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第101話『末妹の復活』

 ――謎の空間に残った『剣聖』たち。

 目の前には【十執政】『第一位』ソール・アスタリウスを乗っ取った『悪魔』エリゴスと、『第九位』レヴ・ダイナスがいる。


「避けるの上手いね」


「お前がどんな動きをしようが、俺に最適な未来に導かれたら意味ないだろ?」

 

 どれだけ『剣聖』が強くても、《未来の選択(オプティマム)》があれば『剣聖』の攻撃を避ける最善の未来に進むことが出来る。


 そのため、彼を倒すことは出来なくても負けることは無い。


「――エレメントキャタスト」


「っ!?」


 瞬間、グレイスから炎、水、雷、氷、風属性を溜め、一気に放出する魔法がエリゴスに当たった。並大抵なら塵も残らないほど強力なものだが、悪魔の力で何とか防いだようだ。

 

「防ぎやがって。ふざけんなお前」


「あ、グレイス、ちょっと」


 魔法を防がれ、イライラしながら飛び蹴りをするグレイス。そんな彼にエリゴスは照準を定める。


「死ね」


 紫色のエネルギーが放出され、グレイスを包んだ。しかし――


「《無敵》! ブリザード・スパーク!」


 『権能』で三分間の完全無敵状態となり、氷と雷の融合魔法を放った。電撃と冷気のビームが一直線を描き、悪魔の力で防ぐ。だが、今度はアッシュに蹴り飛ばされてしまった。


(なんでだ!? 《未来の選択(オプティマム)》が上手く使いこなせない……)


 ソールのようにこの『異能力』を上手く扱えていないのだ。ソールは大人数相手でも未来を最適に導いていたが、今のエリゴスにはせいぜい一人に集中するのが限界だ。


 そのせいで、片方に集中すればもう片方から攻撃が来てしまう。


 (あいつ、『異能力』を使う才能あったんだな)


 《複写(コピー)》の『異能力』を持つ『第六位』クロイツ・ヴァルマーも《未来の選択(オプティマム)》を使っていたが、彼もそこそこ使いこなせていた。


 コピー能力を持ったことで、他の『異能力』を上手く扱えるようになったのか、それとも天性のものだったのか。


(……いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない)


 顔を上げ、アッシュとグレイスを睨む。その瞬間、後ろから音が聞こえた。


「――っ!!」


「えーまじー? 今の避けるんだー」


 花のように綺麗な桃色や黄緑色の入った対の扇を振ったのだが、首に当たる寸前に避けられてしまうのだった。


「チッ、面倒な女だ……。失せろ!」


「《引力の王(グラビティ・ロード)》!」


 襲ってきたサフィナに紫色のエネルギーを放つが、ロエンの引力で空に引き寄せられた。


「チッ。……ん?」


 邪魔をしてくる元【十執政】のメンバーにイラつきつつも、少し離れたところで地面に横たわるレンゲを見守るメイド二人を見つけた。


「はぁぁ!!」


 悪魔のエネルギーを全身から放出し、右手に溜める。そして、その照準をセレナ達に定めたのだ。


「っ! グレイス!」


「分かってるって!」


 即座に気づいた『剣聖』と『魔導師』。セレナ達の前に走るが、それを邪魔するように魔法が飛んできた。


「チッ、レオお前邪魔すんな!」


「だからレヴが本名だって言ってるだろ。そっちで呼ぶな。《円環展開》、エクスプロード」


 そして、炎魔法最高火力の「エクスプロード」を放った。しかも、カイラス先生から教わった《円環展開》を使い、魔力消費を半分以下に抑える。


 この魔法を無傷で防げるのはこの場ではアッシュとグレイスくらいだろう。そちらに二人が向かった瞬間、エリゴスの手からエネルギーが放たれた。


「しまっ――」


「《斥力の王(リペル・ロード)》!」

 

