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独占欲のかたまり

次の日の朝、柔らかな陽光が寝室に差し込み

静かな空間を穏やかに満たしていた。

窓からこぼれる光は、薄いカーテンを通して淡い金色に滲み

部屋全体に暖かな輝きを投げかけていた。


ベッドの上では、フローラがまだ深い眠りの中にいた。

彼女の金色の髪が枕に広がり朝の光を受けて静かにきらめいている。

穏やかな寝息とともに、わずかに動く胸元が、彼女が夢の国に漂っていることを示していた。


そんなフローラを、ロイドは部屋の片隅から熱を帯びた視線で見つめていた。

彼の目は鋭く彼女を手に入れた悦びが熱い波となって広がっていた。


彼女が今、ここで、こうして彼の目の前で眠っている。

その事実だけで、彼の心は勝利の甘美な疼きに震えた。

(これでこの女は俺のものだ。)


彼の心は深い満足感とともに燃え上がっていた。

しかし、その悦びの中にはロイドの心にはもう一つの暗い企みが芽生えていた。


レオン――フローラの心に微かに残るその男の影を、彼は決して許すつもりはなかった。

彼はフローラを完全に自分のものにするため、レオンを追放する計画を静かに、だが冷酷に画策し始めていた。レオンの存在をこの地から抹消し、フローラの心からその名を永遠に消し去る。

まずは仲間たちを説得しないとな。あんな料理人一人いなくても問題ないってな



陽が傾き始めた頃ト西門の石橋を、小柄な荷馬車がゆっくりと渡ってきた。

 手綱を握るのはレオン。

 荷台には木箱がいくつも積まれていた。

 ロイドから命令を受けその一つひとつを自分の眼と舌で確かめ

 厳選していき素材たちだ。


 門番が通行証を改めるあいだ、レオンは肩で細く息をついた。

 疲労よりも先に胸を満たしているのは、早くあの家の灯りを見たいという期待だった。


(フローラ、ちゃんと食べているだろうか)


 数日ぶりにフローラに会えることにレオンの心は高揚していた。


 レオンが家の玄関を開けると、家の中にフローラはいなかった。

 炉は冷え切り、テーブルには白いクロスが敷かれたまま―

 その中心に、ひと皿分のスペースがぽつんと空いていた。


 代わりに置かれていたのは、小さなメモ用紙だけ。


「急なパーティーの集合で帰りは明日になります。」

― フローラ


 レオンは袋いっぱいの食材を流し脇に下ろし、静かに息をついた。

 買い付けの間じゅう考えていた「どんな料理を作ろうか」という胸の高鳴りが、深い水底へ沈んでいく音がする。


 鍋を火に掛ける気力も湧かず、椅子を引いて腰を下ろす。

 テーブルの空席は一つだけだというのに、部屋全体ががらんと広すぎる。

 ランプの光が皿のないクロスを照らして揺れ、影が静かに伸びていった。


― その頃

夕暮れの光が部屋の窓から差し込み、薄暗い室内に赤みを帯びた影を投げかけていた。

フローラはロイドの腕の中で、乱れた息を整えていた。


初めて関係を持った日からロイドはフローラを毎日呼び出していた。

フローラの心は混乱に苛まれていたが、彼の言う事には逆らえず

情熱のままに互いの身体を重ね合わせていた。


「なぁフローラ。もう俺の女になると言えよ」

「……レオンのこと、まだ整理できなくて」


ロイドは内心で舌打ちした。まだレオンのことを想っているのかと。

「捨てちまえよ、“火傷顔の優男”なんて。もうお前とは釣り合わないよ」


ロイドはフローラの手を取り、指先を絡める。

彼女は少し驚きつつも離さない。


「(もう心は堕ちかけてるんだ。後はもう一押しするだけ。やっぱレオンには消えてもらうしかないな。他の奴らにも協力させるか。どうせなら派手にやるとする)」


ロイドは邪な顔をしてレオン追放の計画を実行に移しはじめた









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