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第107話『取り戻した大権』

「わたしたちは貴方を裁くつもりだよ。ただ、【十執政】の情報を全て吐いてくれれば少しだけ軽くしてあげる。どうしたい?」


 目の前の、銀色に光る砂時計のような模様が散りばめられたドレスを着ている金髪の女――『時間の神』アスタリアにそう言われ、【十執政】『第六位』クロイツ・ヴァルマーは唾を飲み込んだ。


 『第九位』レヴ・ダイナスと共に【十執政】に反旗を翻し、世界を自らのものにしようとしたクロイツ。しかし、ラインたちに敗れてしまい、彼は今こうして訳の分からないところに連れてこられているのだ。


「答えないの? その方が少しだけ楽になるよ?」


 そう助言するのは、真っ赤な瞳でクロイツに恐怖を与え続け、行動を制限させている『生と死の神』アリシアス。

 だが、それでも頑なに答えようとしない。アスタリアはため息をつき、質問を変えた。


「貴方たちは何のために『創世神』の力を集めているの?」


「……あの方たちを復活させるため」


 少し間を置いて、そう答えが返ってきた。


「あの方って誰? 教えて?」


「……『破壊神』アズラエル様と『魔王』ヴァルザード様」


 裏切っているのに丁寧に敬称を付けるクロイツだが、そこはどうでもいい。アスタリアとアリシアスはその名前を聞いて目を見開いた。


 なんせ、その相手は千年前に彼女たちが戦い、封印した相手だったのだから。


「……全く。面倒なことを……。あんな存在が復活してしまったらどうなるか分かってるの?」

 

「世界が崩壊するんだろ? そんなことは僕でも知ってる。でも、それだけじゃない。『破壊神』様が世界を破壊し、『魔王』様が作り替えるんだ。どんな世界にするかは知らないけど」


「崩壊させられると知っていて、貴方たちは力を集めているの?」


「まあね。まあ、【十執政】は世界を崩壊させたい訳じゃなくて、恩を返したいだけだと思うけどね」


 世界が壊されると知りながらも『破壊神』達を復活させようとする【十執政】。狂った集団だと思っていたが、恩を返したいだけと聞いて首を傾げる。すると、クロイツは話し始めた。


「僕も含めて、ほとんどの【十執政】は救われてるんだ。よく分からない化け物に襲われそうになったところをね。その恩を返そうとしてるんだよ。でもまあ、ソール、『第二位』、レグナード、セルヴィくらいしかまともに働いてなかったけどね。僕は機械を作るだけだったし」


 幸か不幸か、働き者が少なかったおかげで『破壊神』たちの復活が遅いのかもしれない。十人全員がしっかり集めていれば、もっと早く甦らせることができただろうに。


「それで、貴方が世界を支配しようとした理由は?」


「僕もレヴもあの方にそこまで思い入れなかったしさ、あの方に世界を支配される前に、邪魔な四つ子も【十執政】も全員別の世界に飛ばして、僕らが支配する世界を作ろうとしたんだ。 まあそうだね、好奇心かな?」


「……狂ってるね。貴方も」


 そう呟き、アスタリアはアリシアスの方を向き、再びクロイツを見つめる。


「それじゃあ、これから裁かせてもらうね。アリシアス、やって」


 ――瞬間、クロイツの肉体に『死』が襲った。しかし、まだ生きている。不思議そうにしていると、身体が完全に止まり、動けなくなった。


「残機の分だけ。いや、何度も何度も、貴方が奪った命としようとした罪の大きさを『死』で償って」


 『時間の神』の力で肉体の時間を完全に止められ、意識以外は何も出来ない。そして、『生と死の神』の力で何度も『死』が身体を襲い、《再誕の輪(リサレクト・サークル)》の残機が減りは増えてを繰り返し、尋常ではない痛みが襲いかかってくる。


 声が出ず、心の中でしか叫ぶことが出来ない。そんなクロイツの足元に真っ暗な穴が出現し、落下していってしまった。


「どこに飛ばしたの?」


「宇宙だよ。わたしたちの住む神聖な空間にいて欲しくないし。わたしが許すまで、かな」


 この星から遠く離れた宇宙空間に飛ばされ、そこで何度も死を味わう。何年、何十年、何百年。はたまたそれ以上かもしれない。


 人間からすると無限に思える長い時間を、ただ一人、宇宙で彷徨い続けることになるのだった。


◆◇◆◇


「アスタリア、何か考え事してる?」


「……うん。まさか【十執政】を束ねてるのがアレたちだったなんて」

 

「もし、復活したらさ。ボクたちで倒せるのかな?」


 クロイツを飛ばした後、アスタリアとアリシアスはそのような会話をしていた。千年前でも勝つことは出来ず、封印という手を取った彼女たち。そんな存在が今復活したらどうなる? 勝てるわけが無い。


 『創世神』アルケウスがいて、勝てなかったのだ。尚更、四つ子がいても勝ち目はない。


 ――最終手段を用いない場合は、だ。


「アリシアスはさ、わたしたちの大権を『創世神』に返すことになったら嫌?」


「急だね。うーん……ボクたちは力そのものだから、そうなったらもちろん消えるよね。出来るだけ、したくないなぁ。このまま変わらずに過ごしたいよ。折角、アルケウス様に生み出された存在なんだから」


 彼女らは『知恵の神』や『炎神』などとは違って、力そのもの。そのため、『創世神』に力を戻すということになれば消えてしまうのだ。

 元々はそうだったとはいえ、彼女らは生み出されて数え切れないほどの時を生きている。消えたくないというのが本心だ。


「……そうだよね。でも、もしも、本当に勝てなかった時には、わたしと一緒に消えてくれる?」


「……まあ、その時はね。最後の手段ってことで」


◆◇◆◇


 ――『破壊神』アズラエルによって投げ降ろされた破壊のエネルギー弾。人間一人と同じくらいの大きさに圧倒的な力が入っていて、周囲の地面を崩壊しながらゆっくりと進んでくる。

 しかし、それは止まったのだ。


「――」


 『時間の神』の力でエネルギーを停止させ、『空間の神』の力で圧縮し潰す。これまでの四つ子ではできなかったこと。それが、大権が戻ってきたことで扱えるようになったのだ。


 ラインの瞳が金色に輝き、『破壊神』アズラエルの視界から消えた。


 (っ。どこに……)


 アズラエルの後ろに瞬間移動し、それに気づいた彼も後ろのラインと目を合わせる。その瞬間、


「動くなよ」


 瞳が真っ赤に光り、アズラエルと『魔王』ヴァルザードは全身に恐怖が走り、動きが固まる。それは、『生と死の神』の力だ。

 固まる二人に、『雷神』の力で紫電を纏った左足により蹴り飛ばされた。


 全身は痺れ、蹴られた腹から電撃が全身に走っていく感覚がある。


「おい、ヴァルザード。どうする? 面倒なことになったぞ」


「まさか、力を返還するとは思いもしなかったな――」


「――話し合いはさせないよ」


 『空間の神』の力を使用したアレスによってアズラエルから引き離されてしまう。

 『魔王』と対峙するのはアレスとセツナだ。ラインだけでなく、四つ子全員がその力を忖度なく使用出来る。


 彼らを倒すために容赦はしない。


「《切断》」


 『権能』を使用し、血液と風の斬撃を浴びせるセツナ。


 そして後ろに回り込み、手のひらから『氷神』の力で吹雪を放出するのだった。

読んで頂きありがとうございます!

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