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第103話『崩壊の始まり』

 ――冷たく暗い空間で、『剣聖』たちは『悪魔』と『第九位』と対峙している。

 レンゲは外に出たようだが、ここにいるメンバーも一刻も早く外に出たいと考えている。だが、その為には目の前の二人を倒さなければならない。


「――」

 

 どちらも厄介な存在だ。『悪魔』の力とソールの『異能力』を使うエリゴスと、『権能』を使うレヴ。


「――」


 『神剣』が地面に擦れ、金属の音が空間に響く。――そして、戦いは再開した。


「――っ!! 俺に有利な未来に導いてるはずなんだがな! お前の行動に隙が無さすぎるんだよ!」


「僕は普通に動いてるだけだけどね。君が上手く使えないだけじゃない?」


 《未来の選択(オプティマム)》で大量の未来を予測し、最も有利な未来を導こうとしているのだが、どの未来を選んでもアッシュの攻撃を避けれないのだ。

 もはや、それが致命傷になるか否かを選ぶことしか出来ない。


「クソが……。お前の父親の肉体を手放すんじゃなかった」


「君のせいでお父様の肉体は消えたけどね」


「倒したのはお前だろうが!」


 炎の『神剣』アグナシスで炎の斬撃を放ち、攻撃の手を緩めない。

 対抗するように悪魔の力で生み出した剣で受け止めるエリゴスだが、受け切るので精一杯。それ以上何も出来ない。


 ――以前、エリゴスに乗っ取られていた父親のエルン・レイ・フェルザリアを斬り、肉体は消滅してしまった。その後アッシュに残された一本の剣。

 それを彼は普段から帯刀している。もちろん、今日もだ。


 銀白色の刀身に、光が差し込むような金の文様が刻まれていて、神秘的で美しい見た目をした剣。どんな能力があるのか彼自身にも分からない。

 そのため、今はただのお守りになってしまっているのだが……


「ハァッ!!」


「《反射(カウンター)》!!」


「っ!? 《空間操作》!」


 炎の斬撃が『異能力』で跳ね返され、咄嗟に氷の『神剣』フロストリアを召喚して防御する。


「喰らえ!! ネザーストライク!」

 

 一瞬止まったアッシュの動きを進ませないため、レヴが上から参戦する。一番威力の高い闇魔法を詠唱すると、アッシュの地面に闇が現れ、闇の刃が襲いかかった。


「危ない、ただの刃だね。これなら大丈――!?」


 『剣聖』の彼にこんな攻撃は意味が無い。刃を全て切り落とし、安心したはずだった。しかし、一気に視界が重くなり、目がチカチカし始めた。


「それは喰らうようだな。ついでにこれも喰らえ!」


 さらにエリゴスが悪魔のエネルギー弾を放出し、アッシュを貫通――


「ディバインレーザー!」


 真横にいた『魔導師』から放たれた、一番威力の高い光魔法のレーザーが直線を描き、『剣聖』の地面に蔓延る闇と悪魔のエネルギー弾を消し飛ばした。


「おい大丈夫かお前」


「うん、ちょっと頭が痛いけどね。大丈夫だよ」


 先程の闇魔法には精神汚染の効果がある。すぐに光魔法で浄化したので少しは楽になっているはずだが、動きづらいだろう。


「《空間操作》」


 そして再び異空間の武器庫を出し、右手を入れる。そこから取り出したのは――


「なんだその『神剣』。今までのとは違うな。でも、光属性か」


 これまでアッシュが使っていた五本の『神剣』はそれぞれ炎、雷、水、氷、風だけであった。

 だが、これはそのどれにも属さない。刀身は金属ではなく、光属性そのものだ。


「これも七本の『神剣』のうちの一つだよ。『神剣』セレスティアって言うんだ。まあ、あの神様たちの誰が作ったのか知らないんだけどね」


 『神剣』はそれぞれ対応した属性神が作ったものだが、光属性の神様はいない。誰が作ったのかアッシュは知らずにいたが、グレイスはじっと見つめて呟いた。

 

「……多分アステナだなそれ」


「え、ほんと?」


「アステナの魔力が込められてる」


 グレイスは魔力でも人を判断することが出来るのだが、この剣からはアステナの魔力が流れているらしい。

 ――『知恵の神』とはいえ、『神剣』まで作れるのは予想外だ。


「仲良く話してる場合じゃないだろ? 《獅子の咆哮》」


 仲良く『神剣』の話をしている幼馴染に対して、レヴが近づく。『権能』を使用し、身体能力を高めて飛びかかるが――


「《封界の楔》!!」


「――チッ。またお前かよ」


 セレナの『権能』が発動し、結界内に包まれたレヴは『権能』が使用できなくなってしまった。

 再び邪魔されたレヴはその瞳をセレナに向け、飛び出した。

 悪魔の力を右手に集め、襲いかかる。しかし、二人の間にサフィナが入った。


「っ!? サフィナ! 邪魔だ!」


「《幻焔花界(エクリプス・ガーデン)》。そっちだって邪魔だよー」


 左目を隠し、右目の瞳孔が花びら上に変化したサフィナ。対の扇を水平に振ると、五感を錯乱させる花の軌跡が描かれ、レヴの腕に斬撃を入れた。


「チッ! 容赦なく斬ったな……」


「おいレヴ、何やってる。早く立ち上がれ。じゃないと――」


「ハァッ!!」


 たった一瞬、レヴの方を向いたエリゴス。そんな彼に、光の『神剣』から斬撃が浴びせられた。


「な、この力は俺を浄化してしまう……! ま、ずい……」


 『悪魔』は光属性に弱いようだ。たった一撃喰らっただけだが、ソールの肉体から剥がされそうになってしまう。悪魔の力を放出し、何とか保ちながら呟いた。


「《因果律操作(カザリティ)》……」


 それは、過去をなかったことに出来る『異能力』。反動が強すぎて一日に一度しか使えないが、エリゴスが肉体を保つには充分すぎる程だった。

 

 全身は回復し、体力も元通り。とはいえ、あの光の攻撃を喰らえば同じような状況に陥ってしまうだろう。

 ならば――


「おい、レヴ。来い」


 向かってくるレヴの腕を掴み、二人を悪魔の力が包み込んだ。


「また逃げる気かよ! 逃げるんじゃねえ!! インフェルノ!」


 炎魔法が詠唱され、火柱が二人を囲んだ。――しかし、そこにはもう誰もいなかった。


「あいつらまた逃げたの? なんて卑怯なんだろ。あーしびっくりー」


「いやあなた何一つ戦ってないですよね!?」


「仕方ないじゃん。あーしの『異能力』は戦闘向きじゃないんだしー」


「はぁ……。でもまあ、これで外に行けますね。戻ってくる前に行きますよ。《引力の王(グラビティ・ロード)》」


 ミレーナと話し、ため息をつくロエン。すぐに引力で全員を一箇所に集めると、黒い羽根のような霧が辺りを覆った。

 ――そして、瞬きする間もなく、消えていった。


◆◇◆◇


 ――黒い羽根のような霧が現れ、その中からロエンたちが出てくる。外に出ることが出来たのだ。あとは、ここで戦っているはずのラインたちに加勢しなければ――


「な、なんですか……これは……?」


 辺り一面は崩壊し、地面は抉られ、青空は真っ赤に変わってしまっていた。あまりの驚きに声が出ない。放心状態になっていると、上空から声が聞こえた。


「来たのか。遅かったな。貴様らが加勢すべき奴らは既に倒れているぞ?」


 『破壊神』の指さす方向を見た一行。そこには、地面に横たわっているラインたちがいたのだった――

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