第104話『最後の共闘』
「な、何が……起きた?」
突然、『空間の神』スピリアにワープさせられ、キョトンとした顔をしていた四つ子。だが、瞬きをする前に地面が崩壊しているのを目にしてしまった。
「ふむ……。まだ感覚が鈍っているようだな。今のでこの程度しか壊せないとは。千年も動かなかったから仕方がない」
上空に佇んでいる『破壊神』がそう呟く。今の攻撃は一体何なのだ。空から地面を眺めてみるが、少なくとも半径五キロの建物は破壊され、地面は抉られていたのだ。
「なんて破壊力だよ……」
「あれでもマシな方だよ。わたしたちが戦った時は一撃でこの星の九割は滅ぼされたよ」
千年前の戦いでは、『破壊神』の力はこんなものではなかった。世界を一撃で滅ぼせるほどだったのだ。今の彼に破壊できる範囲が少ないのは不幸中の幸いと言うべきか。
――どちらにせよ、世界を滅ぼせるほど感覚が戻る前に倒さなければ。
「さて。――ん?」
ラインたちに歩み寄ろうとした『破壊神』。しかし、『魔王』とともにさらに上空に飛んでいってしまったのだ。呆然としていると、右手を空に掲げている『法則の神』ファルネラが目に入った。
「えと……何してるんですか?」
「これですか? 彼らだけにかかる重力を逆向きにしました。なので空に落ちていってます」
『法則の神』である彼女は、世界中のあらゆる法則を自由自在に支配できる。今回は重力を支配し、『破壊神』と『魔王』にかかる重力だけを反転させたのだ。
「それじゃあ姉さんは邪魔しててね。ボクたちは行ってくるから」
「ワタシにはこれくらいしか出来ませんので」
邪魔してくれるであろうファルネラを残し、『魔王』達を追いかける。すると、それを妨げるように破壊のエネルギー弾や血液が飛ばされてきた。
「フォカリナ、大丈夫?」
「大丈夫ー。そのまま続けてて」
『知恵の神』アステナを背負いながら上昇しているため、防御ができない『夢の神』フォカリナ。そんな彼女を、アステナは防御魔法を展開しながら守り続ける。
「面倒だな貴様らは」
「うるせぇ黙ってろ!」
こちらに向かってる『破壊神』に『炎神』イグニスが何度も拳を当て、地面に殴り飛ばす。さらに炎で『破壊神』を包み込み――
「アクア、やれ!」
「分かってるわよ!」
地面に落ちていく『破壊神』に『水神』アクアが水をかけると――
「――っ!?」
水蒸気爆発が起きたのだ。腕から血を垂らしながら、地面に激突する。
そして砂埃が舞い上がり、再び『破壊神』が接近する。
「まだまだ。本当に貴様らは弱いな。千年前の方がよっぽど良かったぞ」
「余計なお世話だバカ野郎! 弱い弱いって言うんじゃねえよ!」
「……もう少し落ち着いて。イグニスの方がバカみたい」
大声で暴言を吐き続け、攻撃の手を止めないイグニスの頭を冷やすように『氷神』イゼルナが小さく呟く。そして、吹雪を生み出した。
「面倒な……」
視界を雪原の世界が包み込み、何も見えなくなってしまう。破壊しようと腕を前に出した瞬間、紫色の光が視界に入った。
「雷か。連携が上手いようだな」
「あんまり効いてないみたいでムズムズするね」
『雷神』ヴォルスによって雷が流れ、『破壊神』を電気が襲った。そして――
「これでも喰らえー!! えいっ!!」
雷速で接近し、風と雷の刃で切り刻む『風神』エオニア。何とか腕で防いだ『破壊神』の後ろから、声が響いた。
「創血式・緋!」
吸血鬼と『創世神』の力を3:2で混ぜた技が炸裂し、緋色の爆発が巨大な音と共に『破壊神』の両腕を吹き飛ばし、地面が抉れた。
「うっ!? こ、これは……。二つの力を混ぜるとは、器用なことをするものだな」
「おいおい後ろも警戒しないといけないぞ?」
「チッ!」
二つの力を混ぜた技を受け、『破壊神』は感心するようにラインを見つめる。すると、ラインの後ろに『魔王』が近づく。
血液の鎌を垂直に降り、強力な血の斬撃が腕に入ってしまった。
『雷神』は一気に全身を燃やされる感覚が走ったが、ラインは平然としている。
「ま、やっぱり喰らわねえか。吸血鬼は毒喰らわねえもんな」
吸血鬼はどんな毒も効かない存在なのだ。理屈は知らないが、吸血鬼の血に毒が混ざってもすぐに解毒できてしまうらしい。
「まあ関係ないか」
毒が効かないからといって、攻撃を辞めるわけはない。身体よりも大きい鎌を振り回し、斬撃がラインを襲う。
「っ! 危な……」
