表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物の世界の通訳さん 〜特殊スキル『魔物通訳』でモンスターの悩み相談承ります〜  作者: 役所星彗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/45

第24話「アーサー視点・オーブ争奪戦①」

 俺は浅峰あさみね

 またの名をWorldワールド・ Canvasキャンバス・ Onlineオンライン()()勇者、アーサーという。


 俺のレベルは世界最高の75。

 サーバーで最もレベルの高い者にのみ与えられる称号【世界に自由を描く者ザ・フリー・キャンバス】を保持する俺は、自他共に認めるこの世界のトッププレイヤーだ。


 しかし最近、面白くないことが続いている。


 創世一周年記念祭ジェネシス・フェスティバルで【創世そうせいのオーブ】の争奪戦そうだつせんが始まって以来、俺たち栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリーは他のプレイヤーたちに後れを取っているのだ。


 アメリカや中国のトップクラン。

 そして、どこの馬の骨とも知れない……マオとかいう謎のプレイヤー。


 どいつもこいつも、ただのマグレ当たりのくせに、調子に乗ってイキがってやがる。


 ……残るオーブは、三つ。


 なんとしても我ら栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリーが手に入れ、この世界のトップが誰なのかを思い知らせてやる。


「──アーサーさん。例のうわさ、やはり間違いなさそうです」


 ギルドホールでの作戦会議中、副団長のエルドが、けわしい顔で報告してきた。


「……青龍せいりゅうの出現条件か?」

「はい。イベントアイテム【青の追憶ついおく欠片かけら】を777個集め、指定エリアの祭壇さいだんささげることで青龍せいりゅうが出現する。そしてその青龍せいりゅうが【創世そうせいのオーブ】を保持している可能性が極めて高い、と」


「そうか……!」


(やはり、俺の読み通りだぜ)


 エルドが続けて報告する。


「……アメリカのトップクラン《Zodiac Heros》ですが、彼らはすでに700個以上の【青の追憶ついおく欠片かけら】を確保しているようです」

「なにっ!?  俺たちは今いくつなんだ?」

「……432個です。このままでは、また彼らに出し抜かれます……!」


 エルドの悔しそうな声に、俺はギリッ、と奥歯を噛み締めた。


(……また、海外勢から後れを取るだと?) 


 冗談じゃない。そんなことは、俺のプライドが許さない。


「……よし。俺に良い考えがある」


 俺がそう言うと、エルドが怪訝けげんそうな顔でこちらを見た。


「アーサーさん……? 何か妙案みょうあんでも?」

「ああ。すこぶる()()()()な案がな」


 俺はエルドの問いにはそれ以上答えず、席を立った。




 俺が単身向かった先は、静寂せいじゃくに包まれた竹林ちくりんの奥。


 そこには、月光を反射してにぶく輝く瓦屋根かわらやねを持つ、巨大な和風の道場──日本のナンバー2クラン【月詠神楽つくよみかぐら】の本拠地ほんきょちが、静かにたたずんでいた。


 俺がその門をくぐると、中にいた団員たちが一斉に殺気さっき立った。


「貴様は、栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリーのアーサー!」

「ここはテメェの来る場所じゃねえぞ、とっとと出ていけ!」


 道場のいたる所から、モブどもがキャンキャンと吠えてくる。


 だが俺はそんな雑魚ザコどもの威嚇いかくなど華麗かれいにスルーして、道場の奥へ向かう。


 俺の用事は、ただ一人。


 道場の最も奥。掛け軸の前に正座し、静かに刀の手入れをしていた男。


 このゲームのランキング2位にして、月詠神楽つくよみかぐらのリーダー、【侍・マサムネ】だ。


「……()()()()勇者様が、こんな所に何の用だ?」


 俺の存在に気づいたマサムネが、顔も上げずに冷たい声で言った。


「そうピリピリするなよ、マサムネ。今日はお前にとって“良い話”を持ってきたんだ」


 俺の言葉に、マサムネがようやく顔を上げた。

 その鋭い目が、怪訝けげんそうに俺を射抜いぬく。


「……良い話、だと?」


 俺は、アメリカのクランが『青の追憶ついおく欠片かけら』を700個以上集めているという事実を、マサムネに伝えた。


「──そんなことは、我々も把握はあくしている」

「だろうな。……だから提案がある。ここは一丁、共同戦線といこうじゃねえか」

「……共同戦線だと?」


 マサムネの視線が、さらに強まる。


「ああ。俺たちは今、欠片かけらを432個持っている。お前たち月詠神楽つくよみかぐらはいくつだ?」

「……350ほどだ」

「ほらな。俺たちが力を合わせれば777個を超える。アメリカより先に、俺たち日本のクランが青龍せいりゅうに挑戦できるんだ」


 マサムネは黙って俺の言葉を聞いている。

 そして、ゆっくりと口を開いた。


「……お前たちのことは、信用できん」

「ハッ、そりゃお互いさまだ。だけどそんなこと言ってる場合じゃないだろ? このままだと、海外勢に全て持っていかれるぞ。日本のトップとしての誇りがあるなら、ここは協力すべきじゃないのか?」


 俺の言葉にマサムネは沈黙する。


(よし、これはもう一押しだな)


「……俺は、日本のために戦いたいんだよ。下心なんてない……この聖剣にちかうよ」


 俺は聖剣を掲げて、マサムネを説得する。


(……これでどうだ?)


