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幼馴染に捨てられた俺は、素材と恨みを喰って最強に至る  作者: 雷覇
第2章

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第31話:支配の囁き(ロイドサイド)

ロイドは剣を振るいながら、密かに己の身体の鈍りを感じていた。

かつては軽々と放てていた連撃も、今はどこかぎこちない。鋭さに欠ける。

呼吸が乱れ、腕が重い。彼は舌打ちした。


(……やはり、最近は鈍っているな)


だが、すぐに思考を切り替える。

冒険者としての力など、もう必要ない。

王になるという大望を抱いた今、戦場ではなく政場こそが彼の舞台だ。


(俺は、もう次元が違う場所にいる。剣の腕など、もはや不要だ)


彼はそう自分に言い聞かせた。

しかし、本当の原因には気づいていなかった――


レオンの料理を失って以降、彼の肉体は少しずつ衰えていた。

長年、当たり前のように口にしていたレオンの肉体強化の食事の

効果が落ちてきていたのだ。


だがロイドにとって、レオンは過去の“敗者”でしかない。

その存在の価値に、未だ気づくことはなかった。


彼はゆっくりと剣を鞘に収め、空を見上げ口元を緩める。


「ティアナを俺のスキルで堕とした時に、俺が王になることは決まっていた。すべてが、俺の思い通りだ」


ロイドが仲間にも隠しているスキル《支配の囁き》

――それは、決して強制的な洗脳ではない。

だが確かに、人の心に“隙”を生む力だった。


疑念を鈍らせ、判断を緩ませる。

「この人の言うことなら……」

「なぜか、逆らいたくない……」


それは、ほんの微かな感情のゆらぎ。

されど、ロイドにとってはそれで十分だった。


なぜなら――


「媚薬とスキルを合わせれば、どんな女でも堕ちる」


彼の言葉に、嫌悪や良心のかけらはなかった。

媚薬で感覚を曇らせ、判断力を奪う。

その二重の罠に堕ちた相手は、自分の意思で選んだつもりでロイドを受け入れる。


「全部、自分で望んだと思ってくれるのがいいんだよな」


まるで人形に糸を仕込むように、

まるで舞台を整えて観客を演じさせるように、

ロイドは、相手の感情を「自然に見える形」で導いていく。


抵抗はない。

むしろ、快楽と共に訪れる“従順”は、支配の悦びそのものだった。


「媚薬も、言葉も、香も、酒も――全部、“演出”だ。気づかれないように導いて、支配して、壊していく。それが楽しいんじゃないか」


ロイドはそう笑った。

まるで、人の心を弄ぶことが「芸術」であるかのように――。


甘い言葉と、計算された優しさ。

「支配の囁き」というスキルの効果など、最後のひと押しでしかなかった。


王女のティアラもそうやって堕とした

あの夜、宮殿の一角。

王女であり聖女であるティアナが、ひととき心を解いた夜があった。


それはごく私的な宴。

政務の合間の“休息”として設けられた小さな集いだったはずが──

そこにいたのはロイドただ一人。


淡い灯火、舞う香煙。

杯に注がれた透き通った琥珀の酒には、微かに香草が混じっていた。

味は柔らかく、だがゆっくりと意識の境界を曖昧にする。


「今日は……随分疲れているようだね、ティアナ」


ロイドの声は低く、落ち着いていた。

《支配の囁き》のスキルは、この時すでに発動していた。

あくまで自然に。

だが、逃れようのない“圧”と“誘導”を含んで。


ティアナの肩から力が抜けたのは、ほんの数分後のこと。

聖女という立場。

王女という孤独。

その隙間に染み入るように、ロイドは“心”に手を伸ばした。


「お前が必要なんだ。俺の妃として、隣にいてくれ」


その言葉に、《支配の囁き》は絡む。

魔術的な拘束ではない。ただ、言葉の「重さ」を強めるスキル。

受け手の心に染み込み、“真実”のように感じさせる。


ティアナは、静かに頷いた。


その瞬間、彼女の歩む道はロイドの隣へと定まった。

それが本当に自分の意志だったのか、それとも彼の言葉に導かれた結果なのか──

今となっては、彼女自身にも分からない。


けれど、確かに心は傾いていた。

ロイドの声に安心し、彼の視線に意味を見出し、知らず知らずのうちに彼の存在に寄りかかっていた。


“私は自分で選んだ”──そう思っていた。

だが実際には、“選ばされていた”のかもしれない。


ティアナはいつしか、ロイドこそが次代の王にふさわしい存在だと、自然に疑うことなく信じるようになっていた。


──迷えないように、仕組まれていたのだ。


ロイドの《囁き》は、記憶を操作するような術ではない。

だが、心の判断に“枷”をかける程度には、充分すぎるほど強かった。


気づかぬうちに、ロイドの言葉に絡め取られていた者は数知れない。

フローラも、他の仲間たちも──皆、いつしか彼の掌の上にいたのだ。


だが実際には、彼らの思考はすでに彼のスキルに染められていた。

気づくこともなく、自らの足で沼へと沈んでいったのだ。


ロイドは、それを見届けるたびに快感を覚えた。

心を絡め取り、意志を捻じ曲げ、信頼を欲望に変える――

その“征服”こそが、彼にとって最高の悦びだった。

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