表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染に捨てられた俺は、素材と恨みを喰って最強に至る  作者: 雷覇
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/58

魔獣を喰らう者

やがて、木々の隙間から水のせせらぎがはっきり聞こえてくる。

レオンは茂みを掻き分け、小さな清流にたどり着く。

透明な水が岩の間を流れ、陽光がわずかに反射してキラキラと輝く。


レオンは膝をつき、水面に手を伸ばす。

「やっと見つけた…これで少しは――」

だが、言葉は途中で止まる。背後で低いうなり声が響き、茂みが揺れる。


レオンは剣を抜き、振り返る。

そこには、猫型の魔獣がいた。

体は豹より一回り小さく、緑色の目がレオンを捉える。

この水源はやはり魔獣の縄張りだった。

「…水を取る前に、この魔獣を片付けないといけないか」


魔獣が飛びかかる。

レオンは水辺の岩に飛び乗り剣を振り下ろす。

刃は魔獣の肩をかすめるが、魔獣の尾が鞭のようにしなり、レオンの腕を叩く。痛みに顔を歪めながら、彼は水辺の地形を利用する。

滑りやすい岩場に魔獣を誘い、足を滑らせた隙に剣を突き刺す。魔獣は唸り声を上げ、倒れる。


「ごめんね。君の血肉も吸収させてもらうよ」


レオンは息を整え、魔獣の死体に近づく。

料理人としての知識を活かし、ナイフで皮を剥ぎ、肉を切り出す。


森の素材を活用し、近くの木の樹皮を削って即席のまな板に。

川辺で採った野生のハーブ。

レモンのような酸味を持つ草と

胡椒に似た木の実を摘み、調味料とする。


レオンは岩で小さな火を起こし、平らな石を熱して簡易の鉄板に。

脂身を石に擦りつけ、ジュウジュウと音を立てる表面で赤身を焼き上げる。

ハーブを細かく刻み、肉にまぶして香りを立たせる。

「この環境にしては極上の出来だ」


レオンは一口かじる。

焼き上がった魔獣のステーキは表面がカリッと香ばしく、中はジューシー。

レオンは一口かじり、濃厚な旨味とハーブの爽やかな香りに目を細める。


「こいつは美味い!」


肉を食べ終えると、体内に熱い力が流れ込む。

魔獣の俊敏力が彼に宿った。レオンは拳を握り、笑みを浮かべる。


「これで戦いがさらに楽になる」


レオンはさらなる力を求めて森の奥へと進んだ。

彼の目的はただ一つ――生き抜くために、“喰らう”こと。


まず現れたのは、群れをなして飛ぶカラス魔〉。

その羽ばたきには神経を麻痺させる粉が含まれていた。


レオンは布で口元を覆い、風上を選んで素早く間合いを詰め剣で切り裂く。

焼き鳥のように串で炙った。


口に入れた瞬間、舌に広がる苦味と焦げの風味。

だが次の瞬間、視界が研ぎ澄まされる。


「……目が、いい。動きが、読める……!」


《千里眼》――カラス魔獣の視力が、彼に宿った。


次に出会ったのは地を這うように動くアルマジロ型の魔獣。

その体は岩のように硬く、通常の剣では歯が立たない。


だがレオンは観察した。関節の隙間。動きのリズム。呼吸の間合い。

狙いを定め、跳躍。刃が柔らかい腹部を貫いた。


その肉は脂がのっていて、濃厚な旨味と香ばしさが絶妙だった。

レオンは骨の髄まで喰らい尽くす。


「……皮膚が……硬くなってる?」


《硬化》――防御力が格段に上昇していた。


それから六匹の魔獣を倒し、料理して食べたレオンは

防御力、敏捷性、毒耐性、瞬発力、隠密性、電撃力を手に入れた。

彼の身体は人間を超えた強さを帯び森に適応していた。


陽が傾き始めたころ、レオンはふと足を止めた。

木々の影が濃くなり、森の空気が冷え始めている。


(……そろそろ、休む頃合いだな)


力を得るためとはいえ、狩り続けた体は限界に近い。

体力も、集中力も、思考も削れている。


「一度、水場に戻ろう。今は、英気を養う時だ」


彼は森を引き返し、以前魔獣と戦った清流へと向かう。

水面は穏やかに揺れ、空の朱が映っていた。


まずレオンは、安全を確保するための下準備を始めた。


木の枝を束ねて簡易の柵を作り、

乾いた葉で魔獣の足音を聞き取りやすくする罠を仕掛ける。

風向きも確認し、匂いが流れにくい場所を宿営地に選んだ。


「ここなら、夜襲にも気づける。……完璧とはいかないけどな」


焚き火用の石を組み、火打ち石で種火を起こす。

拾った枯れ枝に、脂を染み込ませた草を加えれば、炎はすぐに安定した。


火の温もりに包まれながら、レオンは腰を下ろす。

調理用に残しておいた魔獣の干し肉と、ハーブを混ぜた即席スープを火にかける。


じゅう……と音を立てて、香りが立ち上がる。

それはまるで、戦いのなかの小さな祝福のようだった。


「……うまい」


疲れた身体に、温かいスープが沁みわたる。

焚き火の音、虫の声、せせらぎ――静寂と自然が奏でる夜の調べ。


彼は包帯を巻き直しながら、ぼんやりと星を見上げた。


「僕は……これからどうなるんだろうな」


問いに答える者はいない。

だが、炎の揺らぎが、どこか優しく答えを肯定してくれているように思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