有名人達
連続投稿です!
今、僕の前には”超”がつくほどの有名人が揃っている。
この国で軍人であるならば誰もが知っている5人。
奥に座る紅上之国最強の剣士、烏羽漆。
風属性の剣士であり黒の軍服の上から緑の和装を羽織る美女、特選部隊副隊長の神薙苗。
軍人の中で最も多い火属性の剣士で燃えるような赤い髪が特徴の赤銅臙脂。
水を操り戦場で血を降らせる水属性の剣士で澄み渡る泉のように青い髪が特徴の女性剣士、杜若瑠璃。
軍の中で唯一”治療”に特化した土属性の剣士で幼い子供が背伸びして刀を持っているかのような風貌の少女?、柳若葉。
彼らの一人が戦場に姿を現せば敵軍は一目散に逃げていくほどに自国でも他国でも有名な5人。
全員がそれぞれ意匠にこだわった軍服を着こなす。その全ては”黒い軍服”の上からであり、その黒い軍服こそが彼らを特選部隊として象徴している。
僕達と彼らの軍服に色の違いがあるのは階級の違いではない。
階級がどれだけ高く、等級の高さがいくつであろうと軍属の人間は白い軍服を羽織ることになっている。
それでも彼らが黒い軍服を着る理由、それは彼らが明確には軍属では無く盟主直属の護衛部隊であるからに他ならない。
軍人で最も階級の高い一等級将官でさえ特選部隊に対する指揮権は無く、特選部隊は盟主からの指揮でのみ刀を振るう。
それはなぜか、偏に彼らの力が常軌を逸しているから。
どれだけの負け戦であれ、ひとたび彼らのうちの一人が戦場に出れば我が国の勝利は決定づくほどに強い。
敵国に対して、「撤退しなければ殲滅する」という意思表示のために多くの軍人に紛れても目立つ”黒い軍服”を着ているのだ。
そして、その実力ゆえに彼らは個人の判断で戦場を走る”遊撃部隊”なのである。
彼らは他の軍人と共闘できる程度の実力でなく、彼らは自分の意志と盟主の指揮でのみ戦場を舞う。
”最強の個人”それを直接指揮できる者はいない。
話は変わってしまったが、そんな有名人たちの前に立たされた僕と白花さんは急に始まった面接に戸惑っていた。
「……あの、私は特選部隊に入隊できると聞いてここに来たんですが」
「そうだな。確かにお前たち2人には部隊推薦状を送った。ただし、それは隊長が認めたわけではなく、お前たちを強く推す声があったため選んだだけだ」
「推薦状を隊長以外の意思で出すことなんてできるんですか?」
「俺たち特選部隊には例外としてそれが認められている。……それと隊長が話しているときに遮ることは許されない。――次は無いぞ」
僕も白花さんも推薦状を持ってここまで来た。
そもそも推薦状とは個人部隊の部隊長が出すことで「自分の部隊に入隊してほしい」という意思を表示するもの。
つまり個人部隊に入隊できるような実力者であれ隊長以外は発行できないのが推薦状。
それなのに特選部隊は隊長以外の一部隊員にも推薦状発行の権利があるらしい。
やはり、それだけ他の部隊とは"格"が違うということなのだろう。
「今回、2人を推薦したのは……赤銅、杜若」
「……はい」
「はいっす!」
漆隊長に呼ばれて立ち上がったのは赤髪の赤銅さんと青髪の杜若さん。
彼らが僕と白花さんを推薦してくれた人らしいが……。
僕は2人とも会ったことも話したこともない。何を見て推薦してくれたのだろうか。
「推薦した理由を説明してやれ」
「……白花さんを推薦した理由は"実力"です。希少属性を持っており現時点で1等級以上の実力者であるため、特選でもやっていけると考えました」
杜若さんは淡々と自分が白花さんを推薦した理由を説明する。
その説明を聞きながら漆隊長は手元に広げられた資料を見ていく、資料から目を離し赤銅さんへ目配せする。
杜若さんが白花さんを推薦した、ということは僕を推薦したのが赤銅さんなのだろう。
「自分が露草くんを推薦した理由は、その"属性"っすね。実力的には未だ足りてないとは感じるっすけど、調べたかぎり今引き抜かないと最後っぽかったんで推薦した感じっすね」
赤銅さんも同じように僕を推薦した理由を言ったが……確かに僕の実力では特選部隊入隊には全くもって足りていない。
それにしても赤銅さんは僕の属性を知っているかのように話しているが、どこで見たのだろうか?
漆隊長は白花さんのときと同じように手元の資料を見ながら何か考えている。
「確かに、白花は希少属性の”氷”を持ち現在14歳にして士官学校卒業済み。正規軍に所属し経験の無さから等級は据え置きの”3”。年齢制限により正規軍では戦場に出られず、しかし名家の産まれということもあて将来有望な若手筆頭……。露草の実力と属性は俺もこの眼で見た。士官学校に在籍した最長記録の保持者、”属性無し”の判定を受けても尚、鍛錬し現在謎の属性に目覚めた将来不明の剣士……」
そこまで漆隊長が述べ、僕も隣の白花さんも生唾を飲みながら言葉を待つ。
よく見れば淡々と説明していた杜若さんも、明るく話していた赤銅さんも緊張しているのが分かる。
「特選部隊の第一条件は”死なないこと”、そして次に”勝つこと”。俺は現状でお前たち2人が入隊したとしても”死ぬ”と確信している」
「そんなことは――」
「――黙れ。次は追い出すからな」
僕のように底辺で生きていたような卒業すら危うかった人間と異なり、おそらくエリート街道を進んできた白花さんが反論しようとした。
途端、目の前の烏羽隊長から尋常じゃない殺気が溢れ出す。
ただ視線を向けられてるだけ、しかもこれは僕じゃなく隣に立つ白花さんに向けられたものだというのに。
鳥肌が治まらない。怖い、今すぐにでもここから走って逃げたい。
どうして周りにいる部隊員の方々は平気な顔して立っているんだ。
強く出たはずの白花さんの表情は一瞬で青白く染まり立っているのがやっとなほど膝が震えている。
「今言ったように特選部隊は”生き抜くこと”が至上命題。死ぬことは許されない。だがお前たちは実力も経験も無さすぎる――さて」
どうするか。そう呟いた烏羽隊長に横から発言する勇気ある人がいた。
「――なら見習い期間ちゅうのはどうやろうか?」
それは副隊長神薙さんが挟んだ一言だった。
未だ治まらない恐怖渦巻く室内で唯一微笑みを絶やさない神薙さんは独特な言い回しで続ける。
「隊長はんも、そうやったやろう?隊長はんは良くて、この子たちだけが駄目っちゅうことはないやろう?」
その一言に少し驚いた。
圧倒的な実力で最強を率いている烏羽隊長が”見習い”だった。
その事実に驚きながらも、神薙さんの助言で考え込んだ烏羽隊長を待つ。
「――そうだな。なら露草怜音、白花氷詩の両名を暫定として特選部隊”見習い”隊員とする。露草を杜若が、白花を赤銅が面倒見ろ」
なんで、自分を推薦してくれた人と逆の人に。
提案された赤銅さんも杜若さんも明らかに嫌そうな顔を浮かべているじゃないか。
そんな二人の不満そうな表情も見えているはずの烏羽隊長だが、見えていないというように一言。
「期限は2か月、それで成長を見せられなければ入隊は認められない」
最後に爆弾のような発言を残して面接は終わった。




