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第105話『『剣聖』と『神剣』と属性神』

 ――空は真っ赤に染まり、地面は崩壊し、ラインたちは倒れ、まさに地獄絵図。そんな中、上空に佇んでいる『破壊神』と『魔王』を見つめる『剣聖』たち。


 光の『神剣』セレスティアを握りしめ、アッシュは小声で呟く。


「レオたちはグレイスたちに任せて良いかな? 僕は『破壊神』たちと戦う」


「あなた正気ですか!? 神と魔王ですよ!? いくらあなたが『剣聖』とはいえ、適う相手では……」


「それでも勝たないと。ラインたちが回復するまで、僕は僕の出来ることをするよ。だからグレイスたちもお願い」


「任せとけ。あいつらにお前の邪魔はさせねえよ。怪我しそうになったら俺をぶん投げて良いからな。無敵だし」


 アッシュ一人で『破壊神』たちと戦おうとすることを危険だと言うロエン。もちろんそうなのだが、ラインたちが倒れている今、ここで足止めでもしないと何をされるか分からない。

 グレイスたちに目を合わせ、アッシュは飛んでいってしまった。


 (僕も、『剣聖』として恥じない戦いを。ねぇ、お父様)


 腰に帯刀している父親の形見に触れ、心の中で呟いた。


「一人で我々のもとに来るとはな。随分と勇ましいのだな」


「《超加速》」


 『破壊神』に一言も返さず、『権能』を使用し接近した。ただ速いのではなく、動く時間を加速させているアッシュ。動き的には『時間の神』と同じようなことをしていて、目では負えない。


「……隙が無い動きだな」


 次々と放つ破壊のエネルギー弾を斬り、剣を振る。『剣聖』の剣を避けることが出来ず、手を覆う破壊のエネルギーで受け止める。


「なんだろうが、破壊すればいい。……ん?」


 破壊しようとしたが、ヒビが入らないのだ。眉間にシワを寄せると、アッシュの蹴りが腰に入った。


「そっちばかりに集中するなよ」


 『魔王』が血の鎌を振りながら接近し、アッシュの剣と何度もぶつかる。『剣聖』のアッシュが武器を用いた戦いで負けることは無いが、斬撃に含まれる血が身体に掠っただけでもダメージを受けてしまう。そのことをアッシュは知らないはずだが――


「――っ」


 (……こいつ、飛び散った血も斬ってるのか)


 本能的に危険と感じたのか、飛び散る血も切り刻み、肉体に触れないようにしているのだ。鎌による攻撃を受けながらそんなことまでする器用さに『魔王』は驚きつつも攻撃を加える。


「はぁっ!」


「おっと。……なるほど。その剣は魔族の血が入っている俺には大ダメージが入ってしまうようだな」


「魔族の血?」


「この戦いで分かっただろう。俺は魔族と吸血鬼のハーフなのだ。光の剣は俺の天敵となるようだ――」


 自己紹介を始める『魔王』の心臓に、光の『神剣』が突き刺さる。吸血鬼の弱点が心臓であることは知っている。だから一撃で仕留めようとしたのだが……


「まあ、これで倒せるはずはないよね」


「心臓を突くとは。殺意が凄まじいな。だが、これでお前は終わりだ」


 刺さった『神剣』を引っ張られても抜けないように力ずくで掴む。そして、全身から血液を放出したのだ。


「――っ!? まず……」


 『神剣』を抜き、逃げようとするアッシュ。しかし、あまりに強い力で掴まれていて引き抜けないのだ。ならば――


「《空間操作》――」


 炎の『神剣』アグナシスを取り出し、血液を焼き払う。これで安心――かに思われたが、後ろからは『破壊神』の魔の手が近づいていたのだ。


「っ!」


 背中から殺気を感じ、振り向く。もう目の前には『破壊神』の顔があり、彼の攻撃範囲内だ。このままでは身体を触られ、破壊されてしまう。


 手が顔に当たりそうになる直前、右から熱気を感じた。


「――チッ。早いな。もう起き上がったのか」


「うるせえ黙ってろバカ。よくもまあ地面をめちゃくちゃにしてくれたなてめぇ!」


 『炎神』イグニスが助けてくれたのだ。しかし、先程の攻撃で重傷を負っているのか、ボロボロに見える。彼の後ろにいる属性神たちも同様だ。

 

「ボロボロじゃないか。千年前から弱くなってる貴様らに何が出来る?」


 イグニスたちがボロボロなことを『破壊神』も追及し、千年前から弱くなってしまっている事をバカにするように呟いた。その挑発には乗らず、イグニスはアッシュに目を向ける。


