九話
キャロルがいなくなってから一週間が経った。クラスの空気は重く、皆キャロルの事を心配していた。
だが、その空気は打ち切られた。朝、キャロルの家からまた通話機に掛かってきたのだ。ベルの音がして、母親が出るとエマに言った。
「エマ、マイルスさんち見つかったって」
「ほんとう!?よかった」
「でも、もう会えないらしいわ。転校するから」
「えっ…?」
学校に行き教室に着くとそのことばかりみんな話している。
「どういうことなの?」
「キャロルが急に転校するなんて」
「挨拶もなしによ」
皆変だと思っている。だけど朝担任教師がキャロルの転校を報せて、どうやら本当の事なんだと実感した。
「キャロルに最後に挨拶させてください」
キャロルの取り巻きの一人がそう言っても、教師はもう決まったことだからと話を打ち切り、授業を始めてしまった。
エマはなんとなく、ずっと嫌な感じがしていた。でもそれがなんなのか分からなかった。
そのせいだろうか。その日はエマは日直で、生徒達から書類を集めて教室に運んでいるところだった。キャロルの事が気になって考えていた。
転校が決まっていたならなぜあんな家族は必死に探したのか。違和感がたくさんあった。何か掴めそうだと思ったときー…。
「あ」
階段を踏み外した。落ちる、と体を構える。だけど、衝撃は来なかった。代わりに、腕をつかまれる感触があった。
「あぶな…」
少し掠れたその声は。
「アンジェラさん…」
転校生のアンジェラだった。




