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幼馴染に捨てられた俺は、素材と恨みを喰って最強に至る  作者: 雷覇
第2章

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第48話:どうやって近づくか

ノエルが、深く息を吐いたあと

まっすぐにレオンを見つめて言う。


「……ひとつ、現実的な話をしてもいい?」


レオンは静かに頷いた。


「王都に行くなら、あなたの狙いはティアナとレイナ、そして……フローラよね」


「そうだ。3人とも、ロイドの影響を受けてる可能性が高い」


「でも、ティアナとフローラは王城内。王族級の警護がついてる。

 簡単に近づける立場じゃないわ。レイナも騎士団の直属部隊にいる。

 どうやって食べさせるつもり?」


レオンは一瞬だけ沈黙し、やがて、静かに答えた。


「手段は、まだ模索中だよ。ただ、ひとつだけ確かなのは……料理には感情を伝える力がある。届くと信じてる」


ノエルは眉をひそめた。


「信じるだけでどうにかなる相手じゃないわ。フローラも、ティアナも、レイナも、今はもう昔の仲間じゃない」


レオンは頷いた。その現実は、彼が一番理解していた。


「だからこそ、偶然を装って食べさせる」


「でも、王城に料理人として入るなんて簡単じゃないわ」


「方法はある。一つだけ」


「……どういうこと?」


レオンの瞳に、鋭い光が灯った。


「王都には貴族や王族の晩餐会、祭礼の儀式などに料理人を推薦・出場させる料理人の祭みたいなものがなかったか?」


ノエルは小さく目を見張る。


「……ある。年に一度の料理の宴。王直属の料理人枠が選ばれる」


レオンは短く頷いた。


「そこに潜り込む。その舞台で料理を出すことができれば、必ずティアナかフローラ、あるいはレイナの誰かに届くはずだ……最悪、ロイドでもいい」


ノエルはじっと彼を見つめたまま、小さく笑った。


「……無茶ね。でも、嫌いじゃない。そういう無茶」


レオンもわずかに微笑を返した。


「だったら、こっちも準備する。推薦状と、王都入りの名義。それと……」


ノエルはぐっと近づき、声を低くする。


「次にロイドが何をしようとしてるか、私なりに調べるわ。黙ってやられるのは性に合わないし」


レオンの表情が、わずかに引き締まった。


「……助かる。けど、気をつけろ。あいつはもう王になってる。動かす駒も、守らせる壁も段違いだ」


「分かってる。慎重にやるわ」


ノエルは一拍、言葉を選ぶように沈黙した後、静かに口を開いた。


「でも、私自身が王都に入るのは危険かもしれない。ロイドと再び接触すれば、能力が戻ったことに気づかれるかもしれない」


レオンはその意図を察して視線を向けた。


「……再びスキルに囚われる可能性もある、ってことか」


「ええ。正直、今の私がどれほど抗えるかはわからない。ロイドのスキルは……言葉や魅力だけじゃない。心の奥に、無理やり入り込んでくる」


ノエルの拳が、膝の上でゆっくりと握られる。


「彼のスキルが洗脳に近い性質なら、再接触はそれだけで再発動のリスクがある。今の私は回復したばかりで、耐性があるかすら不明」


レオンは頷いた。予測していたとはいえ、現実に口に出されると重い。


「なら……君はこの地に残ってほしい。情報の管理、王都との連絡、そして……俺の退路の確保を任せたい」


「いいの? 私は……」


「今のノエルだから、頼める。少なくとも、背中は預けられる相手だ」


ノエルは目を伏せ、わずかに頬を紅く染めた。


「……そう言われると、断れないじゃない」


しばらくの沈黙のあと、彼女は少し口元を引き締めて続けた。


「わかった。私はここで動かず、状況を監視する。あなたが王都で何か起こす前に、ロイドに動きがあればすぐ伝えるわ」


レオンはゆっくりと頷いた。


「ありがとう。これは、あの頃の追放とは違う。今の俺と、今の君との共闘だ」


「ええ。……今度は、信じて」


彼らの間に、静かだが確かな信頼が芽生えた。


宿の一室――

木製のテーブルの上には、手書きの地図と何枚ものメモ。

リュミエルは小さく欠伸をして、扉が開く音に顔を上げた。


「おかえり!遅かったじゃない、レオン」


「悪い。色々と確かめてきた」


「ノエルは?」

「……解除できた。今は、頼れる味方だよ」


リュミエルは満足げに頷いた。


「次は王都。……その前に、仲間たちをどう動かすか決めないとね。人手が足りない」


「みんなと合流するの?そうか。スキルはもう解除できるから裏切られることもないね」


「実はもう声はかけてある。明朝にはここに来るはずだ」


そして翌朝――

宿の外に、小さな隊列が現れた。


「よぉ、久しぶりだな、レオン」


声をかけてきたのは拠点に残してきたラースだった。

ラースが振り返って言った。


「紹介しよう。新しい仲間のユナだ」


現れたのは、長い銀髪を後ろで束ねた少女。

冷静そうな表情が印象的だった。


「ユナです。魔導具技師。……レオンさんのことは、少しだけ聞いてます」


「レオン。料理人だ」


「知ってます。あなたの料理、戦場で食べた人が疲労が吹き飛ぶって噂になってた。正直、眉唾だったけど……」


ユナはふっと笑った。


「いまのラースを見れば、信じるしかないですね。彼、あなたの話になると本当に目が変わりますから」


ラースは咳払いをしてごまかした。


「……それより本題だ。王都で店を構えるって話、本気か?」


「ああ。本気で料理でスキルを解除する。そして、ロイドを止めるつもりだ」


ラースは真剣な眼差しでレオンを見つめた。


「なら、俺たちが動く。人手も足りてないんだろう? 準備に必要なことは全部、手を貸す」


ユナも頷く。


「私は店舗の内装と、魔導熱管理。食材保管管理。厨房の準備は私に任せて」


「……助かる。今度こそ、俺の仲間として頼らせてもらうよ」


3人の目が合い、そこに静かな火が灯った。


新たな戦場は、王都。

武器は剣ではなく、かつてよりも強くなった信念。


レオンの新たな物語が、ここから加速していく――。

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