる。だけど晃はその視線を無視して私のほうを向いた。


「お前はどうなんだ?」

「……私はダラクの人探しの旅に同行してる」

「人探し?」


リオが探るようにダラクを見て、ダラクはそれを静かに受け止めて頷くだけに止めた。リオはそれ以上追求することはせず、一度私を見たあとに、観察でもするようにじっとダラクを見る。

……今回口を滑らせても良かった。だけどダラクが人に知られて“安全”だといえる情報が分からない身としては、多く語らないのが良い。ダラクにとっても私にとっても。もしかしたらリオや晃にとっても。

でも結局はダラクのほうについたことになるのは変わりない。

それぞれの思惑がドロリと浮かび上がり色づきそうになる前に言葉を続ける。


「……それでね?私がこの世界に来たとき居合わせたのがダラクだった。空から落ちてるところを助けてもらって、その流れで街を案内してもらうことになったの。私が右も左も分からないこともあって、やっぱり流れで一緒に旅に出ることになった」


嘘は言っていない。

自分が言った言葉を頭で確認しながら、そんな自分に気がついて笑ってしまう。……視線? 気がついて顔をあげれば、晃とリオから痛いほどの視線を浴びた。二人とも驚きと疑りを混ぜた表情をしている。


「「空から落ちてたって……?」」

「え?あ、ああ。言葉のとおりで空から「いや、そうじゃなくて」


二人のはもった声に慌てながら説明しようとすると、晃が頭を抱えながら遮る。


「なんで、空から、落ちてんだ?」

「ああ成程。驚くよねー私も驚いた」

「いやいやだから」

「そういやあのときなんでユキは空から落ちてたんだ?」

「は?」


晃の言葉にやっと二人の表情の意味が分かって納得してたら、ダラクが二人と同じ質問をしてきた。いや、確かに行ってなかったけど今更感が凄い。ダラクって変なところで大雑把なんだよなあ。目的第一って感じだから些末なことだったのかな?


「あー、前の世界……えっと私と晃がいた世界ね。その世界の公園で一人のんびりしてたら、なんて言ったらいいのかな……全部止まったの。時間が止まったように噴水から落ちていく水も風に飛ばされた葉っぱもぜんぶが止まって動かなくなったんだ」


あれは本当に驚いた。

……そういえばあのときなんで私とアイツは動けたんだろう。そういう魔法?


「そのとき男が現れたの」


そういえばアイツ、今なにやってんだろ。

ひどく遠い昔のような気持ちになりながら話していて、はっとした。ぞくりとした震えが背中にはしって、急に喉が渇きを覚え始める。

皆が私を見てじっと話しの続きを待っているのに、うまく言葉が続けられなかった。


どんな奴だった?

茶金髪の男だった。口元だけで笑う、冷たい雰囲気の男。




なんで今まで忘れてたんだろう。




次々起こった出来事に気を囚われていたとはいえ、なんで、忘れてたんだ。アイツは変わった服装で、金髪に近い茶髪に、碧い眼をもつ背の高い男だった。忘れもしないあの笑顔。笑わない眼はまっすぐに私を見ていた。



「……男?ああ、前言ってた奴か」



なにかを考えていたのかダラクが少し前かがみになりながらポツリと呟いた。

それが静かな空間に落とされた言葉だったからか、全員、ダラクに注目した。全てがまるでスローモーションのように感じる。

ゆっくり、顔を起こす。 脚、膝、手、腕、肩、顎、唇、鼻、目──初めて会ったときより少し伸びている前髪が、ダラクの顔を覆っている。その顔に思い出すのは別人。少しだけ手が震えた。

