第38話「第一回 魔物陸上開幕!」
ここはWorld Canvas Onlineに突如として現れた、広大な【魔物国立競技場】。
今この場では、まさに異例とも言える魔物の陸上大会が開催されており、観客席には数万を超える魔物たちが楽しそうに競技の様子を観戦している。
会場に響き渡るのは、競技の様子を軽快にお届けする実況と解説の声──。
◇◆◇
本番5秒前でーす!
4、3、2、1……
(キュー!)
シャベリン「さぁ始まりました第一回魔物陸上! 実況はわたくし、おしゃべりゴブリンことシャベリンと!」
ミチオ「解説の【ゴブリンロード】、ミチオです」
シャベリン「ミチオさん本日はよろしくお願いいたします!」
ミチオ「よろしくお願いします」
シャベリン「さてミチオさん。今回お送りする魔物陸上は、我々ゴブリンの友人であるマオ氏の『みんなで陸上大会をやれば、言葉が通じなくても仲良くなれるかも?』という、なんとも斬新なアイデアから急遽開催が決定した大会のようですね?」
ミチオ「はい。なんでもマオ氏の住む異世界で、実際にそういうことで皆が仲を深めた、という前例があったそうですよ」
シャベリン「なるほど! いやー、マオ氏のアイデアは本当に面白いですね! 流石は我らがゴブリンの友人です!」
ミチオ「そうですね」
シャベリン「そして第一回大会の会場は、リリスヴェル氏のお城の裏に建てられた【魔物国立競技場】にて行われます。いやー、とても広い会場ですねミチオさん!」
ミチオ「はい。リリスヴェル氏の配下のモンスターや、マオ氏の友人のゴーレム建設団たちによってあっという間に建てられました。マオ氏も『テレビで見たのと一緒だ』と、その出来栄えに感動していたそうですよ」
シャベリン「なるほど! ちなみにこのお城には日々沢山の冒険者が押し寄せているそうですが、問題はないのでしょうか?」
ミチオ「はい。リリスヴェル氏が『全員吹き飛ばしておくから気にせずやっててくれ』とのことで、安心して大会を楽しむことができるようです」
シャベリン「それはありがたいですね! リリスヴェル氏は基本的には警備を担当してくださるということですが、最後のリレーにはアンカーとして出場もしてくれるそうですね!」
ミチオ「そのようですね。現役の魔王さまの走りですから、そちらにも期待です」
シャベリン「はい。いやーしかしミチオさん。会場中ものすごい熱気ですね!」
ミチオ「そうですね。数万、いや十数万とも言われる魔物たちが競技場を埋め尽くしています」
シャベリン「これだけ多くの魔物がいると、残念ながら競技に出られない魔物も多いですね?」
ミチオ「はい。ただマオ氏によると『陸上大会はお客さんも一緒になって盛り上がっていた』ということですので、応援もまた立派な参加の形ということになるでしょう」
シャベリン「なるほど! 会場の皆もこのお祭りを全力で楽しんでいますね! まさに全員参加型の素晴らしい大会です!」
ミチオ「そのとおりですね」
◇
シャベリン「それではさっそくですが本日最初の中継、100メートル決勝からお送りいたしましょう! すでに会場の盛り上がりも最高潮に達しています!」
ミチオ「予選を勝ち抜いたスピード自慢のモンスターが揃っていますよ」
シャベリン「紹介いたしましょう! 本日のファイナリストはー!」
「第一レーン ゴブリン界期待のホープ! ゴブリンジェネラルのゴブオ選手!」
「第二レーン 鋼の身体を持つ暴走機関車! アイアンボア選手!」
「第三レーン 風を切り裂く俊足の刺客! ウィンドホーク選手!」
「第四レーン カマイタチの申し子! イタゾウ選手!」
「第五レーン 大地を駆ける疾風の蹄! ケンタウロス選手!」
「第六レーン 意外な足の速さ! マンドラゴラ選手!」
「第七レーン 闇夜を滑走する影! ナイトスプリンター選手!」
「最終第八レーン 尻尾がキュートな九尾の狐! コン選手ーっ!」
ミチオ「いやーものすごい声援ですね。これで魔物界の初代スピードスターが決まりますよ」
◇
シャベリン「さぁ各選手、準備が整ったようです。それぞれ位置について……そして今! スタートが切られましたーっ!」
