邪な男(ロイド視点)
朝の光が、薄いカーテン越しに部屋を満たしていた。
静かで、あまりにも穏やかな朝。
ロイドが視線を戻すと、ベッドの中にはフローラの小さな背があった。
シーツを引き寄せ、肩をすぼめて眠っている――いや、眠ったふりをしているのかもしれない。
「(ああ、よかったよ。すごく、よかった)」
ロイドが無言のまま衣服の襟元を整えている。
余裕のある仕草と、どこか薄ら笑いを含んだ口元。
昨夜の静寂、震える呼吸、俯いたままの目線。
そのすべてが、俺の欲望を満たしていた。
俺は椅子にもたれながら、静かに彼女を眺めた。
(フローラ……お前ほど、手に入れがいのある女はいない)
(俺は王になる――その未来は、もう確定している)
ロイドは静かに立ち上がり窓の外を見下ろした。
目に映る民の暮らし、遠くに広がる王都の屋根並み。
すべてが、自分の足元にひれ伏す日はそう遠くない。
玉座に座ること――それは“頂点”に立つという意味ではない。
下にいるすべてを見下ろせる場所”に立つということだ。
王になるとは、善政を敷くことではない。
誰がどこにどう存在するか、自分が誰をどこに配置するかに意味がある。
(愚民には安堵を、貴族には権力を、女には役割を)
そして、そのすべての上に立ち、
何も言わずに、何も求めずに従わせることこそが、俺の支配の形だ。
(誰にも逆らわせない。誰も抗わせない)
(その完成形を――俺は、王という名で築き上げる)
ロイドはゆっくりと笑った。
静かに、けれどその奥で――喉元から沸き上がるような優越感が滲んでいた。
(この世界を、俺の美学で塗り替えてやる。
それを“秩序”と呼ぶのが、王の権利だ)
(フローラもそうだった。やがてすべてがそうなる。)