そうだった。私は初めてダラクに会ったとき、それ以前にも見たことがあるような気がしたんだ。これだったんだ。前、感じた何か分からない大事なこと。


ダラクと私をこの世界に連れてきたあの男は、似てる。


髪の長さは違ううえ髪色も少し違うしダラクより大人びていたけど、似ていた。凄く似てるんだ。それがどうしたんだじゃ済まないぐらいに。

なんで私は今まで気がつかなかった。


「──う、ん。その人はね、前の世界では見ない服を来てたから多分この世界の人だと思う。金髪に近い茶色の髪をしてて碧眼の背が高い男の人だった」


そして、ダラクにそっくりな。


「金髪に近い茶髪の髪で碧眼、背が高い男か。対象者が多いね。他に特徴はなかった?」


そう聞くリオの表情は真剣だ。


「……ううん。なにも」


言葉を飲み込む。

きつくきつく心の中に蓋をする。まだ。……まだ駄目だ。


「そう。ごめん、続けて?」


考えをまとめたのか表情を切り替えたリオに精一杯の笑みを返す。


「ん。その男が私に言ったの。『行くか?』って。それで私は『行く』って言って男の手を取ったんだけど、男はいなくなっちゃってね。しかも地面まで消えて、気がついたときには空から海に向かって落ちてたんだ。それでさっきの話に続くの」

「は?いや、え?……はあ」

「おい。完全にノリじゃねえか」

「……流石だね」

「?はい、順番逆になったけど次は晃だよ」


仲もいいことで、三人とも頭を抱えて溜息だ。

一番最初に意識を切り替えたのは晃だった。


「……まあいいか。ユキがいなくなってからずっとユキを探してたんだけどさ、あの日、何回も誰かに呼ばれた気がしたんだ。それで振り返ってみたら、自分でも信じられねえんだけど、いつのまにか住宅街からなんにもねえ場所にいた。……全部白で気味が悪かったな」


いまこうやって“異世界”という非現実的な場所にいるのにまだその出来事が信じきれないんだろう。晃は眉間にシワを寄せながら自分の記憶を確かめるようにゆっくりと言葉を紡いでいる。

ここは突っ込むのは止めておいたほうがよさそうだ。


「ともかくその場で立ちつくしていたら、急に視界が晴れて目の前に木が現れたんだ」

「木?」


思わず聞き返してしまう。唐突な言葉に驚いたんだろう。リオも、ダラクに至っては身体を前のめりにして晃を見ていた。


「ああ。かなり巨大で、近くにいたからかもしんねえけど一番上が見えなかったぐらいだな。それに配色も変わってて、黄緑色と緑色でできた木だったぞ?」


一瞬頭が真っ白になる。夢で見た木と一緒だ。見当違いなんてこと無いだろう。なにせあの木は普通の木じゃない。……なにか関係があるんだろうか。私もあの木を見たあとこの世界に来た。……そういえばあの木の傍で聞こえた声は言ってたよな──クルナって。

ああ、そういえば──



「“神木”だ」



──神木?

畏怖を感じさせる声はなにを意味するんだろう。震えた声で呟いたリオは目を見開いて晃を見ていた。なんでそんなに驚いているんだろう。魔法が存在するような世界、変わったものがあっても別におかしくはない気がするのに。それとも、魔法があるような世界でも “ありえないもの”なんだろうか。

神木。……そんな神々しい言葉もあの木になら納得だ。


「なんだ?神木って」

「待て。話がこじれるからまずは続きを話してくれ」


話を遮ったダラクの表情になにかしら感じ取ったのか、晃はすぐに話を戻した。


「……ああ。その“神木”が俺に言ったんだ。『お前は望むか?』 って。ユキと会うことを、だな。よく分かんねえし正直パニック状態だったからこのチャンスは一度だけだって言われた瞬間、決めた。そのあと俺は神木に願って、それでこうやってユキに会えることになった──ってことになると思う。それからはお前らも知っている通りだ。気付いたら俺はあそこにいて、お前らと、ユキに会った」


手が温かい。

確認するように手を握ってきた晃を見れば微笑んでくれた。私はうまく笑えているだろうか。動いてくれない口元が震えて音を出しそうになったとき、ダラクが長く重い溜め息を吐いた。厳しい声が部屋に響く。


