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魔物の世界の通訳さん 〜特殊スキル『魔物通訳』でモンスターの悩み相談承ります〜  作者: 役所星彗


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第13話「ゴーレムvsカッパ」

「はっけよい、のこったァ!!」


 行司役のカッパが叫んだその瞬間。


 緑色の巨体――横綱 《カッパの海》が砲弾のようなスピードで飛び出した!


 その凄まじい勢いのままゴーレム親分に激突し、土俵の外まで吹き飛ば―――ない。


 ゴッ! と、空気が破裂するような鈍い音が響き渡る。


 ゴーレム親分はその場から一歩も動かず、カッパの海のぶちかましを正面から受け止めた。


「いいぞぉ、親分!」

「カッパの海、負けるなー!」


 会場のボルテージは早くも最高潮だ。


 二人はがっぷり四つに組んだまま、ギリギリと力を込めている。


 まるで山と山とのぶつかり合いだ。


 その時、カッパの海が顔を真っ赤にして叫んだ。


「ぐぬぬ……! カッパのパワーをなめるなァ!!」


 次の瞬間、信じられない光景が目の前で繰り広げられた。


 ゴーレム親分の巨体がミリミリと音を立てながら、わずかに宙に浮いたのだ。


「うりゃぁああ!!」


 カッパの海は咆哮と共に、ゴーレム親分の体を投げ飛ばす!


 ――しかし、ゴーレム親分は土俵際ギリギリでズシンッ! と着地。


 そして次は親分が叫んだ。


「――むんっ!!」


 その一言と共に、ゴーレム親分はその太い両腕でカッパの海持ち上げた。


「「「おおおおおおお!?」」」


 カッパもゴーレムも、そして僕たちも息を呑む。


 親分は持ち上げたカッパの海を、そのまま豪快にぶん投げた。


 横綱の巨体は綺麗な放物線を描いて数メートルも吹き飛び、ザッッッッッバーーーーン!! と、盛大な水飛沫を上げて池の中へと落ちていった。


 一瞬の静寂の後、会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。


 カッパたちが大興奮の様子で、蓮の葉っぱを次々と土俵に向かって投げ込んでいる。


 宙を飛び交う、沢山の蓮の葉っぱ。


(これは、カッパの世界の座布団、ってことなのか……?)




 池に落ちたカッパの海が悔しそうに、しかしどこか晴れやかな顔で水面から顔を出す。


 それを見届けた行司役のカッパが大きく息を吸い込み、高らかに宣言した。


「勝負ありっ! 勝者、ひが〜しぃ〜、ゴーレム親分〜〜!!」

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」


 ゴーレムたちの勝利を讃える咆哮と、カッパたちの健闘を称える歓声が浮島中に響き渡る。


「すごかったねマオ! 今の、すっごくすごかった!」


 隣で見ていたコンも、九つの尻尾をブンブンと振り回して大興奮の様子だ。


 僕がその光景に微笑んでいると、カッパの長老さまが満足そうな顔でこちらへやってきた。


「いやはや見事な一番じゃった。あのカッパの海が力負けするとはのう。実に良いものを見せてもらったわい」


 長老さまは悔しがる素振りも見せず、勝者であるゴーレム親分に深々と頭を下げた。


「約束通り、この川は元通りに戻させてもらう。我らの負けじゃ」


 良かった。これでゴーレムさんたちの住処も、元に戻るんだ。


 無事にトラブルが解決したことに、僕は心からホッと胸を撫で下ろした。


 その、瞬間だった。


 僕の頭の中に、アナウンスが高らかに鳴り響いた。


《特殊クエスト【ゴーレム建設団の住処を取り戻せ!】を達成しました》

《クエスト達成ボーナスとして、【高難度交流経験値】を140,000ポイント獲得しました》

《成長テーブル【神獣ステージⅠ】適用。経験値が規定値に達しました。キャラクターレベルが 29 から 48 に上がりました》

《ジョブ【通訳】のレベルが 14 から 24 に上がりました》

《ジョブスキル【万物への慈愛】を習得しました》

└ 効果:動物やモンスターから、初期状態で敵対されにくくなります。

《ジョブスキル【黄金筆跡】を習得しました》

└ 効果:MPを消費して書いた文字が、種族や言語の壁を越えて、読んだ者に意図を伝えることができます。

《ステータスポイントを 95 獲得しました。自動割振を行います》

《称号【ゴーレムの盟友】を獲得しました》

《称号効果:ゴーレム種からの初期友好度が高くなります》




 その後の展開は驚くほど早かった。


 約束を守り、カッパたちは実に見事な土木技術であっという間に川の流れを元に戻してくれた。


 そして「また相撲しようぜ!」と手を振りながら、新たな場所を求めて下流の方へと去っていった。


 ゴーレム建設団の住処に戻ると、土地を覆っていた水がゆっくりと引いていた。


『マオよ、礼を言う。お前たちのおかげで我らの住処を取り戻すことができた』


 ゴーレムの親分がその岩の顔を僕に向けて、深く頷いた。


「いえ、僕はただ通訳をしただけです。それより親分の相撲、すごく格好よかったですよ」

『ふむ。……何か礼をさせてくれ。マオ、お前は自分の家を持っているのか?』

「この世界に来たばかりなので、家はないです。今はゴブリンの集落にお世話になってます」

『そうか。もし良ければ、ここにお前たちの家を建ててやろう。我らからの礼だ。どうだ?』


 意外な提案に、僕は思わず隣にいるコンの顔を見た。


 コンは僕の考えを察したように、ブンブンと九つの尻尾を振った。


「良いんじゃない? 私もマオと一緒に住むお家が欲しいっ!」


 コンの嬉しそうな顔を見たら、もう断る理由なんてなかった。


 僕はゴーレムの親分に向き直って、深く頭を下げる。


「それではお言葉に甘えさせていただきます。よろしくお願いします」

『うむ。では、どれくらいの大きさが良い?』


 大きさか。僕一人なら、小さな小屋で十分なんだけど……。


「コンって、これからどれくらい大きくなるのかな?」

「さぁ……? わかんない。でも、もっと大きくなる気がする!」


 うん。九尾だし、結構大きくなりそうだよな。

 この前会った時よりも心なしか大きくなってるし。


「そしたら、()()()()()()()でお願いします」

()()()()()()()だな。承知した。我らゴーレム建設団に任せておけ。明日には完成するから、楽しみにしておくと良い』

「はい、よろしくお願いします」


 なんだか家が手に入っちゃった。

 しかも明日にはできるって……。ワーキャンって本当にすごいな。


 こうして僕たちは家ができるのを楽しみにしながら、その日はゴブリンの集落に泊めてもらった。 




 次の日。


 再びログインした僕は、コンとゴブオと一緒にゴーレム建設団の作業場へと向かった。


「マオ、新しい家楽しみだねっ」

「そうだね」


 そんな会話をしながら森を抜ける。


「「えっ!?」」


 森を抜けた先で僕たちを待っていたのは、目を疑うような光景だった――。

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