第25話「アーサー視点・オーブ争奪戦②」
「ちょっ、アーサーさんッ!?」
俺はクライヴの声を無視して、青龍が守っていた祭壇へと全力ダッシュする。
(どいつもこいつも忘れてやがる。青龍は倒さなくても良い。このイベントにおいてオーブは確認。つまり見るだけでクリアなんだよっ!)
俺は祭壇へ猛ダッシュしながら流れるようにシステムメニューを開き、「共同戦線契約の破棄」を実行する。
《システムアナウンス:クラン栄光騎士団が、クラン月詠神楽との共同戦線契約を破棄しました》
(オケぃ! これがNo.1プレイヤーの神プレイだぜっ!)
祭壇に辿り着いた俺は、そこに置かれていた小さな宝箱を夢中でこじ開ける。
そこには瑠璃色に神々しく輝く、一つのオーブが祀られていた。
「あったぁ! 見たっ!! 見たどぉぉぉおおおお!!!!」
俺はオーブを天に掲げ、勝利の雄叫びを上げながら振り返った。
──しかし。
振り返った先には、もう俺以外は誰もいなかった。
仲間たちが光の粒子となって消えていく、その向こうで。
巨大な青龍が冷たい瞳で、こちらを見つめている。
「はっ、ざまぁみろ。ヘビもどきがっ! 俺の勝ちだ!」
雷光が唸りを上げて、俺に向かってくる。俺の視界が雷の青白い光に包まれる。
──次の瞬間、俺の視界は暗くなった。
◇
王都アルス、リスポーン地点。
俺が目を覚ますとすぐに、マサムネが胸ぐらを掴みかかってきた。
「アーサー! 貴様、我々を裏切ったな! お前それでも勇者かっ!?」
「おっ、マサムネちゃんじゃないか。そんなに興奮してどうしたんだい?」
「どうしたもこうしたもあるかっ! 貴様、共同戦線契約を破棄したなっ!?」
「破棄……? あっホントだ、破棄されてるじゃないか! ナンテコッター!」
「ふざけるなっ! このタイミングで破棄できるのは貴様しかいないだろうがッ!!」
「はぁ? 俺じゃねーし。あんまし人を疑っちゃイケないんだゾ? ……ま、今回は運が悪かったってことで」
「貴様ッ……! こんの外道がぁ!!!」
──その時だった。
世界に、祝福の鐘の音が鳴り響いた。
ゴーン……ゴーン……
《ワールド・アナウンス:
World Canvas Onlineをプレイされている全ての冒険者にお知らせ致します》
《世界の理を司る六つの【創世のオーブ】が、その四つ目を世界の前に姿を現しました》
《オーブの名は【運命のオーブ】》
《発見者の偉業を讃え、ここに唯一無二の称号を授けます》
《クラン名「栄光騎士団」が、称号【運命の発見者】を獲得しました》
「「「うぉぉぉぉおおおお!!!!!」」」
栄光騎士団の団員たちの歓喜の雄叫びが響く。
(キッタァー! これだよこれェ! やっぱり最後に勝つのはこの俺、真の勇者アーサー様なんだ!)
マサムネと月詠神楽の連中が舌打ちをしながら、捨て台詞を吐いて去っていく。
(あれは……負け犬の嫉妬ってやつかな? あーヤダヤダ)
さあ、あんな奴らのことは忘れよう!
世界が俺への賞賛に包まれる、栄光の時間の始まりだ。この俺を崇め奉れ!!
この瞬間に、俺は全てを賭けてきたんだぁっ!!
──と、その時。またしても世界に鐘の音が鳴り響いた。
ゴーン……ゴーン……
(……ん? なんだ?)
《ワールド・アナウンス:
World Canvas Onlineをプレイされている全ての冒険者にお知らせ致します》
《世界の理を司る六つの【創世のオーブ】が、その五つ目を世界の前に姿を現しました》
《オーブの名は【空間のオーブ】》
《発見者の偉業を讃え、ここに唯一無二の称号を授けます》
《プレイヤー名「マオ」が、称号【空間の発見者】を獲得しました》
……は?
……なに? 今の。
「なぁエルド……今、マオって言ったか?」
「は、はい、確かに……」
…………は??
この俺の、栄光の瞬間に、割り込んでくるように?
………………ッはァ!?!?
「ちょっ……おいエルドォ! 今すぐ全体チャットを確認しろっ! 今、どうなってるんだぁ!?」
「え、えーと……『謎のソロプレイヤー“マオ”、二つ目のオーブを発見!?』という話題で、大盛りあがりです……」
「はぁ!? なんだよそれっ!? 栄光騎士団の! この俺の話題は! どうなってるんだッ!」
「えーと……ない、ですね……。あ、一つだけあります!」
「おお! なんて書いてある!?」
「んー……『アーサーたちも乙』と……」
「お、おつ……? ……それ、だけ?」
「……はい。それだけ、ですね……」
………………………………。
「…………はぁあああああああ!!!??」
「ッッッぉぉおおい! ふっざけんじゃねえ!! だから、マオって誰なんだよぉぉぉ゙ぉ゙おおお!!!!!!」
気が狂いそうなほどにブチギレた俺は、近くにあった屋台のオブジェクトを聖剣で何度も何度も叩きつけた。
周りに野次馬が集まってくる。
「ンがぁぁああ!! 見てんじゃねえよゴミどもぉっ! マオ……! マオォォオオ!!」
「絶対に、絶対に許さねえからなぁぁぁああああああ!!!!!!!!!」