ミチオ「おおっ! ゴブオ選手良いスタートです。やはり身体が軽い分、飛び出しが素早い」
シャベリン「各選手グングンとスピードに乗ります! 先頭はゴブオ選手ですが段々と横並びだ! おっとここでイタゾウ選手が一気に抜け出したっ! 風を切り裂くような鋭い加速です!」
ミチオ「素晴らしいスピードです。まさにカマイタチの面目躍如といったところでしょう」
シャベリン「そしてそのまま……いやっ!? 第八レーン、コン選手ものすごい追い上げだっ! 猛烈なラストスパート! 一気にイタゾウ選手をかわして……ゴーーールッ!! 100メートル決勝! 優勝は九尾の狐、コン選手だーっ!」
ミチオ「タイムは手元の計測で4秒88。驚異的な記録です! 会場全体も地鳴りのように揺れていて大盛り上がりですね。イタゾウ選手も2位ではありましたが、素晴らしい走りでした」
シャベリン「コン選手まさかの4秒台突入! これはとんでもない記録が生まれました! まさに第一回大会にふさわしい伝説の誕生です! いやーミチオさん。まだ心臓がバクバク言っていますよ!」
ミチオ「そうですね。第一回大会ですから、これから沢山の魔物新記録が生まれていくことでしょう。それがこの大会の醍醐味の一つですね」
◇
シャベリン「100メートル走の興奮冷めやらぬ中ではございますが、引き続き力と技の祭典、砲丸投げを中継いたしましょう!」
ミチオ「こちらはすでにほとんどの選手が投げ終わっているようですね。競技は最終局面を迎えています」
シャベリン「はい。現在の順位は1位がアダマンタイトゴーレムのゴーレム親分で47メートル57センチという大記録! 2位にカッパ横綱のカッパの海選手が43メートル87センチで続いております!」
ミチオ「どちらも素晴らしい記録ですね。並の魔物では太刀打ちできない、まさに怪力の持ち主たちです」
シャベリン「そうですね! そして今、最終投者が登場いたしました! 我らがゴブリン界の父ちゃん、キングゴブリンのゴブヘイ選手です!」
ミチオ「これでこの第一回大会における魔物の怪力王が決まります」
シャベリン「おっとゴブヘイ選手! 観客席に向かって両手を広げ、観客を煽っています! もっと声援をくれとのジェスチャー! 会場はそれに応えるかのような大声援に包まれます! まさにキングゴブリン。観客を掌握しています!」
ミチオ「さすがはそのカリスマで群れを統べるキングゴブリンですね。村一番のひょうきん者でもあります」
シャベリン「しかし集中は出来ているようです。その眼差しはまさに真剣そのもの。良い表情のゴブヘイ選手! 今砲丸を構え、位置について……。ググッと巨体が回り始めました!」
「うぅぅんどっせぇぇぇえええい!!!!」
シャベリン「叫び声とともに砲丸が放たれたっ! おっとこれは大きいぞ? 空を切り裂き、グングン伸びて……きたっ! なんと50メートルラインを超えてきたーっ!!」
ミチオ「美しく力強いフォームから放たれる素晴らしい投擲でしたね。一点の淀みもない完璧な一投です」
シャベリン「速報によると50メートル32センチ! これは素晴らしい魔物新記録が誕生いたしました! ゴーレム親分の記録を塗り替えて栄えある第一回砲丸投げのチャンピオンは、ゴブヘイ選手に決まりました!」
ミチオ「会場も沸きに沸いています。ゴーレム親分やカッパの海も、ゴブヘイ選手に近づいて互いに健闘を称え合っていますね。素晴らしいスポーツマンシップです」
シャベリン「競技後に互いを称え合う。まさしくマオ氏が狙ったとおりの温かい光景ですね! 魔物たちの絆が今まさに深まっているようです!」
ミチオ「そうですね。この大会の目的が達成されつつあると言えるでしょう」
シャベリン「さあ、ミチオさん! 魔物陸上もいよいよ終盤に差し掛かりました! 次の競技はなんでしょうか!?」
ミチオ「はい。続いての競技はスピードスター対決第二開戦。先ほど100メートルで見事な走りを見せたコン選手とイタゾウ選手が再び激突します。200メートル走決勝です!」
(まさかの二日目へ続く)




