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第114話『魔法使い』

 あらゆる方向から襲いかかる数々の魔法。『魔導師』グレイス・エヴァンスから放たれるそれを捌くのは、レヴにとって辛いものだ。


 避けても、対処しても止まらない。無限の魔力から放たれる魔法は制限なく、さらに死角からレヴを襲うのだ。レヴに出来ることは、防御魔法を展開して防ぎ続けることだけ。


「チッ、クソが……無限の魔力とか頭おかしいだろうが!」


「仕方ねえだろ持ってんだから。馬鹿野郎が。エクスプロード」


「――っ!?」


 突然、後ろに移動してきたグレイスにより、炎魔法最強のそれが放たれ、全てを塵にするように巨大な爆発音が響いた。


「チッ、あっぶねぇ……。速いじゃねえかよ」


 どうやら、悪魔の力で身を守ったようだ。だが、それでも全てを防ぐことは出来なかったらしい。所々傷があり、血が溢れている。そんな中、レヴはグレイスの動きの速さに難癖を付けた。


 グレイスは、素の身体能力は普通でめちゃくちゃ高い訳ではない。アッシュのように空を駆けることも出来ないし、早く動くことも出来ない。


 でも、グレイスには無限の魔力がある。全身に魔力を巡らせ強化し、さらに飛行魔法や、学園でカイラス先生に学んだ魔法を使うことで、『剣聖』にも負けないくらい戦えるのだ。


 ――そして、彼だけに目を奪われてはいけない。


「グレイス君しか見てないじゃん! 私だって戦えるんだからね!! 《飛翔》! ライトニングスパーク! ルミナスアロー!」


 なぜか『魔導師』に恋しているエリシア・アルセリア。空を浮くものではなく、空を階段のように登れるようになる《飛翔》を使い、長い金髪を風でなびかせながら自由に動く。

 彼女から放たれた雷、光魔法はレヴに向かい、ぶつかる。だが、あまり効いていないのか、表情は変わらない。


「そう言っても、『魔導師』の方がお前より危険に決まってるだろ。お前、魔法強くないし」


「……ムカつく言い方」


「《獅子の咆哮》!」


 身体能力を高める『権能』を使うレヴ。魔の手が、エリシアに近づいた。


「えっ? ちょ、ま……ウィンドカッター!」


「……弱い」


 風の刃を弾き、右手がエリシアの顔に接近する。だが、邪魔が入った。


「オラッ! 邪魔だどけ!」


「っ、やっぱ、お前の攻撃には当たりたくねえな……。でも」


「あ? ――っ!? て、めぇ……」


 グレイスに蹴り飛ばされる前、彼の胴体に拳を入れた。それは一撃で内臓を破壊し、グレイスは口から血が吹き出す。


「……っ、あー、そういや腐ってもお前学園では『第二位』だったもんな。忘れてた忘れてた」


 魔法学園への魔法の入学テストで、二位だった【十執政】『第九位』レヴ・ダイナス=『煌星の影』レオ・ヴァルディ。だから、もちろん彼もほかの生徒より高い魔法の実力を持っている。

 そのため、エリシアをこけにすることが出来るのだが、それも『魔導師』には通用しない。


 言うまでもなく、入学テスト一位はグレイスだ。この国全般で、いや、世界で見ても彼に勝てる魔法使いは存在しない。――『知恵の神』アステナなら、良い勝負をするだろうが。


「俺にとっちゃ、お前も弱すぎて相手にならねえんだけど」


「……煽ってるのか? いい度胸じゃねえか!」


 ――すでに治癒魔法は完了している。内臓は回復し、痛みも消えた。そんな彼から繰り出された煽りに、レヴは強く反応した。

 悪魔の力を右手に溜め、ビームのように放った。

 しかし、グレイスの防御魔法でいとも簡単に弾かれ、顔が引きつってしまう。


「フレイムスパーク! アクアパレット! ボルトランサー! ウィンドカッター!!」


 と、エリシアが魔法を詠唱し、炎、水、雷、風がそれぞれレヴを襲う。また、ダメージを喰らわないと舐めていたレヴだったが、その身から血が溢れ出した。


「なんでだ……?」


「弱い魔法でも、魔力を沢山込めれば強くなるでしょ? さっきグレイス君がしてたから真似してみたの!」


「お、やるじゃねえかよ。……でもあんまオススメはしないけどな……。魔力すぐに無くなって動けなくなるぞ?」


「知ってるよ。その時は、グレイス君が介抱してね?」


「……ま、その時はな」


 満面の笑みでそう言うエリシアを見て、少し頬を赤くしてそっぽを向くグレイス。そんな二人にレヴの声が入ってきた。

 

「――おいおい、何イチャイチャしてんだお前ら。世界の危機だってのに、随分楽しそうだな。《円環展開》、エクスプロード!」


「エリシア、俺の後ろ来い!」


 炎魔法最強のそれを、魔力消費を半分にする陣を展開し放つ。それも、一つではない。複数の炎が直線を描き、こちらに向かってくる。これを、エリシアに防ぐことはできない。

 だから、グレイスは彼女を後ろに回した。


「やってやるよ。《虚無の防御》」

 

 防御魔法を展開し、被害を最小限に抑えた上に、『権能』で無敵のバリアを貼り、なんとか防ぎ切った。


「チッ、お前の『権能』、防御に特化しすぎなんだよ。なんだよ《無敵》と《虚無の防御》って! ダメだろそれは……」


「俺に難癖つけられても困るんだけど。まあ、でも、お前じゃ俺に勝てない」


「――なんだと? 俺が勝てないって? ハハッ、面白いこと言ってくれるじゃねえかよ」


 グレイスとレヴの魔法の実力には明確な差がある。ほとんどの生徒は気にならない、というか、気づかないが、グレイスの魔法には一切隙がなく、正確だ。


 今のように、煽りに反応してしまった時点でレヴの負けだ。

 冷静さを欠けた者が、平常心の者に勝てるわけないのだから。


「決まってんだろ。俺の勝ちだ。――エレメントキャタスト」


 炎、水、氷、雷、風、光の属性エネルギーがグレイスに集中し、一直線に放たれた。

 巨大な爆発音と共に眩い光を上げ、レヴの肉体を貫通する。驚異的な破壊力が身体を巻き込み、レヴは地面に倒れた。


「もう、魔力は残ってねえみたいだな」


「く、そが……」


 それだけ言い残し、レヴ・ダイナスは敗北した。


「レオ君のこと縛ってるね。《拘束》」


 エリシアの『権能』で透明な鎖がレヴを縛り付け、その行動を静止させた。


「私たち、どうする?」


「ラインたちが勝つのを見守るだけ、でも良いけど、どうやら――」


 上目遣いでグレイスを見つめるエリシアにそう答え、後ろから近づいてくる足跡の方向へ顔を向ける。

 そして目が合った、青みがかった銀髪の青年を見て、グレイスはニヤッと笑う。


「お前が見守るだけなわけないもんな、親友君?」


「――うん。後は、ラスボスを倒すだけだよ」


 と、風が髪をなびかせる中で現れた、『剣聖』がそう答えた。


読んで頂きありがとうございます!

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