鉄道オタクの一人旅記録 その1
皆さんは大回りというものをご存じだろうか。正式名称は運賃計算の特例というが、簡単にまとめると決められたエリア内(関東近郊など)で乗った駅から降りた駅まで同じ駅を2回以上通らず、そして一度も改札を出なければ、どれだけ遠回りしても一番安い料金で行くことができるという制度である。頑張れば150円の切符1枚で関東地方を全制覇出来てしまうこのルールは、鉄道好きでは知らない人がいないほど有名だ。
かくいう私も中学生の頃は大回りを何度もしてきた。当時は今と比べ体力があったので、今では到底やる気が出ないような過酷な行程で電車に乗りまくっていたのだが、大学生となった今ではほとんどやらなくなってしまった。お金に余裕が出てくると、わざわざキツイ旅行をやりたいと思わなくなってしまったのである。何より、改札から出られないので食事が駅そばか菓子パンになってしまうのがどうしても気になってしまう。しかし、たまにはいいかと思い大回りに出かけることにした。今回は、そんな記録である。
今回の目的地は埼玉県の浦和。なぜ浦和か、私の祖母に会うためである。浦和駅で待ち合わせしているので、大回りして向かおうというわけだ。そして、昔と比べ財力があるので、ちょっと変則的なルートで行こうと思う。
7月27日。今日はパリオリンピック開会の日だそうだ。しかし現地は大雨なのだとか。大変だなぁと人ごとに考えながら家を出てきた。鉄道好きの朝は早い。地元駅から乗り継ぎ、池袋駅に着いたのが朝の5時42分ごろ。
今日のルートはこうだ。池袋まで出たら東武東上線で川越へ行く。そして川越から浦和の間で大回りをするというもの。こうすれば自宅出発時間を約1時間遅らせることができる。
東武線の改札に入りホームへと上がる。目の前に準急が止まっていた。乗る予定の1本前だが、暑いホームで待ちたくないので衝動的に乗り込んだ。特段柔らかくもないシートに腰を下ろし、スマホで時間を調べなおすと、予定よりも早く着くそうだ。さてどうしようか。考えたらお腹が空いてきた。とりあえず持ってきたカロリーメイトのような謎クッキーを半分食べつつ適当に車窓を眺めるが、ただの住宅街だという感想しか出てこない。電車は最初の停車駅である上板橋に到着。反対には普通が止まっている。折角だし、と普通に乗り換え。乗ってびっくり、冷房が強すぎる。古い電車だからだろうか。ぽつぽつと止まっていき、和光市に到着。ここで普通から降りて元の行程に復帰する。やってきたのは快速急行の小川町行き。和光市を出ると、朝霞台、川越の順。期待通り、ガンガンスピードを出し、乗ってて非常に気持ちが良い。15分少々で川越に到着。快い速度で急いで行くという、快速急行の名に恥じない素晴らしい走りだった。しかし川越からは終点まで各駅に止まるのだそう。どうやら一番おいしいところだけ味わってしまったようだ。
ここからはJRの番。大学への定期券が記録されたSuicaを改札にかざして中へ。乗るのは川越線の八王子行き。10両編成から4両編成に短くなり、都心から離れて行っていることをひしひしと感じる。乗るときもボタンを押してドアを開けるスタイルだ。個人的に結構好き。意外なことに車内は座席がほぼ埋まり、立ち客が出る程度の混雑。だがそれも川越近郊の話だったようで、電車が進むにつれて車内は空いていった。乗換駅の高麗川に着いたのは7時ちょうど。ここから高崎行きに乗り換える。高崎方面はなんと電化もされていない。電車ではなく気動車というものに変わる。そして意外なことに車内はかなり混雑している。同じ鉄道好きと思われる同業者だけではなく、スーツケースを持った旅行客や登山装備をした人まで様々。なぜこんなに混んでるのかと疑問に思う私。この日が夏の青春18きっぷのシーズン内であることを思い出すのはもう少し先である。