それに対して、血液を操り斬撃を防ぐライン。しかし、攻撃速度が尋常じゃなく、反撃ができない。
あんな巨大な鎌をどんな速度で振ってるんだこいつは……。
そう思いながら反撃の機会を伺っていると、『魔王』の腕が止まった。
「ん? なんだ? 血?」
アレスたちが血液で両腕を捕縛し、攻撃を止めたのだ。兄妹と目を合わせてから、血液の刃を『魔王』の心臓に向かって伸ばす。しかし――
「――っ!?」
「創血式・緋」を喰らい、威力に感心していた『破壊神』に防がれてしまった。掴まれた血液の刃は一瞬で塵となり、魔王を拘束している血液も千切れる。
「っ! ハァッ!」
「はぁ……。攻撃距離が無限だろうが、威力が低すぎて意味無いぞ」
さらに上空にいる『空間の神』スピリアの攻撃が腹に入るが、ビクともせず立ち止まっている。そして、右手を握ったり開いたりしてニヤリと笑みを浮かべた。
「もう一度してやろう」
――瞬間、破壊のエネルギーが手のひらから放出され、一瞬で人体ほどの大きさになった。
再び、あの被害が起きるかもしれない。
「やめ――」
「もう遅い」
止めようと接近するも、既に地面に飛ばされてしまっていた。
(っ!! 間に合わな……)
地面に落ちる前に破壊しようと近づく四つ子。だが、地面まで少ししか距離がない。このまま衝突する――そう思っていたが……
「……と、止まった?」
破壊のエネルギー球体の動きが止まった――いや、ゆっくりになったのだ。驚いた顔をしていると、『破壊神』の声が耳に入った。
「かなり無茶をする。自分が死ぬかもしれないのにな」
そう聞こえると、今度は球体の向こう側から声が聞こえてきた。
「うっ……!! 姉さん……逃げて……」
「出来るわけないでしょ? っ……。ここで、わたしたちが止めないと……」
それは、スピリアとアスタリアの声だった。辛そうな声を上げながら、アスタリアが球体に手を触れた。すると、動きが完全に止まった。球体の時間を止めたのだ。
「姉さん、大丈夫?」
「大丈夫。ありがとね、アリシアス」
『生と死の神』アリシアスのおかげで、破壊のエネルギーに触れても全身を崩壊されずに済んだ。安心した表情をする四つ子たち。再び、『破壊神』の声が聞こえてきた。
「また貴様か。……まあいい。遊びはここまでだ」
「――は?」
――何が起きたのか、分からなかった。『破壊神』と『魔王』が紫色に光ったのは見えたが、その後に何が起こったのだろう。
全員は抉れた地面に衝突し、横たわる。何とか身体を動かそうとするが、痛みが強力すぎて上手く立てない。
「な、んだ……今の……。大丈夫か?」
「大、丈夫。でも、上手く……」
「うん……でも、上手く動けない……」
「身体が痛いよ……」
四つ子も身体が動かせず、這いながら兄妹に近づく。ゆっくり身体を上に向けると、黒い羽根のような霧が出現したのが見えた。
「あれって……」
ラインはそう呟く。そして、その中から出てきた人物たちも想像通りだった。
「な、なんですか……これは……?」
ロエンの声が響いた。
辺り一面は崩壊し、地面は抉られ、青空は真っ赤に変わってしまっていた。あまりの驚きに声が出ず、放心状態になっていると、上空から声が聞こえた。
「来たのか。遅かったな。貴様らが加勢すべき奴らは既に倒れているぞ?」
『破壊神』の指さす方向を見た一行。そこには、地面に横たわっているラインたちがいたのだった。
「ふむ……先程は気づかなかったが、お前もそちらに寝返ったのか、ミレーナ」
「あーしはサフィナの味方だし」
「そうか。お前らに構っている暇は無い」
すると、『破壊神』の隣に紫色のエネルギーが現れた。悪魔の力だ。その中から現れたのは――
「逃げたんじゃねえのかよ」
「ここでお前らを終わらせてやる!」
逃げたと思っていた『悪魔』エリゴスと、『第九位』レヴ・ダイナスだ。折角『破壊神』たちと戦おうと思っていたのに、邪魔が増えてしまった。
――空に佇む彼らを見上げ、アスタリアは小声で呟いた。
「……いざという時の最終手段、だったよね。みんなもそれで良いかな?」
以前、四つ子と属性神が天空で稽古を付けてもらった時に、四つ子を除いて話していたこと。もう、彼らに勝つには最後の手段を取るしかない。
アスタリアの声を聞いたスピリアたちは、ゆっくり頷いた――
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