罠に堕ちたレオン
朝霧が立ち込める中ギルドではロイドが仕込んだ偽の書類が役人の手に渡っていた。
書類にはレオンが有力貴族の娘を騙し金を巻き上げた証拠として
偽造された手紙や取引記録が含まれていた。
書類は本物と見分けがつかないほど精巧だった。
ギルドの点検役である老獪な男、ガストンが書類を手に眉をひそめる。
「これは…レオンという料理人の仕業か? 噂は耳にしていたが、証拠まで揃っているとはな。」
隣に立つ商人の代表が頷く。
「街の評判も落ちる一方だ。こんな男を野放しにしておくわけにはいかん。」
偽書類は、ギルドの決定を後押しする火種となった。
レオンの悪評は瞬く間に街中に広まっていった。
レオンの元にギルドの使者が現れた。
「レオン、ギルドから通告だ。お前に不正があった証拠が上がっている。調査が終わるまで拘束させてもううぞ。」
レオンは目を丸くする。
「不正? そんなことするはずありません!」
使者は冷たく書類を突きつける。
「証拠は揃っている。抵抗するなら衛兵を呼ぶぞ。」
レオンは唇を噛みしめギルドに従うしかなかった。
ロイドは窓辺に立ち、街を見下ろしていた。ノエルが報告に訪れる。
「順調だ。ギルドはレオンを締め上げ、社交界ではティアナの噂が火を噴いてる。あと数日もすれば、レオンは街にいられなくなる。」
ロイドは小さく頷き、冷たく笑う。
「フローラはもうすぐ俺のものだ。レオンの名が汚れ、彼女が彼を拒絶する瞬間を想像するだけで…たまらない。」
「ただレオンの評判は確かに落ちたが、フローラはまだ彼を信じてる節がある。ティアナの話じゃ、昨日も彼女がレオンの所に顔を出したらしいな。」
「やはり直接彼女に突きつける必要があるな。レオンの破滅を、彼女の目に見せつける。」
レオンの追放を決定する公開審議が王の前で開かれた。
街の住人たちが集まり、好奇と非難の目をレオンに向ける。
ロイドはフローラを連れて広場に現れ、彼女に審議を見せることを企てていた。
フローラは青ざめた顔でレオンの姿を見つめる。
レオンは鎖で繋がれ、ギルドの役人たちに囲まれていた。ガストンが書類を読み上げる。
「レオン、詐欺と不正の罪により、汝をこの街から追放する。異議はあるか?」
レオンは必死に声を上げる。
「僕は無実だ! 誰かが陥れたんだ!」
だが、群衆の嘲笑と罵声が彼の声を掻き消す。
フローラは震える手で口を覆い、涙を浮かべる。ロイドは彼女の肩に手を置き囁いた。
「見ろ、フローラ。あいつは嘘つきだ。ずっとお前を騙していたんだ。」
フローラはロイドの手を振り払えず下を見ているだけだった。
「 レオンは…レオンはそんな人じゃない!」
だが、彼女の声には、ほんのわずかだが迷いが滲んでいた。
広場での審議で読み上げられた「証拠」、群衆の非難の声、そしてティアナが社交界で流した噂が、フローラの心に小さな疑念の種を植え付けていた。
地下監獄の独房は湿気と冷気に満ち、鉄格子の向こうから滴る水音が響いていた。
レオンは鎖で繋がれた手足を動かし、冷たい石床に座っていた。
衛兵の暴力でできた痣が顔に浮かび、服は破れていたが、彼の瞳にはまだ光が灯っていた。
松明の明かりとともに、ロイド、ティアナ、ノエル、レイナの四人が現れる。
ロイドは鉄格子の前に立ち、腕を組んでレオンを見下ろす。
「レオン、ずいぶん哀れな姿だな。こんな檻の中で」
レオンはロイドを睨み、声を低くする。
「ロイド...これは君が仕組んだことだったんだな。何でこんなことを」
ロイドは冷笑を浮かべながら答えた
「もちろんフローラを俺のモノにするためさ。お前が悪いんだぞレオン。火傷が顔に会った頃のフローラに俺は手を出す気はなかったのに。お前が彼女の顔を直したりするからだ」
レオンの目が一瞬鋭く光る。
フローラの火傷――彼女が幼い頃に負った傷をレオンはエリクサーで癒し彼女の笑顔を取り戻した。
あの時のフローラの感謝の瞳が、レオンの心に深く刻まれていた。だが、ロイドはその純粋な行為を汚すように続ける。
「お前のせいで、フローラは俺の欲望を掻き立てた。あの美しい顔、俺だけのものにする価値がある。だが、お前が彼女の心に居座るから、こうやって始末しなきゃならないんだ。」
レオンは鎖を鳴らし、立ち上がろうとするが、衛兵の暴力で弱った体がよろける。それでも、彼の声は力強かった。
「フローラは騙されてる。お前たちの偽の証拠と噂に惑わされてるだけだ!」




