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第102話『『破壊神』の秘密』

 ――『破壊神』とライン、アレス、セツナが戦っている中、他の神々は『魔王』と拳をぶつけていた。


「オラァ!!」


「フッ、弱いな」


 『炎神』イグニスの炎を纏った拳を掴み、バカにするように呟いた。それにイラつきつつ蹴りを当て、遠くに飛ばす。

 その先で待ち構えているのは『雷神』ヴォルスだ。


「ん? 電撃か」


「結構強くしてるんだけど、全然入ってないみたいだね」


 『魔王』の背中に電撃を浴びせるが、あまり喰らっていないようだ。平然とした顔をしながら、彼は右手を上空に挙げた。


 その瞬間、血液が大量に放出され、巨大な鎌が出来上がった。


「ハァッ!」


「――っ!!」


 大振りで起こった一閃がヴォルスにかすってしまう。


「掠ったな。その血はお前の身体を焼き続けるぞ」


「あっ、くっ……」


 血の飛沫が肌に当たっただけだ。それだけにも関わらず、一気に全身を燃やされるような痛みが走った。


 ゆっくりと『雷神』に近づいていく『魔王』。だが、彼の動きを邪魔するように大量の水が放たれた。


「ヴォルス!」


 彼のもとまで飛んできた『水神』アクア。彼女がヴォルスの手に触れると、体内が浄化され痛みが消えた。


「やっぱりすごい治癒能力だね」


「褒めなくていいわよ。行ってきな――さい!!」


 手を繋ぎながらぐるぐる回り、『魔王』に向けて投げ飛ばす。

 飛ばされたヴォルスは雷速を出し、『魔王』を地面に蹴り落とした。


 属性神たちが次の手を考えている一方で、残りの神々は後ろで顔を見合わせていた。


 (なんか……わたしたちが入る隙が無かったね)


 属性神たちに比べて、『時間の神』たちは戦闘に向いていない。だからといって戦えない訳では無いが、少なくとも今の戦いには入っていけなかった。


 ――途端に巨大な音がし、地面に落ちていく『破壊神』が見えた。驚きつつも音のした方を向くと――


「起き上がったんだね」


「ねー。良かった良かったー」


 『夢の神』フォカリナにおんぶされている『知恵の神』アステナがそう呟く。視線の先には、『破壊神』を地面に送ったと思われるレンゲが立っている。


「凄いね。わたしたちもしっかりするよ。あれ?」


 地面を再度見るが、落ちたはずの『破壊神』と『魔王』はいない。


「少し遊びすぎたな」


 後ろから声が聞こえた。それは間違いなく『破壊神』の声。身体を後ろに捻るより先に、破壊のエネルギーが爆発した。


「……今のを防ぐか。千年前よりも成長してるようだな」


「褒められても、全然嬉しくないよ」


 『空間の神』スピリアが一瞬で防ぎ、何とか被害を抑えられた。しかし、『破壊神』の迎撃は止まらない。

 

