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幼馴染に捨てられた俺は、素材と恨みを喰って最強に至る  作者: 雷覇
第2章

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第28話:反逆への準備

リュミエルがぽつりと呟いた。


「ねえ、レオン。傷も治ったし、このまま王都に戻るつもりなの?」


レオンは動きを止め、肩越しに振り返る。

瞳の奥には、静かな炎が灯っていた。


「まだその時じゃない。まずは……準備を整える」


「準備?」


「森で狩った魔獣の素材。あれを近くの都市で売る。あれだけの希少種だ……まとまった金にはなる」


リュミエルは頷きながら、彼の横に並ぶ。


「お金が必要なのはわかる。でも……それだけじゃないよね?」


レオンは小さく息を吐く。まるで自分に言い聞かせるように。


「……金や力だけじゃ、ロイドには届かない。奴の影響力はすでに貴族層にまで及んでいる。政治にも、聖女にも、もし奴が王になれば俺は国全部を敵にまわすことにもなる」


「じゃあ、そのロイドにどうやって挑むの?」


「情報屋を使う。ロイドに恨みを持つ人間を探すんだ。……俺のように、何かを奪われた者たちを。必ずいるはずだ」


リュミエルの瞳が揺れる。


「復讐のために?」


「違う。……取り戻すために、だ」


そう言って、レオンはゆっくりと歩き出す。

その背には、森で刈った魔獣の素材――鋭い牙、頑丈な鱗、毒を含んだ腺――が収められた大袋。

料理人としての手で切り裂き、喰らい、吸収し、手に入れた力の証。


リュミエルはその背を追いながら、そっと囁いた。


「ねえ、わたしも一緒に行くからね?」


リュミエルはすこし得意げにそういった。


「お前が? 人間の街だぞ。見えると厄介な目に――」


「だいじょうぶ、だいじょうぶ。わたし、普通の人間には見えないから」


そう言って、リュミエルは指先で自分の頬をつつきながら、にこりと笑った。


「人に見えないってことは、つまり……潜入、偵察、盗み聞き、尾行、情報収集……いろいろ役に立つってこと!」


「盗み聞きはともかく……本気なのか?」


「本気だよ。だってレオン、今から危ない橋を渡ろうとしてるでしょ? わたしも役に立ちたいよ」


レオンは少し口を開いたが、言葉が見つからず、やがてため息をついた。


「……わかった。ありがとう」


「任せてよ!」


そう言って、リュミエルは踊るように一歩前にでる。

その背中を見て、レオンはふと、肩に背負った重みが少しだけ軽くなったように感じた。


(見えない妖精の同行者、か……)


レオンの視線が、遠くに広がる街並みをとらえた。

情報屋、素材の売却、そしてロイドの影――

すべては、ここから始まる。


レオンは石畳の通りに足を踏み入れた。

街の名は《アストリア》。王都ほどの規模ではないが、交易の要所として知られ、多くの冒険者や商人が行き交う中規模の都市だった。


「さて……まずは、素材を売れる場所を探さないとな」


背中には、魔獣の森で狩った魔獣たちの素材が詰まった革袋。

鋼のような鱗、燐光を帯びた角、希少な内臓器官――

どれも高値が期待できる代物だ。


市場の通りを進むにつれ、焼き菓子の甘い香りや革細工の匂いが入り混じる。

リュミエルは人の目には見えぬまま、レオンの肩にひょいと乗ってきた。


「ねえレオン、あそこ、冒険者がいっぱい来てるみたい」


視線の先、そこに一軒の商会があった。


「《ラドン商会》か……聞いたことはある」


評判は悪くない。かなり質の良い商品を扱っており、それを納得の価格を出すという噂の商会だった。


レオンは袋を背負い直すと、重い足取りでその商会の中に入りカウンターへと向かう。


「素材の買取を頼みたい。珍しい魔獣のものもある」


「……どれどれ? おお……こりゃ、すげぇな!」


店主の目が輝いた。レオンが静かにうなずくと、彼の態度が一変する。


「こいつぁすごい……鋼鱗に燐牙、未加工の魔獣の心臓まで……! いったい誰がこれを?」


「――僕がやった」


そう静かに告げたレオンの声に、一瞬だけ空気が張り詰めた。

だがすぐに、店主は豪快に笑う。


「へぇ! こりゃすげぇ腕だ! いいだろ、全部で……」


――取引成立。


手元に渡った金貨袋の重みが、レオンの背中を少しだけ軽くした。

思った以上の高値で売れた。あの危険な魔獣の森の素材だ。当然と言えば当然か。


「次は……情報屋だな」


レオンは目を細めた。

逆襲への道が、またひとつ現実に近づいてくる。

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