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38  作者: 碧ヰ 蒼
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第一幕:過積載思考オーバードライブ③

カクヨムでも投稿してます。カクヨムの方が更新早めです。

ぜひよろしくお願いいたします。


https://kakuyomu.jp/users/aoaoaowi


⇩⇩⇩それでは本編始まります⇩⇩⇩

 突然の相方申請から一週間が経とうとしていた四月の中頃。教室内ではおもに陽キャグループとそれに連なる人間、加えてオタクグループ、どこにも属さない者たちで四極化されていて、耳心地の悪い話題が飛び交っていた。

 ただ一つ、幸運だったことがあるとするならば、小学生以来の友人ができたということだろう。それは他ならぬ大阪訛りの女子であるのだが、放課後の教室内という場において彼女の声は鋭く通りすぎるようで、自分たち以外の生徒は足早に退室していった。

 「なあなあ、部活決めた?」

 今日も尻上がりな言葉に、尻上がりな体勢で話しかけてくる。前かがみで来られると少しだけ目のやり場に困ってしまうから、彼女の持つ溌剌さというのも考え物だ。

 「決めてないけど…ていうか、強制じゃないらしいし、個人的には無理して入らなくてもいいかなとは思ってるよ。あ、でも一つだけあったな。気になる部活」

 「ほな見に行こうや! ウチもまだ決めてへんし、いろいろ見に行くついでにコンビ組まへん?」

 「せめて日本語で頼むわ」

 「ほなコンビ組むついでに、部活見学いこうや」

 「前後関係がギリ通らないからアウトで」

 「そんなん言わんといて~。ほな、なんぼ誘ったらええんや~」

 「俺は何回断ればいいんだ?」

 最近ではこんなやりとりが日常化してしまっている。これは非常に危ういことだ。彼女は時間と隙さえあれば、俺を相方にすべく口八丁を自在に操り、舌先三寸で言論を絡めとってこようとしてくるのだ。ただ無視すればいいだけなのかもしれないけれど、申請を断った手前の罪悪感というのは想像以上に大きいもので、彼女が相方を見つけるまでの喋り相手くらいにはなろうと努めてしまっている。そんなことを続ければ当然、クラス内で俺たちに関する噂は絶えなくなっていた。

 要するに、たぶん手遅れなのだろう。

 「アオイが一万回断っても、ウチは一万と一回誘うから問題あらへんよ」

 「心の中のドリ〇ムを人質に取るんじゃねえよ…」

 「ほなコンビ組んだらええんちゃう? そんで万事解決でっしゃろ?」

 「いや、あのさ。いい加減、いい加減に他の人を探しなよ。俺は漫才はやるより見る方が好きなの」

 「別に漫才だけやるとは言ってないやん?」

 「コントでも同じだから…ていうか、単純におもしろがってるだけだろ? 俺が他の人よりちょっとだけお笑いが好きだからって」

 「ちゃうよ。それだけは、ほんまにちゃう」

 彼女はそう言って灼熱のごとく温度を上げた眼差しを突き刺してきた。そのあまりの熱量に身じろぎを余儀なくされてしまい、椅子がぐらつき落ちそうになってしまったのは今のところ彼だけの秘密だ。

 「落ちそうなっとるやん。大丈夫け?」

 残念、秘密ではなくなってしまった。

 「大丈夫。ていうか、春川…」

 「なんぼ言うたら分かるんよ。エミって呼んでや。そっちゃのほうがコンビっぽいやろ?」

 「ていうか、春川。部活見学は行かなくていいのか?」

 そんなふくれっ面をされても。そもそも女の子を下の名前で呼ぶなんて度胸が、自分にあるかと聞かれたら限りなくゼロに近いので普通に許してほしい。

 「エ、エミさん。部活見学は行かないの?」

 「ウチは部活入らへんよ。強制やないみたいやし、部活やる時間があんねやったら路上でネタ見せしとった方が有意義やろうし」

 「そっか、それなら俺とはここでお別れだな。俺は漫研の見学に行くから」

 「ほなウチもついてくわ。ウチとったほうがおもろいって思わせたる」

 「お前と居てつまらないと思ったことはないよ」

 続けざまに「それじゃ」とだけ言って教室から出ていき、唯一気になっていた漫研の部室へと足を運ばせる。正直な話、彼女といること自体はとても楽しいのだけれど、もし自分が居ることで彼女の輝くしくなるはずの未来が少しでも陰りを見せるようであれば、積極的に遠ざけるべきなのだ。これはそういう前向きな後ろ暗さではあるけど、不正解ではない気がする。

 「で、なんでついて来てんだ?」

 「あかんかったか?」

 「そうじゃないけど、春川にとっては無駄な時間になるんじゃないのかなって」

 「なんでや? 無駄な時間なんてひとつもあらへんやろ」

 「少なくとも有意義ではないだろ。俺に関わるくらいなら、他の人を探した方がよっぽど意味があるって」

 「アオイ。それ本気で言うてんの?」

 「本気も本気だよ。俺にかまうだけ春川の時間と才能が無駄になる。そんな勿体ないことないだろ」

 「そんな才能のあるウチが、わざわざ時間を使うて誘ってんねやから、これは有意義な時間とちゃうんか?」

 「口だけは上手いんだからよ…」

 そんな下らない話をしている間に、『漫研』と書かれた表札が掛けられたドアの前に着いていた。これは個人的な話にはなるが、漫画やアニメは人並み以上に好きな方だと思う。とはいえ、特定の作品が好きだということはなく、特段に推しがいるわけでもない。ただ人よりは詳しいだけのただの一般人と言えるのかもしれないけれど、漫研という場であったら熱中できる何かが見つけられるのではないだろうか。

 そんな甘い算段も含めて漫研に足を向ける意欲が湧いただけで、別に自分が変わらなくとも特に問題は無い。今の生活はそこまで憎むべき退屈ではないのだから。

 「失礼します」

 金属の寒々しい音を三回だけ響かせて、建付けの悪いドアに少しばかりの力を込めて開け放つ。すると、そこには漫研らしからぬ光景が広がっていた。


最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。

面白かったらフォローといいねをお願いいたします。とってもまーごめになります。

SNSのフォローもしてくれるととても喜んでしまいます。つまりまーちゃんごめんねです。



⇩カクヨム

https://kakuyomu.jp/users/aoaoaowi

⇩X(旧:Twitter)

@aowi_ao7777


今のところ、カクヨムの方が更新が早いです。


非情にまーごめ。全てまーちゃんごめんねの中にあります。

ありがとうにありがとう。どういたしまして。

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