「防ぐしかないぞ? もし地上に当たりでもすればここら一帯は滅びる」


 それが何より難しい点だ。攻撃を避けることならこの場の全員はもちろん可能だ。しかし、それが地上に当たったりすればその辺りは一瞬で壊滅してしまう。

 そうさせない為にも、『破壊神』の攻撃全てを受け止めるしかないのだ。


「……危ない」


 突然、頭上から血液の雨が降ってきた。『氷神』イゼルナが巨大な氷の傘を生み出し、アスタリア達を守る。だが――


「みんな下がって!!」


 血液の雨により、氷の傘にヒビが入る。『風神』エオニアが全員を風で吹き飛ばし、回避に成功した。


「遅いぞ」


 エオニアに『破壊神』の魔の手が伸びる。神々を風で飛ばした影響で、『生と死の神』アリシアスが彼女に目を向けれない。

 触れられる事は死を意味する。絶対に避けなければ――


「危な……」


 雷速で間に入ったヴォルスが電撃を浴びせ、一瞬後ろに下がった『破壊神』。その間に、彼はエオニアの頭に触れた。


 刹那、薄緑のツインテールに紫色のメッシュがかかった。さらに紫電が身体から放出される。


「……ん? なんだ?」


 突如、『破壊神』の四肢が透明な何かに拘束され、身動きが取れなくなってしまったのだ。


「「「「《拘束》!」」」」


 四つ子が一斉に同じ『権能』を使用し、透明な鎖で縛った。本来ならすぐに砕けるほど脆いものだが、その弱点を数でゴリ押ししたのだ。


「甘い」


 鎖に手を触れ破壊し、四つ子に向かって進んだ。

 ――だが、それは想定済み。『破壊神』が四つ子の少し前に接近した瞬間、血液が弾け、大爆発を起こしたのだ。


「ダメージくらいは……」


「《反射(カウンター)》」


「――っ!?」


 爆発した血液は全て反射され、ラインに当たった。今の『異能力』はソールのものだ。だが、どう見ても彼はいなかった。まさか――


「【十執政】に『異能力』を与えたには誰だと思っている? 貴様らが自由自在に『権能』を扱えるように我々も『異能力』を扱えるのだ」


「まじかよ……」


 『権能』よりも厄介な『異能力』。ラインたちはそれを十五個は把握している。


未来の選択(オプティマム)》、《反射(カウンター)》、《因果律操作(カザリティ)》、《適応(アダプト)》、《確率操作(フォーチュナム)》、《再誕の輪(リサレクト・サークル)》、《亡者の印(グレイブ・シグル)》、《複写(コピー)》、《造物(クリアシオン)》、《引力の王(グラビティ・ロード)》、《斥力の王(リペル・ロード)》、《幻焔花界(エクリプス・ガーデン)》、《夢虚(ムーンフェイン)牢城(・セラリウム)》、《時間反転(タイムリバース)》、《零刻輪廻(クロノスレイン)》。


 知らないのが『第二位』、『第五位』、『第九位』の『異能力』だが、『第二位』に関しては悪魔が、『第九位』のレヴは『権能』を使っているため持ってないと見ていいだろう。


(後は……)


 『第六位』クロイツ・ヴァルマーが使用していた『異能力』を思い出す。後は《透明化(インビジブル)》だろう。透明になるだけの『異能力』。殺傷能力は無いはずだ。


 大体相手の手のうちは分かった。後は気を付けて戦えばいい。

 

「《超加速》」


 動く速度を加速させ、『破壊神』の目の前に接近したライン。右足に『創世神』の力を溜め、回し蹴りを腰に入れる。さらに打撃も組み合わせるが、全て手で受け止められてしまう。


「『創世神』の力を出してもここまで弱いのか。まだまだ未熟だな」


「誰目線で言ってんだお前は……。親みたいな言い方するなよ」


「良いだろう? お前らは私から見れば甥姪なんだぞ?」


「「「「え……?」」」」


 『破壊神』からの発言に四つ子は固まった。頭が真っ白になってしまい、身体を上手く動かせなくなってしまった。


「う、嘘だろ……?」


「顔を見てみろ。瓜二つだろう? お前らの父親が俺と双子の兄弟なのだ」


 たしかに顔はそっくりだった。でも、それは父親の顔をした存在を無闇に殴れないようにわざとしたものだと思っていた。それなのにこんなことがあろうとは……。


(父さんに兄弟がいる!? そんな話、聞いたことは……。――いや、あったか?)


 ――以前、『神龍オメガルス』と戦ったことが原因でラインが十日ほど寝込んだ時に見た昔の夢。

 随分と前のことだ。四つ子がまだ幼い子供だったある日、いつも通りアレス、セツナ、レンゲが追いかけっこをしていた。


 それを見ていたラインと『創世神』アルケウスが、四つ子は仲がいいという話をしていた時のこと。


◆◇◆◇


「やはりお前たちは仲がいいな」


 アルケウスが腕を組んで首を上下に振る。


「そりゃ四つ子だし、オレたちは凄く仲良いから。お父さんは兄弟っているの? そういえばオレ聞いたことないや」


「……」


「お父さん?」


「ああすまん。三人を見つめていた。兄弟はいないさ」


「お父さんってお母さんと出会う前は誰かと一緒にいたりしたの?」


「いや、ずっと一人だったな」


◆◇◆◇


 何気ない会話だったが、兄弟のことを聞いた途端に返答が遅れた。子供だったラインにはなんとも思わなかったが、今となってはあの時の反応が分かる。


 千年前に戦い、自ら封印した弟の存在。そんなことを丁寧に話せば子供たちが戸惑ったりすることを懸念していたのだろう。

 

(ちゃんと話せよ……。――まあ、そういう所も父さんらしいか)


 心を落ち着かせ、目の前の『破壊神』にもう一度打撃を放とうと腕を上げた。しかし、『破壊神』は上空に飛んで行ったのだ。さらに、それに追いつくように『魔王』も飛んで行った。


「な、なんだ? いきなり上に行って……」


「急に上に行ったね。……!! スピリア! ライン君たちをこっちに!」


「あ、うん。わかった」


 フォカリナにおんぶされながら空高く上る『破壊神』たちを見つめていた『知恵の神』アステナ。

 何かを悟ったかのように、少し離れているラインたちをこちらに移動させるようスピリアに頼んだ。


「わっ、ワープした」


 急に移動させられ、少しびっくりするセツナ。なんで? という顔で神々を見つめる四つ子だったが――


 ――瞬きした瞬間、地面は崩壊した。

注釈:ラインとアルケウスが話している過去のシーンがありますが、第13話『昔の夢と変わった兄妹』に書いてあったものです。


読んでいただきありがとうございます!

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