2人掛けのボックスシートを独り占めしつつのんびり本でも読もうという希望が打ち砕かれた私は、とりあえず運転台後ろに立って前面の景色を眺める。しかし特段面白い景色でもないからかすぐに飽きてしまい、結局立ちながら持ってきた本を読む。ここでふと気づく。この列車は2両だ。別に先頭にこだわる理由はない。そう思った私は後ろの号車へ移動した。するとどうだ。席は埋まっているが先頭よりかは空いている。だからこっちで席が空くのを待つことにした。しばらくして列車は小川町駅に到着。実は先ほど乗った快速急行の終着駅だ。ここでそこそこの客が降り、ありがたく2人掛けのボックスシートにありつくことができた。日差しが眩しいのでカーテンを閉めつつ、車窓を眺めたり、本を読んだり、エンジン音に耳を傾けたりと思う存分楽しんだ。朝の街並みにエンジン音を響かせながら、気動車は新緑が美しい田園風景を快調に飛ばしていく。気動車はエンジンで動くので、モーターで動く電車と比べるとどうしても加減速時にうるさくなってしまう。しかし惰性で走っているときはエンジンが静かになるので、この時は電車よりも静かなのだ。この静かな車内に、カタン、カタンというジョイント音が響く状況がたまらない。個人的に一番旅情を掻き立てられる情景だ。そんなこんなあったりなかったりしていると列車はじわじわと混んできた。大きな都市である高崎に近づいている証拠だろう。8時27分。高崎に到着。ぞろぞろと降りた乗客たちがコンコースへ向かう階段に吸い込まれていく様は見ていて面白い。そんな私も吸い込まれつつ、もう1つのメインである特急あかぎ号への期待で胸を膨らませていた。。
折角特急に乗るなら何かしら飲み物を買っておきたい。ということで売店で好物である紙パックの野菜ジュースを買い、7番線へと向かう。ホームへ降りると同時にあかぎ号が入線してきた。今回は先頭号車の座席を予約したので前へ向かって歩いて行き、着いたタイミングで丁度良くドアが開いた。これはツイていると思いつつ早速乗り込む。指定された座席に腰掛け、後ろに誰かが来る前にリクライニングを多少倒しておく。ちょうどいい塩梅を見つけたら、発車までX(Twitter)をいじったりして時間を潰す。あえて何もせず発車を待つというのも楽しみ方の1つだろう。同業者が写真を撮るために忙しなく前後を行き来していたが、私はそういうのはお呼びでない。定刻の8時50分、列車は静かに動き出した。流石特急型というべきだろうか。しかし、そんな気持ちは発車1分で裏切られることになる。それは、流石に気になるレベルの小刻みな揺れだ。中々にすさまじくカタカタという音が聞こえてくるほど。自分の想像と違ったので落胆というよりもびっくりしてしまった。ちなみに、この場合は高崎から1つ手前の倉賀野という駅の間を2回通ってしまっていることになる。しかし、この区間には分岐駅通過特例というこれまたややこしいルールがあり、なんやかんやでセーフなのだ(気になる方は調べてみてください)。途中ぽつぽつと止まり乗客を回収しながら、列車は熊谷駅を発車した。熊谷は暑いことで有名だが、今では他県も負けていないんじゃないかと思ってしまったり。そして快調に飛ばしていたがここでアクシデント発生。踏切安全確認で緊急停止してしまった。この時若干眠くなってきていたが止まるときの衝撃で目が覚めてしまい、それ以降特急の車内で眠くなることは無かった。そして上尾駅でさらにアクシデントが起こる。前列に座った客の体臭が凄まじいのだ。私は、こういった「隣ではないけど前後に体臭がきつい客が座ってくる」という現象によく遭遇する。私が何をしたってんだ、と心の中で毒づきつつもこらえ、遂に下車駅である浦和に到着した。
Suicaを改札にかざし出場。運賃は418円であった。埼玉は暑い。熊谷だけでなくどこも暑いという偏見を持っている。そのうえ冬は寒いんだから参ってしまう。LINEで1本連絡を入れ、時間がないという理由で献血を断る自分をどうにか正当化しつつ待ち合わせ場所に向かってふらふらと歩いていく。たまには大回りも悪くないな。
読んでいただきありがとうございました。
きっかけは、大学のレポートで自分の想像より低い評価を取ってしまったことです。文章力が足りてないということを自覚したので、自分の好きなジャンルで思うがままに書いて練習してみることにしました。
今後も飽きるまで更新していくつもりですのでよろしくお願いします。