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第5話 『新たな生活の始まり』

 魔法学園の朝はいつもと変わらない喧騒に包まれていた。校庭にある魔法実習場からは朝から魔法訓練に励む生徒の声、魔法の爆発音が聞こえる。


「早くから来て訓練してるのか……すごいな」


「私たちは朝が苦手だもんね」


 ラインたちは吸血鬼の体質で日光が出ている間は吸血鬼としての力が減少する。しかしその状態でも生まれ持った天性の戦闘能力のおかげであまり変わらないが、身体はだるい状態だ。


 また、夜になると吸血鬼の本来の力が使えるようになり、日光が出ている間の数倍の力を引き出せるようになるのだ。


 訓練中の生徒を見ていたラインの肩に腕を組まれる。


「よお、久しぶりだな」


「え? あ、なんだレオか」


 それは先日、ラインに決闘を挑み敗北した『煌星の影』(こうせいのかげ)の称号を持つレオ・ヴァルディだった。


 ラインたちは先日の口が悪いレオとの違いに驚く。


「えっと……お前、口調が変わったか?」


「え? そうか?」


「あれ、二人ともおはよう」


 後ろからアッシュの声が聞こえる。


「あ、アッシュか。おはよう。グレイスも」


 そう返すと、ニコニコしながらこちらへ向かってくる。その隣には、彼の幼馴染であるグレイスも一緒だ。


「ようライン。って、レオもいるじゃねえか」


「よーグレイスー」


「……お前らって知り合いだっけ? 意外と仲が良くね?」


「あーそれはな――」


 と切り出し、グレイスは話し始める。

 ラインを含め、四つ子は正直、学園での強さの立場などどうでも良かった。


 そのため、入学試験もまあ落ちない程度にのんびり終わらせ、この学園に入学した。


 四つ子は気づかなかったようだが、入学式の日に実は試験の順位が貼られていたらしく、グレイス、レオを含んだ上位十名のことは多くに知れ渡った。


 グレイスとレオも、それでお互いの名前をみつけ、偶然話して仲良くなったらしい。


「あーそんな紙貼ってあったのか。全然気づかなかったな……」


「ほら、早く教室行くよお兄ちゃん」


 セツナがラインの耳を引っ張りながら歩く。


「痛いって……もっと優しくしろよ」


「うっさいなー」


 そんないつも通りの二人を見て、アレスもレンゲもクスリと笑った。


◆◇◆◇


 校舎の中に入るとレオから二位の座を奪った男として多くの生徒に話しかけられた。

 もちろん、今まで吸血鬼と隠していたが先日の決闘で吸血鬼ということはとうに知れ渡ってしまった。

 そのため、また変な言いがかりを付けられると思っていたライン達だが、以外にも好意的に話しかけてくる人ばかりだった。



「もう耳が痛えよ……」


 教室の自分の席で、ライン愚痴をこぼす。


「でも、吸血鬼に好意的な人が多くて良かった!」


「……そういえば、なんでレオは兄さんが吸血鬼だって見抜いたんだろう? それに僕たちの方には来なかったし……」


「あ、聞くの忘れてたな」


(一応、あいつらにも聞くか……)


「アッシュ、グレイス、ちょっといいか?」


「なんだよ」


「お前らって俺が吸血鬼だって元から知ってた?」


 ラインは自分のことが吸血鬼だと元々知っている可能性のある『剣聖』と『魔導師』に話しかけた。


「うん、知ってたよ。ファルレフィア家は代々他の吸血鬼より強い吸血鬼が生まれる貴族の家系だってね。

確か……三百年前の四人の吸血鬼を討伐したのも、『剣聖』、『魔導師』、ファルレフィア家の方じゃなかったかな?」


 アッシュは顎に手を当てながら、思い出すように話す。それら全ては、確かに合っているものだ。


「ああ、それで合ってる」


 しっかりと知っていたようで驚いたが、問題はレオに教えたかどうかだ。


「それで、そのことを誰かに言ったか? レオとか」


「いや、言ってないよ」


(じゃあなんで吸血鬼だってわかったんだ?)


