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幼馴染に捨てられた俺は、素材と恨みを喰って最強に至る  作者: 雷覇
第2章

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第34話:また一人に

レオンはフードを深くかぶり、雑踏に紛れて歩き続けた。


「……まずは、情報だ。それと仲間集めはいったん中止だ。ラースの所に急ぐか」


ロイドが洗脳系のスキルを持っていると仮定してその勢力がどこまで広がっているのか。誰がすでに取り込まれ、誰がまだ自由なのか。

そして――潜在的な“協力者”がいるのかどうか。


歩きながら、レオンは思考を巡らせていた。


(……危なかった。もし、あいつの“スキル”に感づく前に仲間を集めていたら……)


想像するだけで、背筋が冷たくなる。

あの男のスキルは、ただの戦闘技術ではない。


(協力者の中に一人でも“ロイドの傀儡”が紛れていたら……)


すべてが瓦解するところだった。

レオンの生存が露見すれば、築き上げた組織も、集めた情報も一瞬で水泡に帰す。


(……だが、待てよ。もしロイドのスキルが洗脳系だとして、パーティーメンバーとして傍にいて、言葉を交わし、同じ釜の飯を食っていたのに――なぜ、俺には効かなかった?)


偶然か? 運か?

だが、それでは納得がいかない。


――思い当たる節は、ある。


自分はロイドに対して、心から信頼していたわけではなかった。

女性には柔らかい笑みを向けながらも、自分には常に厳しく接していた――そんなロイドに、自然と距離を置いていたのかもしれない。


(……もしロイドのスキルが、感情を引き金に発動するのだとしたら――すべてに説明がつく)


心を開いた者ほど、染まる。

信じた者ほど、深く奪われる。


(……なら、俺がかからなかったのも、ある意味当然か)


ロイドは、レオンを洗脳する価値すらないと判断していたのかもしれない。

従順でもなく、目立った地位もない。

だから、最初から支配の対象から外されていた。

それが、唯一の救いであり、今の自分を生かしている理由だった。


(……奴に対抗するには、“スキルにかからない力”がいる。

 そして同時に、“すでにかかってしまった者”を見抜く術も――)



拠点にてレオンはラースを呼び出していた。

灯りも最低限。油の焦げた匂いと静けさの中、二人は向かい合う。


「……ロイドが、次の王になるかもしれない」


その言葉に、ラースの眉がわずかに動いた。

だが驚きは薄い。むしろ、どこか察していたような表情だった。


「……冗談に聞こえないのが、今の情勢ってことだな」


レオンは頷いた。


「だが、それだけじゃない。問題は――あいつの“スキル”だ。

 あれは人の心を……いや、“感情そのもの”を操ってる可能性がある。しかもおそらく自覚なしで従わせる」


「……洗脳、ってことか」


「限りなくそれに近い。ただし、本人に“従ってる”という実感がある分、より厄介だ。自分の意思で選んだと思い込んでる。だから、外からは誰も気づけない」


ラースは腕を組み、しばらく沈黙した。


「……つまり、今集めようとしてる仲間の中にも、その影響を受けた奴がいる可能性があるってことか」


「そうだ……ロイドは、俺と出会うずっと前から、騎士団や冒険者として各地を巡っていた。 あいつのスキルが、その頃から使われていたとしたら、すでに、あいつに“染められた者”が王都中にいてもおかしくない」


今、誰が敵で、誰が味方かなど、もはや見た目や過去の絆では判断できない。


「……だから、すまない、ラース。お前のことを完全には信じきれない」


レオンは目を伏せずにそう言った。

静かながら、その声音には決意がにじんでいる。


「ロイドは、自分が“興味を持った相手”にしかスキルを使わないように見える。

 だが……お前が過去にどこかであいつと接触していたなら、その可能性は――ゼロじゃないんだ」


沈黙が落ちる。

それは決して疑いからではなく、慎重さと覚悟の表れだった。


「……仕方ないことだな、それは。それでこれからどうする?」


「スキルにかかってしまった者を見抜く方法――必ず見つけてみせる。

僕の力なら、きっとできるはずだ。

それに……同時に“かからないための備え”も考えなければならない。

やつの術に二度と仲間を奪わせないためにも」


ラースはしばし無言で、拳をゆっくりと握った。

悔しさが滲む。その表情は、歯を食いしばるような苛立ちと、どこか痛々しい自嘲に満ちていた。


「……疑われるってのは、気分のいいもんじゃねぇな」


声は低く、だが怒気はない。

彼はそれを受け止めていた。


「だが、正しい判断だ。お前がそこまで考えてるなら、なおさら信じる価値があるってもんだろ」


レオンが口を開く前に、ラースは先に言葉を続けた。


「悔しいが……今の俺じゃ、動けねぇ。余計な感情を差し挟んで、お前の足を引っ張るわけにはいかねぇからな」


視線をまっすぐに返し、ラースは静かに頷いた。

レオンはその言葉に一瞬だけ目を伏せ微かに口元を緩めた。


「……すまない。感謝してる」


「感謝なんてすんな。今に見てろ、信頼しなかったことを後悔させてやるからよ」


ラースはいつもの軽口を返しながら、レオンの背を叩いた。


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