「その“願い”をするときお前は他になにを言った?」


妙な言い回しに不安を感じるのは私だけみたいで、晃は意味が分かっているのか動揺する素振りはない。


「なにを、そうだな。名前だ」


やりきれないとばかりにダラクが唸った。晃はなにも言わずに私の頭を撫でて笑うだけだった。そして晃の代わりに説明するとでもいうようにダラクが口を開く。


「晃がしたのは“契約”だ」


ざわりと嫌な予感が腹の底から沸きあがって身体を侵食し始める。契約。神木は晃に、私の元へ連れて行くことを対価とした。じゃあ“なんで”神木は晃にその契約を持ち出したんだろう。

重い空気が部屋を埋める。それぞれが色んなことを考えて口をつぐむなか「凄い」と放心した呟きが浮かんで消えた。リオだ。そして興奮しているのかリオが瞳を輝かせながら口を開いた。


「ユキ、晃!……オルヴェンには様々な伝説や神話があってね?その中の一つに神木のことがあるんだ。神木はいま晃が言ったように緑色と黄緑色でできた木で天に届かんばかりの巨大な木として伝えられている。逸話も沢山あるんだよ。その昔神木は実在していて、その美しさに魅了された人たちがそこに村を築いて神木を崇めて暮らしていた。いや神木ではなく呪いの木だ、なんて様々に語られているね。

その中で共通して知られるのが、“神木のふもとで願えばソレを叶えることができる”って話だ。その伝説を信じて神木を求めて旅立った人は多いんだけど……結局その中の誰一人として神木を見た者はいない。正確には帰って来なかったから確かめようがなかったんだけどね。そのことから神木がある場所は獣や闇の者が多く巣食う場所だと言われているけど、まあそれも確かめようがない。それでも人々には信じられて神木は伝説として、ううん……実在するものとして語り継がれている。 この世界で神木は伝説だけど絶対的なものなんだ。

……晃が見た“木”の特徴は伝説の神木と全く同じだ。なにがどうなって神木が晃の目前に現れたのかは分からないけど、晃は間違いなく神木に“願い”を叶えてもらったんだ。伝説のように神木のふもとで願いをしたことで。

伝説は本当だったんだ。そうじゃないと世界を渡るなんて無理だ。いままで願いどころか神木にまで辿り着けた者を知らないから説明しようがないけど、おそらく神木に願いをするなら契約をしないと駄目みたいだね」


一気に話しきったリオは感慨深げな溜息と一緒に肩を落とす。そんなリオを見て目を瞬かせていた晃は、リオが顔を上げて視線が合うと「そうか」と冷静に応えた。それに合わせてリオが晃に神木の詳細を尋ね始める。それは普通のやりとりに思えた。


「契約って」

「……え?ああ、契約は自分の名前を媒体として行うものだよ。詳細は省くけどそれを元に紋様とかを描いてワープや一定の魔法が使えたりするんだ。そしてもう一つの契約が複数で行われるもので、名前を絆にして契りを交わすんだ。交わした契りは“絶対”だからするときはよくよく注意しなきゃならないよ。っていっても晃の場合は神木の力が強いからかな?晃の名前だけで契約が完成してる。……まぁ神木に名前があるのかは分からないけれど、晃は神木の存在さえ知らなかったのに契約が完成したからそうだろうね」


どうしてだろうか。 説明を聞くたびにそれがどうしてもありえないことだと思える。

神木に対しては願いではなく契約?それが神木に対しては普通のやりとり?


「神木は晃に、オルヴェン……私がいる場所に来れるようにするっていう対価を持ち出したんでしょ?それは神木にとってなんの価値があるんだろう?伝説の神木がなんで自分からこの世界にいない別の世界に住んでる晃の前にわざわざ現れて契約を?」

「それは、分からない」


リオはなにか考え込むように口を閉ざす。これは本当に分からないんだろう。まだ納まらない不安に焦りを感じながら一つ一つの言葉を改めて租借し吟味する。

聞き逃してしまうのも見落としてしまうのも駄目だった。このメンバーは秘密がありすぎる。リオとダラクはもとより、晃までもがたったいま嘘を吐いた。晃はいつもなにか誤魔化すとき右の唇だけをつり上げて笑う。それを晃は、オルヴェンにどうやって来たかを説明したあとみせた。

どこに嘘を吐いた?見落とせないのはその“嘘”がなにか私には分からなかったのに、リオとダラクは間違いなく気付いたこと。そして私にその“嘘”がなにか分からないようにするために晃のフォローをまでしたということ。そうまでして私には知られたくないことって?

