プロローグ
「公爵令嬢、エリー・ボアストーン!お前との婚約を破棄する!」
「私は何もしておりませんわ、可哀想な殿下、その女に騙されていますのに」
「なんだと…」
「だってその女はあなた以外の男とも関係しているんですもの。証拠はありますわ。この写真を見てください」
「な、こ、これは…!」
「見ないでください、エルンスト殿下!」
「ミシェル!私を裏切っていたのか!」
「殿下…!」
そして、希代の歌姫、ミシェルは一夜にして有名な淫売として国民に知れ渡った。逆に名を上げたのは公爵令嬢のエリーだ。民衆の支持を失ったエルンストは廃嫡された…。
エリーと隣の国の王子が結ばれ、舞台は幕を閉じた…。
パチパチパチパチ、と拍手が鳴る。今日は公爵令嬢エリーを称える演劇の初日だ。
「あー、エリーの物語最高!ミシェルなんてビッチとは大違い!」
「分かるー、まさかこんな事が私たちが生まれる前にあったなんてね」
劇場からはぞろぞろとたくさんの観客が出てくる。その中には若い女の子達もいて、この話が広い年代に受け入れられていることが分かる。
「でも、これって本当のことなのかな」
「なーに、エマ。また疑い癖がでたの?」
「だって、権力者が自分達に都合のいいように話を作るなんてよくある話よ。これがそうじゃないなんて可能性もないわ」
「どーでもいいじゃないそんなこと!それよりもお腹すいたしご飯食べに行きましょうよ」
「うーん…」
エマと呼ばれた少女がふと視線を向ける。なんだか目が行った。厚着をした、ちょっと怪しい男。エマと同世代だろうか。帽子とサングラスを身に付けていて、それでも隠せない美しい容貌。だがみんな劇に夢中だったのか、彼の美貌には気付かれていないようだった。
その彼の口が動く。
「ばかみたいな劇だ」
「え…?」
彼はそのまま劇場の前から去っていく。
「ちょっとエマ。何ぼーっとしてんの?」
「あ、ごめんね」
そしてそのままエマは友人たちと食事に向かったが、なんだか男の子の事が頭から離れなかった。