 彼の心の中では、ますます疑問が深まるばかりであった。


◆◇◆◇


 四限までおわった昼食の時間、全生徒はすぐに食堂へ向かう。


「じゃあお兄ちゃん、私とレンゲはリリスとエリシアと食べるから」


「分かった」


 セツナとレンゲはラインに手を振り、すぐに友達のもとまで走る。

 リリスとエリシアという女の子は、セツナとレンゲの友達で、リリス・ノワールレーヴと、エリシア・アルセリアというのが本名だ。

 四人で席に座り、話していると金髪ロングヘアのエリシアが質問をする。


「ねえセツナ、ライン君が吸血鬼なら妹の二人も吸血鬼なんだよね?」


 エリシアがセツナに尋ね、リリスも「気になるー」という風に目を輝かせている。


「うん。隠しとくつもりだったのにバレちゃったし」


「なんで隠してたの? 隠す必要ないと思うけど」


「三百年前に吸血鬼が起こした事件があったでしょ? あれと私達の家系は血縁でもないけど吸血鬼って事で嫌ってくる人が少なからずはいるからね」


 お茶を飲みながら、質問に答える。すると、エリシアは納得したように、


「それなら仕方ないね。嫌われるのは困るし」


 と、首を上下に動かした。


「アタシは吸血鬼のこと気になるなー。どんな事が出来るの?」


 と、キラキラした目で聞いてきたのはリリスだ。


「まあ高い再生能力とか……血液を操れたりとかかな。こんな風に」


セツナは指先に血液の糸を生み出し、実演してみせる。リリスもエリシアも「すごー」というような顔で見ていた。


 すると、隣に座っている妹から声をかけられる。


「セツナお姉ちゃん、ラインお兄ちゃん大丈夫かな?」


「え?」


 レンゲが指差す方向を見ると、遠くでライン、アレス、アッシュ、そしてグレイスが一緒に食事をしている。

 そんなラインにたくさんの人が押しかけ、ラインは「なになに!?」というような顔で周りを見渡す。


「ねえ君、レオに勝つって凄いね!」


「そ、そうかな?」


 同じようなことを何度も言われ、それら全てに返答していたラインは昼食を全然とる事が出来ずにいた。


 それを見ていたセツナは呆れたような目を……しているように見える。


「ライン君結構人気だね。レオ君に勝って学年でちょっとした有名人になってるし」


「ねー」


「うん、ラインお兄ちゃんすごく人気になってる……あれ? セツナお姉ちゃんどうしたの?」


 エリシア、リリス、レンゲが「人気だなー」というように見つめていると、セツナが少しラインの近くにいる人達を睨んでいるような感じがした。


「セツナお姉ちゃんどうしたの?」


「……別になんでもないよ」


 そう言って少しだけ嫉妬しながら見つめているセツナだった。


◆◇◆◇



 昼食時間が終わり、五限目が始まった。五限目と六限目はまた校庭の魔法実習場で魔法と『権能』の訓練を行う。


「魔法と『権能』の訓練か。あれ、お前らの『権能』ってなんだったっけ? 忘れた」


「自己紹介で言ってただろ? ちゃんと聞けよ」


 グレイスが呆れた目でラインを見つめる。


「まあまた言えば良いよ。正直僕もグレイスの覚えてないし」


「いやお前は覚えとけよ!? 幼馴染だろ!?」


「嘘嘘。面白い反応するよね」


 誰にでも人懐っこいアッシュと、口が悪いグレイスは性格的に相性は悪そうだが、冗談を言えるくらい仲がいいということはわかっているので、ラインとアレスはニヤニヤする。


「おいお前らニヤニヤすんなよ! まあいい、俺の『権能』は《無敵》と《虚無の防御(きょむのぼうぎょ)》だ。覚えとけよ?」


「僕のは《超加速》と《空間操作》だよ。覚えてね」


 アッシュとグレイスは自らの『権能』を教えてくれた。


「ああ、覚えた。俺のは《創造》と《破壊》だ」


「僕のは《未来予知》と《時間停止》だよ」


 と、生まれつきの『権能』がないラインとアレスは『創世神』の力で自分の付けた『権能』を言った。


◆◇◆◇


  少し離れたところで、セツナ、レンゲ、リリス、エリシアも似たような話をしている。


「アタシの『権能』は《再生》と《奪取》だよ。みんなのも教えて」


「私は《飛翔》と《拘束》だよ」


 リリスとエリシアはそう言って『権能』を教えてくれる。

 セツナ、レンゲは、ラインとアレスと同じく生まれつきの『権能』を持っていないため、『創世神』の力で自分に与えたものを紹介する。


「私のは《切断》と《創造》」


「私のは《早駆》と《復元》だよ! よろしく!」


 そんな話をしている中、周囲は既に魔法や『権能』を使って訓練をしている。

 何か、怪しい影が近づいていると知らずに――



読んでくれてありがとうございます

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― 新着の感想 ―
なるほど。権能は教えても問題ないのですね。 まぁ、不都合ある人は真実を言ってないのかも知れませんけども。 にしても、不穏な伏線が続いていますね……。
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