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一話

「おはよう」

「おはよー」

ここはイストリア王国のとある女子校。フィオレ学園。

「おはようエマ」

「おはようマリア」

そこに通うエマは友人たちと教室に向かいます。

「昨日の演劇面白かったね」

「そうだね、演技も上手かったし」

「見るとこそこ?…あ、見てよこれ。エリー・ボアストーンの肖像!」

「当時最高の美女って言われてたのよね」

「やっぱり美人ねー」

「…そうだね」

エマはひとり呟く。

(でも私はミシェルの方が好きなんだけどね)

でも言えない。この国ではミシェルは略奪女の代名詞だし、好きなんて言ったら変なやつ扱いされて明日から仲間外れだ。

子供の頃、親が持っていたレコードでミシェルの歌声を聞いたことがある。…素晴らしかった。透明感のある声。難しい曲も難なく歌い上げて、それでもミシェルの歌だと分かる。

でも、そんなことは言えないのだ。だから親も人に対してミシェルの話なんてしなかったし、一度エマがミシェルの話を振ったら、ミシェルの事をよそで褒めたり彼女の曲を歌ったりしてはいけないと言われたのだ。

「でもエリー・ボアストーンって年老いた今も綺麗よね」

「そうそう、気品があるっていうか」

「そうだね」

(そうかな、私はただの意地悪なおばあさんに見えるけど…)

それでも言えない。だからエマは今日もただ合わせるだけだ。




学校の講義が終わった。エマは友人たちと一緒に家に帰った。部屋に帰るとベッドに突っ伏す。

「今日も疲れた」

だけど横になっていると少しずつ落ち着いてきて、鼻歌を歌う。ミシェルの曲。彼女が最後に出した曲だ。この後彼女は王子をエリーから奪ったということで国民の顰蹙を買い、自殺した。

彼女には他にも黒い噂があった。児童買春やドラッグに手を出していた、という噂もあり、それらは自分達の世代も知っている。

その時、窓が開いている事に気づいた。

「あ…やだ」

ミシェルの歌をこのんでいるなんてバレたら村八分だ。急いで窓の近くに向かう。

誰にも聞かれていなかっただろうかー。

そう思って窓の外を見ると、男の子が一人いた。

「あっ…」

まずい。聞かれていたのか。しかもこっちを見ている。だが、男の子と目が合った瞬間その考えは霧散した。

その顔はー…。

「ミシェル…?」

ミシェルに生き写しだった。瞳の色も同じ、空色で、髪はストロベリーブロンド。同じだ。そして、エマはその男の子が、昨日劇場で見かけた男の子である事に気がついた。

だが、男の子はそのまま目を逸らすと、走り去ってしまった。


「どういうこと…?」


エマはそのまま男の子が去っていった方向を見つめていた。


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