「――《零刻輪廻(クロノスレイン)》」


 刹那、ロエンによって弾かれたヴァルクがエネルギーとセレナたちの間に飛ばされ、『異能力』を発動した。

 すると、エネルギーは彼の目の前で停止したのだ。


「よーし良くやったヴァルクー。《幻焔花界(エクリプス・ガーデン)》」


 ヴァルクの目の前に飛んできたサフィナ。左目を隠し、右目が光ると瞳孔が花びら状に変化した。

 対の扇で斬撃を起こすと、五感を錯乱させる花の軌跡がエネルギーを木っ端微塵に切り裂いた。そして――


「――っ」


「あ、大丈夫ー? それ反動すごいもんねー」


「ああ、まあ何とか」


 《零刻輪廻(クロノスレイン)》は使うとヴァルクに大きな反動がある。傷を受けたりする訳では無いが、体力が削られてしまう。


 地面に膝をつくヴァルクだったが、彼に一番早く近づいてきた女性がいた。


「ちょっと大丈夫? あーしの胸の中で休む?」


「いや、遠慮する」


「えー」


 そう言ってきたのは『第五位』ミレーナ・ネフェリアだ。両手を広げるが、ヴァルクに拒否され頬を膨らませる。

 

「眠らせようかー? 《夢虚(ムーンフェイン・)牢城(セラリウム)》――」


「やめろやめろ」


 右目を隠し、左目が満月のような銀色に輝くサフィナ。そのままヴァルクを眠らそうとするが、止められてしまった。


「何やってるんですか……。まあヴァルクにもそちらにも怪我がなくて良かったです」


 呆れた目をヴァルク達に向け、その後ろにいるセレナ達に怪我がないことを確認して安心する。


「すみません、大丈夫ですか?」


「あー気にしないで気にしないでー。どうせヴァルクだしー」


「おいどういう意味だ」


 仲のいい事だ。ヴァルクを気にしたセレナたちだったが、意外と大丈夫そうで胸を撫で下ろす。すると、突然エルフィーネが声を上げた。


「どうしました? エルフィーネ?」


「レンゲ様起きた〜」


「レンゲ様、大丈夫ですか?」


 地面に横たわっていたレンゲだったが、セレナたちが一斉に振り返ると立ちあがっていた。


「うん、大丈夫! ちょっと行ってくるね!」


 いつも通りの元気な姿に安堵するメイド二人。一体、どこに行くつもりなのか。


「レンゲ様、一体どこに――」


 セレナが言い切る前に、レンゲは消えていった。


◆◇◆◇


創血式・(そうけっしき・)――」


 『破壊神』に向けて技を放とうとしたライン。だが、それより先に破壊のエネルギーが彼の目の前に現れた。


 (まずい――)


 先程触られた時と同様に、これは触れた存在を破壊するものだ。『生と死の神』に命を繋いで貰っている今、死ぬことは無いがダメージはある。


 (避けないと……)


 身体を捻ろうとすると、『破壊神』の声が響いた。


「良いのか? お前が避ければ地上は壊滅するぞ?」


 『破壊神』が放ったそれは破壊のエネルギーだ。もちろん、簡単に世界を滅ぼせる破壊力を持つものだ。そんなものを避け、地面に当たればどうなるだろうか。

 考えなくても分かる。


「――っ!」


 即座に受け止める体勢に入ったライン。『創世神』の真っ白いエネルギーを手に集め、構える。


「――え?」

 

 ――その瞬間、破壊のエネルギーは消えた。しかし、ラインが何かした訳では無い。一瞬、目の前を白い閃光が通ったのが見えた。

 もしかして――


「レンゲ!」


 空を見上げると、真っ白な髪と瞳になっているレンゲがいた。どうやら起き上がったようだ。安心すると同時に、今の速度で破壊のエネルギーを消し去ったことには驚かされる。起きたばかりだというのに。

 

「もう起き上がったか。中々――」


 多くの力をポットから吸い取ったはずだが、想像よりも早く復活したレンゲに驚く『破壊神』。再び破壊のエネルギーを溜め、空に向ける。だが、そこにもうレンゲはいなかった。

 そして――


「えいっ!!」


 『破壊神』の背中に回っていたレンゲの手のひらから、『創世神』のエネルギー砲が放たれた――

読んでいただきありがとうございます!

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