「おい『剣聖』。俺らに『神剣』を寄越せ」


「え? あ、は、はい。どうぞ……」


 突然、『神剣』をねだられ驚くが、《空間操作》で属性神たちにそれぞれが該当する属性の『神剣』を目の前に出した。

 イグニスたちが『神剣』に触れると――


「な、なんだ!?」


 橙赤、紫、青、銀白、薄緑色の光がそれぞれを包み込んだのだ。『破壊神』たちがじっと見つめていると、光は消える。

 そして――


「――っ!? なんだ、この威力は……。前よりも圧倒的に強くなって――」


 イグニスの打撃が身体に入る。その威力は今の戦いよりも、否、千年前の戦いの時よりも圧倒的に強い力だったのだ。

 驚きで言葉が出ずにいる『破壊神』と『魔王』。容赦なく属性神たちの攻撃が当たり、これまでとは比べ物にならない威力に驚愕し、上手く対処できない。


「さっきはよくもやってくれたわね! 死になさい!」


「……許さない。氷漬けになって」


「許さないからね!! もう容赦しないよ!」


「みんな殺気高すぎだよ。まあ、僕もそうだけど!」

 

 アクア、イゼルナ、エオニアの三人がそれぞれ攻撃を放ち、そのサポートをするようにヴォルスが回転斬りをしている。五人の連携に隙がなく、完璧すぎて為す術がないのだ。


「なんだ、貴様らその力は……。一体何を……」


「初代『剣聖』に『神剣』を作ってやった時、俺らの大権の半分を入れてたんだ。その力を今回収したって話だ!」


 初代『剣聖』フェリオス・レイ・フェルザリアに作ってあげた七本の『神剣』。その内の五本は彼らの大権の半分が入っていたのだ。


「『神剣』っていうのは、僕たち神が作った剣って意味じゃなくて――」


「アタシたちの力が入った剣って意味よ!」


 (……知らなかった)


 そんな事を全く知らなかったアッシュは呆然と立ち尽くし戦いを見つめる。彼らがダメージを与えているようだが、全然倒れる気配は無い。アッシュは息を呑み、異空間の武器庫を出現させる。

 そこから一本の『神剣』を取り出した。七本の中の最後の一本。

 

 銀色の刀身が輝き、質量を感じさせない重さだ。これは、『神剣』ヴォイド。無属性の『神剣』だ。この世界では失われた無属性魔法が纏ってある。

 

 また、これも光の『神剣』セレスティアと同じように該当する神がいないため、『知恵の神』が作ったものとして見ていいだろう。

 

「《超加速》」


「……速いな。目で追えん」


 間に割り込み、『神剣』を『破壊神』に振った。しかし、ただの剣のように特殊な能力が発動しない。


「……やっぱりね」


 アッシュが無魔法を知らないというのも理由の一つだろうが、『神剣』ヴォイドが危険すぎて扱いづらいというのが大きな理由だ。少しでも力を抜けば、甚大な被害を被ってしまう。一度後ろに引き、属性神たちの戦いを見守っていると、腰の剣が光っているのに気づいた。


「これは……」


◆◇◆◇


 ――『魔導師』たちはエリゴス、レヴと派手な戦いを繰り広げていた。空を跳ねるように動き回り、巨大な魔法が何度もぶつかる。

 

 『剣聖』がいないため、少しは楽になると思ったエリゴス。しかし、無限の魔力を持つグレイスが容赦なく最大火力の魔法を連発するせいで余計に難易度が上がってしまった。


「クソ……魔力切れがないからって大量に撃てるのズルだろうが……」


「逃げてんじゃねえ! エクスプロード! エクスプロード! エクスプロード!」


 逃げ回るレヴに炎魔法最強のそれを何度も連発し、攻撃の隙を与えない。

 エリゴスもまた、ロエンたちの連携で邪魔されるばかりであった。


「《引力の王(グラビティ・ロード)》! 《斥力の王(リペル・ロード)》!」


「《幻焔花界(エクリプス・ガーデン)》」


 引き寄せたり弾いたりしながらエリゴスの動きを混乱させ、サフィナの対の扇による斬撃が入る。


「ウザいな。絶対殺してや――っ!?」


 悪魔の力を右手に溜め、ロエンたちに向けたエリゴス。しかし、身体の自由が効かなくなってしまったのだ。その原因はもちろん――


「は、やく消えろ……僕の身体から出ていけ……!」


エリゴスによって身体を奪われた『第一位』ソール・アスタリウスだ。右手を左手で止め、全身で抗う。


「お、前、もう起き上がったのか……。でも、勝手に出てくるなよ。これはもう俺の身体……」


「うる……せぇ……! サフィナ! 斬れ!」


 サフィナに向かってそう叫ぶソール。すると、鋭い扇による斬撃が水平に花の軌跡を描き、ソールの肉体を斬ったのだった。

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