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第6話 『『神龍オメガルス』』

 ラインたちは、周りで訓練している生徒たちを見て、自分たちどんな訓練をするか考える。


「どんな訓練しようか? 戦う?」


「他の奴らも戦ってるし、いいだろ。じゃあやるぞ」


 魔法と『権能』の訓練の為に生徒は、実習場で戦闘訓練をしている。それを見てラインたちも戦闘訓練を始めた。


「俺の合図で始めだ。よーい……始め!」


 グレイスの合図で、四人が一気に攻撃をぶつける。

 アッシュはグレイスに、自らの動きを加速させる《超加速》で接近し、剣で斬りかかるがグレイスの《無敵》によってダメージは無効化される。


「ん?」


 グレイスに長剣を振ったアッシュに向かって、ラインが血液の刃を持って尋常じゃない速度で近づき、アッシュの長剣と血液の刃がぶつかる。


「血液の刃って意外と硬いんだね」


「だろ? 結構丈夫に作ってるから――なっ!」


カキィィン!!


 二人が刃を交わし、なかなか良い勝負をしている。


「――ウィンドカッター」


 ラインは風の魔法を詠唱し、風の刃を飛ばす。その風の刃を長剣で斬った瞬間、血液の糸を操りアッシュを拘束する。

 しかし――


「まじか」


 綺麗に糸を切り取り、再び《超加速》を使って長剣を振りかざしながらラインに近づく。


「速――」


 その刃が迫る前に、グレイスがラインとアッシュの真ん中に入り、迫り来るアッシュの刃を止める。


「ん? グレイスか」


「ああ。――フレイムスパーク」


「ちょ……」


 グレイスが炎魔法を詠唱し、アッシュに向かって炎の弾丸が放たれる。

 だがその玉は、異空間から出てきた長剣によって斬られた。


「今のなんだ?」


「《空間操作》の応用でね。僕はこれで異空間の武器庫に剣を置いてるんだけど、こんな風に使うことも出来るんだ。危なかった」


「便利だね」


 彼の持つ、《空間操作》は武器などを置ける空間を生み出すことができる。また、それを応用して敵の後ろからも刃を出せたりと、かなり便利なことができるのだ。


 この十数秒、三人の戦いを見ていたアレスが水魔法と氷魔法を詠唱する。


「アクアパレット、フリーズニードル」


 詠唱された複数の水の弾丸と、鋭い氷の針が三人に向かって飛ぶ。


 その魔法を、ラインとアッシュは切り刻み、グレイスはまだ無敵時間が切れていないため、全てを受け止めた。


「やっぱりダメだね」


「そんな魔法じゃやられねえよ」


四人が再び、風を切るように走ろうとする。だが、その途端――


ズドォォォン! ゴゴゴゴ……


 大きな爆撃音や地鳴りが続き学園全体が赤紫色の球体の中に入る。


「何!?」

 生徒達は、急な出来事に驚きながらも結界を触る。


「これは……結界か。痛っ!」


 結界の外に出ようと手を伸ばしてみるものがいたが、瞬時に電撃が体を走り外側に出ることはできなかった。


 生徒が少しパニックに陥っている時、空に黒い龍が現れた。


「龍!?」


「あれって……」


 空に現れた黒い龍――それはレガリア王国内でどこに現れるかも分からない無属性の力を持った『神龍オメガルス』だった。


「なんで!? 学園に現れるなんて!」


 そんな神龍の姿を見て生徒は先程よりも強いパニックに陥ってしまった。


 神龍は神出鬼没で、どこに現れるか分からない。十年前に王国騎士団が討伐に挑み少数の犠牲を出し撤退、五年前に挑んだ際は騎士団の半分が亡くなった。


 その強さを知っているからこそ生徒たちが怯えるのは当たり前のことだ。


「――ッ」


 アッシュは、持っている長剣を強く握りしめてながらその龍を睨む。普段の彼からは考えられない状態に、ラインとアレスは驚く。

 すると、グレイスがそんなアッシュの頭を小突いた。


「おい一旦落ち着け」


「――あ、ごめん……ありがとうグレイス」


「別に」


 まるで理由を知っているみたいな態度を取るグレイスに何か聞こうとしたが、それより先に後ろからでかい声が聞こえてくる。


「お前ら!!」


 それは、魔法科の担任で、ラインたちの担任であるカイラス・ヴァルディ先生だ。校舎から実習場まで走ってきた。


「先生!!」


「先生! 龍ですよ!? 騎士団に連絡しないと!!」


 焦った生徒は先生に対し騎士団に連絡をするように急かす。しかし――


「無理だ。この結界は外から入ることも中から出ることも出来ない。助けを呼べたとしてもここに入ることができない」


「そんな……」


「何とかならないのか!?」


「とにかく1度校舎に避難する。着いてこい!!」


 恐怖で悲鳴をあげている生徒たちをゆっくり慰め、生徒全員がカイラスに着いていき、自クラスに戻る。


◆◇◆◇


「先生! どうにかならないんですか!」


「……」


「騎士団が勝てなかったんだよ!?  私たちが勝てるわけないじゃん!?」


 そういった話が各クラスで起こっている。みんながザワザワ話をしている中、四つ子は『創世神』の力でテレパシーで話していた。


(ねえお兄ちゃん、アレス、どうするの?)