そこまで考えたら、なんとなく分かってしまった。


晃が吐いた嘘は、多分契約のことだ。


同じところでリオも嘘を吐いている。この世界に来るために晃が神木にした契約──普通なら一方に利益があるだけの契約なんてしない。契約は絶対なら余計だ。だからそれ相応の“条件”とか“縛り”とかのデメリットを晃が負った可能性が考えられる。晃がこの世界に来ることでなにか利益があるとか、単なる神木の気まぐれだったらいいのに。

晃のことだからきっと話してはくれないだろう。話せることなら私に隠したりなんか絶対にしない。

……確かめなきゃ。


「晃とユキがこの世界に来た方法を聞くに共通点はねえよな。ってことはユキと晃をオルヴェンに呼ぼうとした奴らは最低でも二人はいるってことだ。そのうち一人は晃を呼び出した神木で決定だが、 ユキを呼んだ奴……そいつが誰だか分からねえけどヤバイ奴には変わりないな」


場が静まり返る。

晃は私に会うために神木と契約をしこの世界に来たという。それなら私は?


「私を、呼んだ?」

「ならユキが呼んだのか?」

「いや違うけど」

「呼ばれた本人が違う場所を望んでいたから事は綺麗に進んでいったみたいだがな、ユキ。お前は間違いなく呼ばれたんだ。 ……この世界ではこの世界しか存在しない。言ってることが分かるか?神話で語られはするがな、“違う世界”があるだなんて考えられることがないんだ。だから行こうなんても思わない。まして、どうやって行くかだなんて考えもしない。ユキたちだってそうだろう? それなのにユキと晃はお前達の住んでいる世界にはなかったっていう魔法でこのオルヴェンに来た。契約も時を止めるのも魔法でしかありえないからな。

だからユキを呼んだのはオルヴェンに住んでる奴の誰かだということになる。しかも、オルヴェンではない“違う世界”の存在を知っていてそこに住む者を招くための方法を知っている奴だ。……ユキは間違いなくヤバイ奴に狙われてる。考えられないものを魔法にすることはない。できない。だから違う世界から人を行き来させる呪なんて伝わってるはずがないんだ。 それに人に受け入れられない考えは人に厄災を招くことがあるから禁じられている。時を止めるのも、世界を渡るのも禁じられている。その理を知っている奴らは魔法を極めた者の中のまたその一部でしかない。

……“禁呪”だよ。ユキは禁呪で違う世界からオルヴェンに呼ばれた。禁呪はリスクが大きいしその影響力が強いことからそれを知って使う奴なんていないに等しい。それなのに、そうまでしてユキを呼んだ奴がいる。……間違いなくユキの力が目当てだろうな」


隣で晃が息を呑むのと違って、私はひどく冷静にその言葉を受け入れていた。むしろ理由が分かって落ち着いたと言ってもいいぐらいだった。 リガーザニアに来て感じたあの視線はきっとこれが理由。あのときの予想は当たってたんだ。やっぱり“私”が狙われていた。

『行くか?』 

笑ったあの男──アイツだろうか。


「……そっか。そんなに私の力は強いんだね」

「もしかしたらそう遠くないうちに仕掛けてくるかもな」

「そうだね。返り討ちにしてやるけどそれも含めて原因をつきとめたいよね」

「いや力ってなんの話だよ」

「ああ、それは──」


三人の会話のやりとりをぼんやりと眺めながら、けれど必ず聞き漏らさないように神経を張り巡らせる。一つ一つゆっくり考えをまとめていこう。

一つ、一つ。



ああ本当に、このメンバーは秘密がありすぎる。



その一人であることを自覚しながら、心の中でこっそり笑った。





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