 そして、長い沈黙の後。マサムネはついに折れた。


「……分かった。……今回だけだぞ」


(よし、かかった! くくっ……相変わらずバカ正直なやつだぜ……)




「──ぜんは急げ、だ」


 俺の栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリーと、マサムネ率いる月詠神楽つくよみかぐら


 日本の二大クランによる共同戦線契約の締結と、【創世そうせいのオーブ】獲得かくとくへの挑戦は、その日のうちに実行された。


 トッププレイヤーとは、すなわち廃人だ。いついかなる時でもメンバーは揃っている。


 俺たちの目的地は、世界の東にそびえ立つ、S級危険地帯『雷鳴山らいめいざん』。


 その名の通りに山全体が永劫えいごう雷雲らいうんおおわれ、え間なく稲妻いなづまが降り注ぐ、生ける者全てを拒絶きょぜつする魔境まきょうだ。


 その天を突く頂に存在する、嵐の中心『雷雲らいうんいただき』に、俺たちはなんとか辿たどり着いた。


 レベル70オーバーの精鋭せいえいを多く集めた、日本の二大クランの夢の共同戦線。


 総勢70名近い大部隊だったはずが、道中のあまりの過酷かこくさに、その数を半分以下にまで減らしていた。


 残ったのは、わずか30名程度。


 やっとの思いで辿たどり着いた『雷雲らいうんいただき』は、嘘のように静かだった。


 巨大な嵐の目の中。

 黒く変質した岩肌が剥き出しになった、広大な円形のフィールド。


 ──その奥に、古代の祭壇さいだんだけがポツンとたたずんでいる。


 俺とマサムネは無言で視線を交わし、祭壇さいだんの前へと進み出た。


 そして、777個の【青の追憶ついおく欠片かけら】を祭壇さいだんへとささげる。


 ──瞬間。世界が咆哮ほうこうを上げた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 凄まじい雷鳴がとどろき、大気が……いや、この雷鳴山らいめいざんそのものが激しく震える。


 祭壇さいだんから吹き荒れた暴風に、俺たちはまとめてエリアの入り口近くまで吹き飛ばされた。


「ぐっ……! 全員、体勢を立て直せ!」


 俺はすぐに指示を出し、顔を上げる。


 ──すると、エリアの中央。


 それまで静かだった空間に、空中の全ての雷雲らいうんが一点に向かって、渦を巻きながら集まってきていた。


 やがてそれは、一つのひときわ巨大な雷の塊となる。


 そしてその中からゆっくりと──神々しいあおき龍が現れた。


 天まで届くかのような、どこまでも長く、しなやかな胴体。


 湖の底よりも深い、瑠璃るり色のうろこ


 鹿のごとき角と、雷光そのものを編み上げたかのような白銀のたてがみ


 翼もないのに、その巨体は悠々と宙に浮いている。


 ──SSS級モンスター【青龍せいりゅう】だ。


 その神々しい姿に見惚みとれていた、まさにその時。


 先ほど追憶ついおく欠片かけらささげたエリア奥の祭壇さいだんに、天から一条の光が降り注いでいくのが見えた。


 青龍せいりゅうはその祭壇さいだんを守るように、俺たちとの間、エリアの中央に陣取じんどっている。


(……間違いない。あの祭壇さいだんに【創世そうせいのオーブ】がある!)




 すぐさま、戦闘が始まった。


 天をくほどの巨体。世界そのものを揺るがすほどの咆哮ほうこう


 ──青龍せいりゅうの力は、圧倒的だった。


 俺たちは、青龍せいりゅう天候てんこうを操る暴力的な力の前に防戦一方で、少しずつ削られていく。


(やっぱり、正面からは勝てねえな……)


 俺はマサムネに声をかけた。


「マサムネ、このままじゃジリ貧だ! 俺たちが青龍せいりゅう背後はいごに回り込むまでの少しの間でいい、持ちこたえてくれ! はさちにする!」


 マサムネは俺の言葉に強くうなづいた。


「よし、お前ら行くぞ! 裏手うらてに回る! クライヴ、盾になれっ!」

「はいっ!」


 聖騎士クライヴの鉄壁てっぺきの盾に隠れながら、俺たちはなんとか青龍せいりゅう背後はいごを取ることに成功した。


「よし、アーサーさん! ここからはさちですね!」


 クライヴのその期待に満ちた声を俺は──ガン無視した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