(あいつは神龍だぞ? そう簡単に倒せるわけがない)


(でも倒さないとみんなが死んじゃうよ)


(じゃあどうするの? ラインお兄ちゃん)


(まずは結界を解くのが優先だ。でも何処にあるか……)


「おいライン、どうするんだ?」


 そんな会話をしていると、後ろからアッシュとグレイスに声をかけられる。


「え? どうするって何が?」


 クラス中がパニックになっている中、平然とした態度で話しかけてくる二人に驚きつつも答える。


「あれを倒すかってことに決まってるだろ?」


 と、グレイスが当たり前のように言ってくる。

 だが、神龍を倒すのは簡単ではないだろう。


 いくらここにいる四つ子が『創世神』と吸血鬼のハーフで、神であるとしても、その力を完璧に扱えないので全力で戦えない。


 もし四つ子が全力で戦うと確実に神龍は倒せるが、その後に四つ子以外の世界が滅んでしまう。


 となると、本気で戦う訳にはいかない。神龍をこの学園の生徒みんなで攻撃し、弱らせたところでやるしかないのだ。


「ライン、どうした?」


「……みんなで倒すしかない」


「え?」


 グレイスとアッシュが首を傾げていると、ラインが急に席を立ち、その音に驚いたクラスメイトはラインに注目を集めた。


「みんなにお願いがあるんだ。俺達と一緒に神龍を倒しにいかないか?」


 ラインはクラスメイトの協力を集めようとする。しかし、そう簡単に集まるわけが無い。

 そして、もちろん批判が集まる。


「お前、あいつに勝てると思ってんのか!? 正気かよ!!」


「そうよ! 先生たちが何とかしてくれるはずよ!」


「騎士団が勝てなかった奴に僕たちが戦って何になるって言うんだ!!」


 ラインの発言に対して賛成してくれるクラスメイトはいない。兄妹と『剣聖』、『魔導師』以外は反対意見ばかりを言っていた。


「……僕は行ってくるよ」


「ちょ、おいこら待て!」


アッシュはそう言って、長剣を取り出して教室の外の走り出す。それを追いかけるように、グレイスは走って着いていった。


「あいつら……まじで」

 

 アッシュがなぜそこまで神龍を倒す気があるのかわからないが、おそらく何かしら強い理由があるのだろう。


「すげぇ……」


 クラスメイト達が外を見ると、確かに二人が神龍と戦っている。

 その姿を見た人達は、驚きと同時に迷っていた。

 外にいる『剣聖』と『魔導師』のように神龍と戦うか否だ。


 ついに、黙っていたラインが口を開く。


「みんな、このままここに居て良いのかよ。アッシュもグレイスも、この学園のみんなを守るために戦ってる。俺達も手伝って、みんなで神龍を倒そう」


「確かに、二人だけに戦わせる訳には……」


「みんなで戦えば……勝てるかも」


 ラインの説得と、外に出た二人により、それまで批判ばかりしていたクラスメイトの考えが変わってくる。すると、ある一人の生徒が教室から飛び出した。

 

 その後ろに、クラスメイト達が段々と続き、魔法実習場に向かった。ほかのクラスでも、外を見た生徒達がいっせいに実習場まで向かい、魔法実習場はほとんどの生徒で埋められた。


◆◇◆◇


 神龍と戦っていたアッシュとグレイスは、その人だかりに驚愕する。


「お前ら……」


「俺らも協力しに来たぜ!」


 と、クラスメイトが声を上げ、それに他の生徒たちも声を上げる。


 アッシュとグレイスが神龍に背を向けていると、神龍が炎を吐く。

それが二人に当たりそうな所で――


「「「「……」」」」


 四つ子がその炎を消し去った。

 そこには、世界が軋むような「カン……」という音が空間の中から響いた。


「さあ、神龍討伐戦だ」



読んでくれてありがとうございます

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― 新着の感想 ―
この展開の暗示だったんですね。 入れないし、過去に負けている騎士団の強さの程度が不明ですけど、学生たちよりは強いと想定すると厳しい戦いになるのでしょう。 犠牲者が少ないことを祈ります。
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